気まずい 気まずい 就職しないと気まずい

 書くのは何度目かかも知れませんが、F校のスローガン「授業が命」に対して「生徒が命がけで授業に臨む」の意だという誤解が(一部で? 広く?)まかり通っているのが不思議。「命」などという語彙を比喩的に使う軽薄はあり得ないのでこれは確かに「命をかける」の意だとして、子どもが何かに「命をかける」ことを教育者が求める訳がないですよね。これは「F校に就職した以上、教員が命がけで授業をする」の意だと考えなければ理屈に合いません。「命をかける」のは大人で、子どもは将来自分が「命をかける」何かを選ぶその選択肢を広げるために勉強しているのです。綺麗事に聞こえるでしょうが、スローガンなんだから綺麗事に決まっています。後は実践如何。

 江口夏実鬼灯の冷徹(25)』読了、★★★★。

 本日は普通なら土曜日に行う高2Bの現代文を金曜日に変えてもらったので(時間割の同窓同僚数学、及び土曜日に移ってくれた国語科後輩先生に多謝)、高2全クラス現代文(5コマ)、及び高3文系東大漢文(1コマ)で6限中6コマが授業というギチギチの日程。変更を願い出た理由は勿論のこと上京旅行で、明日は1限の高3漢文を終わらせたら年休を取って速攻で学校を飛び出します(恐ろしいですが機上の人になります)。6コマの授業というと気力体力の消耗甚だしく、というように思う向きもあるやもですが、実際には趣味でやってる原研哉『白』を5回も読むことが出来るし、高3の漢文も月曜日になった特講と同じ内容だし、とそうはキツいものでもなく。というか、63回生高3の年度の土曜日が1~4限センター現代文、5・6限東大理系現代文、7・8限京大現代文だった上に日曜日に特講の添削が10時間かかったというあの地獄に比べたら、6コマ/6限の日程など物の数ではありません。

 昼休みでは終わりきれなかった高3漢文の添削を放課後にやろうかと思っていたら、真面目な受験生なら「近寄るな危険」の茶髪・金髪のロッカー2人が職員室に遊びに来ていて、この63回生2人(理系Kくん・Hくん)がまたエラいこと面白い子たちなんで話が盛り上がってしまいました。
 高1Cで担任をやって、文理分けでは絶対に文系に行けと最終決定日の前日夜まで説得した(確かあの時はライブバー「A」からの泥酔電話でしたが……あ、向こうから掛かってきたんですよ、一応)Kくん。担任の説得を振り切って理系に進んだ後で浪人時に文転というあるあるを経た彼は現在九大法学部でひぃひぃ言ってます。人と会話するときの頭の回転の速さは63回生でも随一で、顔色というか声色というか論理展開色というか、とにかく寸言から相手の出方を伺う天才、っていうとディスってる感があるか、でもまぁ彼と話してるとちょっと普通より頭使わないといけなくてこれが楽しいんですね。そのKくんが現在大学(2年生)でひぃひぃ言ってるのは1年の時の落単芸を経た落ち穂拾いが忙しいからでこれもまたあるあるですね。相手の出方を伺う天才は、でも端的にメンタルが弱くて諦めが早いから、今年来年は単位を溢さないよう、ちょっと意識的に自分をいじめないといけないかな(じゃないと4年次の就活に支障が出ますし)。まぁ、基本的には大丈夫だろうけど。
 片割れHくんは本物のロッカーで、F校卒業後は大学進学を選ばずにメタルバンドでギタリストをやったり、依頼された作曲をこなしたりして完全に自立生活を送っておられます。メジャーではない音楽活動というのはちょっと前の私には想像もつかない世界だったのですが、去年末から何度か地下アイドルの活動を見ている(それ系の新書も読んでいる)ので、「地下アイドルの活動みたいな感じ?」と訊いたら「プロデューサーのゴーストライターで作曲したこともありますよ」という詳述秘匿が必須のお返事も。「師匠」と呼ぶギタリスト氏との関係とか、仕送りなしの完全自立生活の苦労とか(20歳にして税金がとか保険がとか年金がとかいう台詞、隣のKくんには全くピンと来ない様子です)、渋谷パリピが集うバーでのアルバイトの話とか、一々が社会人の生々しさと音楽業界の不思議さとに満ちていて面白いんです。
 そんな2人が共通して(今更ながらと自分たちで前置きして)元担任団の国語教師を褒めて下さったのは「大学で自分の学部の勉強と教職とを両立させて教員になったこと」でした。Kくんに言わせれば1限・5限に行われる教職の授業にきちんと出席するというのは「あり得ない」話だそうで、Hくんに言わせればそも大学と就活というのが両立するというのが「あり得ない」。私の場合はちょっと特殊で、中1の時からF校国語科教員以外の道を考えたことがなかったから、中高6年は「顔を売る」就職活動だったし、大学5年(あれ?)は「免許を取る」就職活動だったわけで、特定の職場に向けて11年も就活やったんだからそらそこに就職しないとナイトってなもんです。
 いずれKくんは就活経てそれなり以上の企業に入るでしょうし、Hくんはその道に邁進するのでしょう(通りがかった元担任団、数学は「その道で頑張れ!」、英語は「直ぐに大学受験だ!」、と真逆なのもあるあるです)。素面で90分喋って飽きることがなかった二人だから(変な理由ですが)、どこに行っても大丈夫だと思います。今度は飲みに行きたいなぁ。向こうが学校に来ると、校門前の警備員さんを混乱させちゃうだろうし(風体が奇抜だから不審者相当の誰何だったそうです)。

 夜の「もりき」では、あらお懐かしやのセブンさんと遭遇。店舗オススメの惣菜・デザートをたんまりいただきました。