本当は行きたい逝きたいイキたい

 進路指導室で仕事をしている時に、高3(1998年)の夏に私が受験した「東大即応オープン」の結果一覧というレアなプリントを発見してしまいました。
 「英語86/120 数学39/80 国語73/120 日本史33/60 世界史21/60 計252/440」
 教員の眼なら「そら通るやろ」という数字。ただし、当時の池ノ都學兄は高3の夏にして世界史ノー勉、担任にして世界史担当の先生に「インカ帝国って、インド?」と訊いて殴られたレベルで、21/60という数字は第一問記述の指定語句を小賢しく繋げたことによる部分点故だとしか考えられません。その意味では、所詮は模試、なのかも知れませんね。

 6時出勤、高3添削、授業の板書準備その他のデスクワーク。体調は不良。
 4限の授業(高2現代文)は渡辺一夫、これは体調不良のせいにしたくなる程に良くなかった(説明が悪かった)。ので、2回目の授業は1回目を「聞いていなくても」全文の要旨が取れるようにしなくてはいけません。あ~あ。
 放課後8限は高3理系東大漢文で、これは明日の未明に自宅で添削の予定。仲良しの事務嬢さんから、ご自宅での鍋パーティーに誘っていただきもの凄く揺れたのですが、体調不良と翌日の添削とを理由にお断りしました。誘われた飲み会はダブルブッキング以外断らないというのが基本的な信条で、体調不良や金欠など何ら不参加の理由にはならないのですが、実際にはそこに高3の添削が加わった場合に限って数度に1回の割合でお断りをすることがあります。

半日の放浪

 快晴なのに、徒歩20分を避けてタクシー出勤を選ぶ程度の体調不良。風邪の初期症状……というのは流石に強がりで、これは真っ最中だと認めざるを得ません。鼻と喉とが駄目なのでベンザブロックを飲みました。中1確認テストの〆切を忘れてたのも体調不良のせいかな(言い訳)。
 学級通信作成・高2現代文授業及び高3漢文特講の準備・高3漢文授業答案の添削・国語科会議資料作成、等々を7時~11時の職員室で。

 11時30分に入った自宅徒歩3分の中華「H」でランチ(少しだけビールも)。帰宅後は、一日を閉じて、昏々。

男なんだろ? ぐずぐずするなよ

 橋本治『いとも優雅な意地悪の教本』読了、★★★★。成る程、斉藤美奈子オバサマに「校正してんの?(大意)」と言われたあの文体は、「意地悪」と自称しようとすれば出来ないこともないんですね。

 首から上がグズグズ、鼻も頭も。ぼんやりと授業を2コマ。合間に授業準備。来週からの高2現代文教材は渡辺一夫「寛容は自らを守るために不寛容に対して不寛容になるべきか」で、これは扱うのに勇気の要る教材。初めて授業で使うのでどれだけを伝えることが出来るのかは非常に心許ないのですが、エイヤと思い切って壇に立ちます。同じ書き手の「偽善の勧め」と迷いましたが、そちらは配布のみにしましょう。別に意地悪を言っている訳ではないのですが、「真面目」な生徒の中には、「偽善の勧め」という新聞エッセイに対して「けしからん!(大意)」という投稿をしたという高校生と同じ読み方をする人も居るかも知れないからです。

 夜は「もりき」で熱燗、肴は雑炊。何だか、進んで体調不良を演じているかのようですが。

もっと高く もっと高く あかるく かるく 舞い上がれ

 帰りのSHRでの3分間スピーチ。クラスの41人と担任とが一周したので、賛否は問わず強引に2週目……に入ったら、流石に面白い。1週目は半分超が自己紹介・趣味の話題だったのが、Aさん「登下校中の見知らぬ人との挨拶の難しさ」、Bさん「飛行機が墜ちない理由」、Cさん「筋肉痛の効果的な治し方」、Dさん「金縛りと明晰夢との関係」、と連続で多彩。
 その、Bさんの「飛行機が墜ちない理由」は「飛行機嫌いの池ノ都先生へ」とわざわざ(ご家族と一緒に)調べて下さったということで、彼女に敬意を表して年末の上京5泊はANAの往復チケットを押さえました。年末年始は高いという話なのですが何しろ飛行機には乗らないので相場を知らず、25日上京30日帰福の往復が5万円という値段の損得は解りかねます。

 本日も6時入りの職員室でデスクワーク、授業は4コマで7限に学年集会、昼休みは芸術週間の演奏鑑賞、放課後は生徒面談。

 副担任数学先生の元へ、立て続けに理系女子が相談に来ています。今日の2人は元高1Aで知らない人ではないので、私も混じってお話ししたり。表情は切実の一言で、まぁ理系を選んだ女子が理数(特に数学)で苦しむのは「あるある」なんですけれども、高2で泣くのは早いですよ。高3の校内模試なんて、200点中0点で男子も女子も号泣なんてざらです。
 よし、やっぱり現代文の教材は当初予定を変更して「『安楽』への全体主義」(藤田省三)だな。

 一方の俺氏、生き急ぐように遊びの予定を詰めてるのが身体にキてるのか、体調が思わしくありません。風邪なのか耳鼻咽喉科なのか、という鼻・喉の具合。苦しい痛いは主観ですから、声が出るなら(授業が出来るなら)仕事に差し支えはなく問題ないのですが。

あなたの未来に この幸福が

 年一レベルの迂闊、中1確認テストの問題を進路指導室に提出する期限が週明けだったのを忘れていました。校内模試同様、国語科全員で3月に担当割を決めて全員で取り組む模試です。今朝、週明けの締め切りに気づいて蒼白、こんな大切な模試の問題を2、3日でゼロから考えるなんて出来る筈がありません(出来たとしても悲惨な問題になるのは必至です)。やむを得ず、大昔に作って取っておいたストックを放出することにしました。未明の自宅書斎、及び6時に移動した職員室で問題・解答用紙・解答解説を作成。こういう時の為のストック(今回のは6年前に作成したもの)でしたが、使った以上は補充が必要です。

 8時からは生徒面談、本日は授業・会議が一切無いので午前中はひたすらデスクワーク。昼休みの音楽室で芸術週間の発表を観た後、午後は2時間の年休で学校を抜けて、母君と一緒に「ニトリ」に炬燵を買いに行きました。年末年始に自宅で3泊の母君のために、ついにリビングに炬燵を入れることを決意。気に入ったデザインの物を即決で購入しました。受注生産なので配送は12月になるとのこと。タクシーは母君のステーション経由で学校へ。帰りのSHR・掃除の後、放課後に生徒面談。

 さて。時間割係は、緊急事態(先生の突然の病欠)における時間割変更のために年休を(少なくとも1日単位では)取りにくいのですが、先日、年休を取った時間割係の同窓同僚数学の代打で久々に時間割業務を。とは言っても、翌日の時間割変更を職員室の白板(教員確認用)、職員室外の黒板(生徒確認用)に書くだけなのですが、4年ぶりのその作業の恍惚たるや! やっぱ私は担任より時間割だわ、としみじみ。あ、出産祝いは図書カードにしました。これなら誰とも被らないでしょ、って感じで。

 夜は「もりき」で鴨のつみれ鍋。昨日は鴨を捌くだけで(時間的に)精一杯だったので、つみれを出せるのは今日から。要するに、昨日の刺身に続いて鍋も今期の初物をいただくんですね。贅沢。炭火焼きは、他の誰かに権利を残しておこう。

人鳥雖殊同是客

 「ひ~、ない~、あってもたかい~」と、高3担任若手数学先生が半泣きでPC検索、しているのが何かと言えば高3東大受験を応援する出張の宿泊先、要するに2月24日(土)から2泊3日する都内のホテル、ってあんたそら国立二次と東京マラソンとが重なる土日の宿泊を11月の時点で押さえてないってのが遅過ぎなんだよ、と検索を手伝う仕事(無事に神田で1軒見つかりました)。

 そんな仕事(30分かかりました)を間に挟んで、本日も授業5コマ、生徒面談、芸術週間の生徒演奏鑑賞(今日は、B組の某女子がソロの演奏をしたのですが、ご両親まで観にお出ででした)。
 放課後には会議もあり、帰宅して入浴後に外へ出ればもう辺りは真っ暗、19時半だとそれはそうですね。「鴨、届いた~?」と「もりき」に入れば、仕入れた5羽は全て捌き終わっていました。

 11月15日~2月15日は、有明海の鴨の猟期です。北方からの渡りの鴨をマタギさんが散弾銃で仕留める。直送の料理は、冬限定の「もりき」名物。刺身・炭火焼き・つみれ鍋等どれも絶品ですし(高いけど)、骨からはもの凄くいい出汁が出ます(おでん・カレー・雑煮等)。今年も、中1英語主任先生とはお約束していますし、その他の先生ともご一緒することになるでしょう。
 Hさんと隣同士だったのですが、今年初の鴨刺しを奢って頂きました。しゃ~わせ。

メカ沢がどう変わったんだ?

 生徒指導部で「男く祭」担当の先生から、講演P(Project≒係)の担当を頼まれて、諾。とは言っても、「男く祭」は完全に生徒の自治で行う行事なので、講演依頼の最初のメールもその後のやり取りでの講演料・宿泊費その他の打ち合わせも全て生徒が行い、教員が口を出すことはありません。以前、内田樹氏に63回生が講演を依頼した時も、森達也氏に64回生が講演を依頼した時も、講演前日の(後援者と講演Pメンバーとの)打ち合わせに関しては、会場に連れて行く引率までは行いましたが、打ち合わせの間中はずっとテーブルから離れた椅子に座って待機していました(飲み物も食事も、教員には出ません)。今年も、どなたに講演依頼を送ろうとしているのか、ぼんやり想像はつきますが生徒には聞いていません。
 そう言えば先日、中3~高2を対象に、文化祭の呼称に関するアンケートが行われたんでした。中学共学化が完成し(初の中学共学化学年、即ち我々67回生の高3を前に)、「男く祭」という名称を変えるか否かの投票です。変更案として最も高支持率だった「青く祭」との2択は、男女ともほぼ5:1で「男く祭」を指示する結果でした。無論、ここに教員の意図は全く介入していません。個人的には、妥当な結果だと思っています。調査対象から高3を外したのは失策(過去への軽視)だと思う私は、文化祭が本当に祭りなのであればその主催は「現成員」ではなく全ての「先行者」だと考えるのです。毎年、「男く祭」にはその年の文化委員が考える副題がつきます(「男女驚愕」だった年もありますね)。当面は、「現成員」の意図の表出はそのレベルで良いのではないかと思います。いずれ必然性が生じれば、また変更論は浮上して来るでしょう。
 教員が不介入と言いながら思うところを述べたのは、勿論自分が祭りの主催である「先行者」(用はF校のOB)の一員だからですね。

 さて、高2現代文の授業は中沢新一の贈与論「Not I, not I...」、『純粋な自然の贈与』の一節です。10年前なら「メカ沢新一」のモデルと言えば即座に通じても今は通じませんね。もしかしたら、村上陽一郎古畑任三郎のモデル(になったと言われている)と言っても今の生徒には通じないのかな。
 で、肝心の中身も通じにくい。贈与はエロスの(結ぶ)力に基づく倫理の世界、売買はロゴスの(分ける)力に基づく論理の世界、と言って生徒に解るかと言えば解りません。でもこちらには策があります。何かいい例え話はないかなぁ、と布団の中で考えて思い出したエピソードは、61回生高3の東大理系漢文特講の1シーン。本文冒頭には慣用表現の「借書一痴、還書一痴」、これは七五調なら「本を貸す馬鹿返す馬鹿」と訳して「所有する知は秘匿せよ」の意。これが自他分離のロゴスの論理。ところが、61回生Sくんは「本を貸す馬鹿返す馬鹿」と正しく訳した上で、「本は貸さず与えよ、返さず別の人に回せ。知は広めて共有せよ」と解釈した。これが自他連帯のエロスの倫理。集団全体に知が広がる「環」に「贈与の霊」の息吹を感じれば勝ちですね。

 朝の生徒面談、1限の数学テスト監督、2限の学年会議、授業4コマに、昼休みは芸術週間の生徒演奏鑑賞、放課後は生徒面談の後で長い長い会議。
 夜は「もりき」独酌。明日から3ヶ月は「鴨」の帰還です。牡蠣・鴨・蕪、が入ったら年暮れの合図なのかな。

恋のウォータールー

 先日、ユーミンの記事展の図録を代理購入して下さった58回生Yくんと1月4日に(御礼がてら)飲もうという約束をしているのですが、今日、自宅最寄りのセブンイレブンでそのYくんとお友達の58回生Mくんと偶然の鉢合わせ。お誘いしたら仕事上がりに参加できますとのお返事で、こういう幸先の良い飲み会って多分成功するんですよねぇ(ずっと先の話ですけど)。さて、Yくん・MくんラインのIくんは参加出来るかなぁ(お声はかけているんですが、お医者様故シフト次第というお返事でした)。
 因みにその前日、1月3日も卒業生との飲み会が入る可能性が高く、予定を空けています。リハビリステーションの母君は、12月31日から私の自宅に3泊の滞在予定で、この3夜が1年ぶりの休肝日ということになりそうです。その前日30日の夜は、56回生(卒業10周年)の大忘年会で、これは主任英語先生(現在は67回生高2学年でご一緒)を中心にとんでもない夜になるんだろうなぁ、と予感(確信)。

 本日は授業が1コマ(高2現代文)、昼休みの生徒面談は今週はお休みで、音楽室で金曜日まで毎日開催されている芸術発表会を鑑賞です。高2B組も、合唱部・器楽同好会から個人参加まで、何人かの生徒が演奏を披露します。今日は合唱部がABBAの曲を披露して面白かった。
 その他は、会議が1コマ。放課後は東大理系漢文特講も。

季節はずれの雪が降ってる

 数ヶ月前にAmazonで在庫切れだったので、飯田成実『一文物語集』はもう手に入らないものだと勝手に思っていたのですが、今朝何気なく(ダメ元で)検索してみたら、新品が3冊「在庫あり」で、2000円以下の値付けの古本も2冊出ていました。早速、新品1冊と古本2冊とを購入です。新品は保存用、古本1冊は学級文庫、残る古本1冊はいつか本当に小説が好きな卒業生に贈りましょう。

 午前中は学校で仕事。12時に仕事を切り上げた後、欲しいと思っていたゲームソフトを購入して自宅でプレイ。3DSの『真・女神転生 DEEP STRANGE JOURNEY』です。やっぱり、女神転生は3DダンジョンRPGとしてプレイしたい(シミュレーションRPGではなく)。

転校生とブラック・ジャック

 葉室麟『嵯峨野花譜』読了、★★★★。
 安田弘之『ちひろさん(7)』読了、★★★★★。今年の収穫、これは事務嬢さんにお貸ししたら喜ばれるだろうなぁ。

 本日1限は高3文系漢文だったのですが、授業開始10分前に教室に入って板書準備していた時の生徒の会話が凄かった。ご退職後、今は請われて高校テニス部をご指導なさっている超ベテラン保健室先生、のことをテニス部部員以外はもうよく知らない。時折見かけるお姿と、切れ切れに入ってくる断片的事実とからだけ人物像を想像した結果が、以下。
 A「保健室のあの怖そうなおばさん、何なん?」
 B「職員室に果物届けるって聞いた」
 A「えっ、農家?」
 C「農家のおばさんが何で俺らの模試の成績を知っとん?」
 震えましたね。

 本日は半ドン業務の後、新幹線で小倉に移動して芸術劇場にて劇団ゴジゲンの舞台『くれなずめ』。F校の誉れ・松居大悟氏作・出演の公演を鑑賞、アフタートークは松居氏の生みの母親にして福岡では知られたローカルタレント・トコさんとの対談です。
 小劇場(100人ちょっとの客席は満席です)は初めて、ですから勿論ゴジゲンの舞台も初めて。客層は若い人が中心ですが、私の母親世代の人々も散見されます。私の2列後ろに、トレードマークとも言えるド派手なお衣装が目を引くトコさんが座っておられました。

 演劇60分。

 F校演劇部の公演で、バスケットボールの得点板を使って日付を表現するというのを見たことがありますが、そういうのが常套なんでしょうか。今回の舞台でも、目まぐるしく行ったり来たりする時間軸を客席に伝えるために、或る方法で一人の登場人物のその時の年齢を表示するという手法が取られていました。
 でもって、タイトルが『くれなずめ』で、中心となるシーンの時間設定がお昼に行われた結婚式後に2次会を待つまでの時間(殆どのお店がアイドルタイムだという時間)だという着眼に驚きます。確かにこの時間は、明るい最中に酔っ払った状態で放り出されて、よく分かんないまま2時間後の2次会を待つとかいうシュールな時間です。そういう宙ぶらりんの心身の登場人物たちが、とある人物を巡る過去の解釈の再解釈の再解釈の……と書いても劇の内容は伝わらないでしょう。結論を一言なら、面白かったしとある登場人物(もやしっ子)が60分間の間にどんどん格好よく見えるようになっていったのには少し感動すらしたし(客席からすすり泣きの声が溢れてたのには「そこまで!?」と思いましたが)。
 アフタートークで、息子松居氏の大ファンで今回の公演ツアーも20回近く観劇なさっておられるというトコさんが、作品に込められた松居氏の意図(の母流の解釈)を熱弁しようとすればするほど松居氏が「それは劇を通して言ってるから……」と困っておられるやり取りが印象的でした。

 小倉は出身地ながら成人以降の居住地は東京→K市で、夜の店の知識は皆無。「菅生寿司」が開いてたらと思っていたら店休だったので、とっとと諦めてK市帰還、「もりき」にて独酌。