オレは天使? オレは詐欺師?

 文系高3なら、例えば川田順造(一橋)、石川淳林達夫(京大)、辻邦生(センター)などの演習を通じて、書き言葉と話し言葉との違いはどこかで集中して扱わないといけない。書き言葉を正面から論じた09年東大の原研哉『白』だって、傍線部を施された本文の「紙を中心としたひとつの文化」という書き方に「もうひとつの(音声言語による)文化」への(意識的なのか無意識的なのかは分かりませんが)配慮を感じることが出来そうです。

 今日の演習は、京大の林達夫「文章について」。1988年度に一度出題された文章と全く同じ文章が2011年に出題された、その2011年の問題(解答欄が短いので)を使用しました。23年を隔てているとは言え、まさか同じ文章が出題されるとは、と当時驚いた記憶があります。2011年は数学のカンニングで激震が走った(大したニュースではないのに京大とマスコミとが大盛り上がりした……「股間に挟んで左手で」というニュースの見出しに「遊び」感が漂ってましたね)年なんですけど、入試的には同じ文章が問われたことの方がインパクトが大きいと思ったものです。この時の高3現代文は担当していないんですけれども、担当していれば京大特講で絶対に扱っていました。国語科恩師先生のお教えに従い、東大・京大の入試は40年前までは遡ります。

 さて、授業後は添削ガシガシ……なんですけれどその合間、16時~18時にちょっとしたお仕事が入りまして、それが高校クイズ研究会(私が名ばかり顧問)の高文連からの取材。部活風景の映像や部員・顧問へのインタビューが冊子やネットで流される、と。はいはい。
 で、例会撮影・部長コメ収録の後、部員全員で10秒のキャッチ映像を撮る。撮影会社の演出で……「何故クイズをするのか?」の問読みで全員一斉にボタンをピンポーン! と押し、「そこにクイズが……」と逆転裁判風に人差し指を突き出して「あるからだあっっ!!!」と、文化系を輝かせたらまぁこうなりますよねという典型。

 の後、顧問の私へのインタビュー。高校時代(私もF高のクイ研でした)、大学時代(TQCですね)の話や、最近F高が高校生クイズ全国大会の常連っぽくなってることに関してなど。さて、その最後に、高校生向けの媒体なら良くあるお決まりのパターンで、「これから社会人になる高校生に送るエールやメッセージなどを一つ」と来た。これには閉口するのですが、インタビュアーの方に対して出来るだけ誠実にお答えする。
 私「私は、F高を卒業して大学に行き、再びF高に帰ってきた人間です。所謂『社会』での経験を全く持たずに狭い世界で生きている非社会人ですので、社会人を将来像としている高校生に贈る言葉を持たないのです」
 イ「それでは、そういうお立場から一言!」
 私「そうですか。それでは、一所懸命に勉強して下さい。勉強をすれば、社会経験を全く持たずとも金銭を稼いで生きていくことが出来るかも知れません」

 さて、「ジェネラリストになるべき」的な改変をされるかなぁ、などと思いながらマイクを外していたら、撮影業社の責任者の方が「先生って、随分変わった方ですね」と。マスコミに言われる筋合いはありません。