奥のカウンター まるで人生

 「もりき」入店は11時45分だったのですが、遅い時間帯ほど盛り上がる店なのでカウンターの空きは1席のみでした。常連Kさん、マスターとは30年来の付き合いという自衛隊OBさんとその奥様、OBさんの元部下に当たる(偶然の同席だそうです)現役自衛隊コンビ……って、Kさんも自衛隊OBですんで、私以外は全部そっち関係のお客さんなんですね。
 ご夫婦のお客様はともに酒豪らしく、スーツと着物というきちっとした格好をしているのは夕方に文楽を観に行ったからだそうですが、私が入店した時点ではかなり酔っ払ってお出でで格好と呂律とのギャップが。それでも、あと15分で旦那様の方が誕生日だということでそこまでは粘る、と奥様(仲良しですね)。奥様とは初対面で、マスターが私のことを東大卒のF校国語教師だと(やや余計な飾りをつけて)紹介したら、まじまじと私の顔を見てから「……頭輪って脳を見たい!」と仰るような方でした。「あのですね、今カウンターに座ってる人、全員そういうことを出来そうな方達なんで、そういう物騒なことを仰っては」
 その後、奥様が母君と同じ介護の現場で長く働いておられるなどの偶然もあり話が弾み、且つ日付跨ぎのハッピーバースデーでマスターが取り出した白ワインがカウンター全員の酒欲求を再点火したなどの展開の果て、マスター(随分酔ってますよ)が「解散しようか」と言い出したのは2時を大きく回った頃でした。3時間弱も店に滞在するのは私には珍しいことで、その間の肴が突き出しとクジラ刺しだけだったのも珍しいことです。

 帰宅後は泥のように眠り、目が覚めたのは7時半。前日夕方に寝だめしていた分、夜の睡眠は短くて済んだのですが、飲み終わって4時間ですからまだ酔っ払っているようなもので、「お茶でも飲みますか?」と寝室をのぞきに来られた母君から「お酒臭い!」と叱られてしまいました。

 入浴後は自宅書斎でデスクワーク。本日は、母君と昼食をご一緒するお約束です(引っ越して一週間ですが、ゆっくりとお食事のような時間が殆ど取れませんので)。お店は、市内の日本料理「G」です。
 このお店、63回生Nくんママが「今、K市でいちばん美味しい」と仰る。本当は、私の初訪問は是非ご一緒にというお話しだったのですが、口約束を破って母君とカウンターに並ぶことになりました(狭い個室がありましたが、カウンター5席が貸し切り状態だったのでそちらを選びます)。Nくんママには、今度謝っておきましょう(或いは、夜は初訪問という言い方でお茶を濁すか)。

 完全予約制のお店で、ランチは3500円(税込み)。大きさは全然違いますが、店内は「梅の花」をもう少しモダンにしたような非日常空間。料理人とその奥様との2人で営業しておられるそうです。夜は6000円・8000円・10000円のコースだそうで、店奥の個室が8人定員(これが12人定員だったら、3月末の67回生年度慰労会に使えたなぁ、などと)。
 ①「旬」…蓬豆腐・菜の花
 ②「向付」…鯛・針烏賊・飯蛸(他七種)
 ③「替り鉢」…公魚・玉葱・針葱・若布
 ④「天麩羅」…筍・タラの芽・こごみ・宮古ぜんまい・野蒜・行者蒜
 ⑤「粒」…強飯・玉子・しらす・絹莢・人参・蛤
 ⑥「汁」…赤出汁
 ⑦「水」…苺・抹茶ゼリー・ミント・酒饅頭
 記憶頼みでお料理は以上。料理から器から全てが繊細の至り、全ての皿を写メって(下品)、即座に事務嬢さんにお送りしました(是非、何かの機会に旦那様とご一緒に、と)。1時間超の滞在でゆったりお話しができましたし、何しろ「超」のつく偏食小食の母君が⑦のデザートを除き全てを召し上がったというのに驚かされました(赤出汁が少し辛く感じた以外はとても美味しかったとの言、安堵)。

 ランチの後、母君をタクシーで家までお送りして私はそのまま学校へ。デスクワークを夜までやって、夕食は軽めに済ませたかったので市内の小料理屋「A」へ。Nくんママの大親友でいらっしゃるAさんも勿論「G」の常連で、初訪問の感想を聞いて頂きました。で、飲めば小腹も減るもので、夕食は軽めにどころか帰りしなにラーメンなど啜ってしまい(店は、最近のF校生のソウルフードと化している「M」)。あ、そうそう。木曜日に63回生関係の飲み会(教員3人・卒業生4人)が入ってその幹事を命じられているのですが、店は今日行った「A」の隣にある魚料理の「U」を選択。直接店に行って予約をしときました。