かっこわるい 朝からとにかく始まる

 英語先生と理系の生徒某とが夏休みの(というかこれからの)英語の勉強について長~い相談をしている。
 英語「一文に2語知らん単語があったら文章の意味は絶対掴めん」
 生徒「周りから類推すれば……」
 英語「類推とか出来る訳ないやん!」
 生徒「……」
 「絶対掴めん」をそうですかと認めたがらないのは、認めたらその瞬間から単語の愚直な暗記をしないといけなくて面倒だからです。今まで、そんなのにまともに集中したことがない。割って入る。
 国語「あのね英語先生、この人は類推出来てたの。頭良いから。高1まではね、知らない単語を類推する為の、その周辺にある知ってる単語の語彙が易しいでしょ? でもね、今は分かる語彙も難しいものになってかつかつ覚えてる程度だから、それが本当に知らない単語の類推に使えなくなったのですね。でね、お生徒さん。科学的には間違ってるらしいけど、茹でガエルの話は知ってる?」
 生徒「いえ」
 国語「熱湯に入れたカエルはすぐに逃げるけど、カエルを普通の水に入れて徐々に温度を上げていったらそれに気づかずいつしか煮え死ぬ、って話。きみ、煮え死にたいの?」
 生徒「いいえ」
 国語「地頭の良さの悲劇で、これまで暗記を勉強じゃないと思ってた人はこれからが結構大変なの。なるほど暗記は勉強じゃないってのは実はあってるんだけど、勉強の前提だったってことを無視したのは痛かったね。理数みたいに考える勉強は嫌いじゃないから、中だるみの時期は英語から手を抜くわけ」
 生徒「僕って、中だるみしてました?」
 国語「中3の時の担任に向かって何言ってんの?」
 生徒「あ、はい」
 国語「僕はこの学年に中3から入った。きみは第1回定期で凄くよい順位を取って、次に急落したきり最後までその水準に回復しなかった」
 生徒「はい……」
 国語「きみは英語さえ上げれば通る。夏休みは単語文法を頑張ってください。『近道』とか『楽して』とか『テクニック』とか寝とぼけたこと言ってたら落ちる。天才じゃあるまいし」
 生徒「……」
 国語「しかも理数が出来るから落ちても浪人Aランクとかで、一浪して合格した後に『あ、この一年間で勉強したことは全部高3の夏秋で出来たわ』とか思いながら大学に行くの。僕は大学で一回留年した人間でそれがこんなこと言うのは何だけど、一浪一留って、親から百万の札束ぶんどって目の前で燃やすようなもんだからね」
 生徒「それは、嫌です」
 国語「でも、楽したい重力に逆らえない人はそれをする。夏休み一日10時間超の勉強の、3割から半分は英語でいいんじゃない?」
 生徒「頑張ります」
 国語「三日坊主の意味は分かる?」
 生徒「?」
 国語「あれ、三日出来て四日目から出来ないって意味じゃないからね」
 生徒「違うんですか?」
 国語「三日出来た身体で四日目が出来ない筈がないでしょ。あれは初日から失敗してるの。初日に7割しか出来なくて俺は駄目レッテルを貼って、二日目4割、三日目1割。つまり」
 生徒「初日に絶対成功するべき」
 国語「そ。8月1日が勝負」
 頑張ってください。