ああ 誰が壊してもいけない

 01年東大第一問、リービ英雄「ぼくの日本語遍歴」の解答・解説を作成。共通一時開始(79年)以降の35年間では、東大第一問の最難問なんじゃないでしょうか。56・58回生と高3現代文を担当し、今回の63回生向けの解答に関して、先日新たに書き直した05年三木清は及第水準の自信がありますが、この01年に関しては正直自信がないです。
 但し、予備校・問題集その他解答例の玉石を見分ける時に、在日韓国人作家である李良枝の日本語が凡その日本人が使っている「美しい日本語」などを余所にした純粋(で過酷)な美しさを持つ、という点に120字で触れているかいないかというのは一つの尺度になるのではないかと思います。在日韓国人であるが故に最も美しい日本語を我がものに出来たという記述は、今の受験者にどう捉えられるでしょう。
 この問題で面白いのは、漢字の問題で出題されている「排除」「普遍」がその前後にまつわる文脈を押さえるためのヒントにもなっている点(東大は、漢字の問題の選語にも工夫が施されていると信じています)。01年当時の入試は出典名非公開でしたが、現在は出典名(「ぼくの日本語遍歴」)の公開が必須。その時に敢えて「普遍」の書き取りを問うか否かで、出題と採点を巡る文脈は大きく変わるのではないかと思います。現代文って、面白いですね。
 準備している途中に、ネットのニュースでビートたけしが在日に関して、母国語には違和、母語からは排除、という二重疎外のことを語った記事を発見。直ぐさま解説プリントに入れ込む。これで分かる生徒には一目で分かる。後は、解説の時に、日本人の「美しい日本/語」と李良枝の「美しい/日本語」との違いをどう説明するか、って所ですね。

 西原理恵子『家族の悪知恵 身もフタもないけど役に立つ49のヒント』読了、★★★。筆者の長男・長女へのインタビュー付き(ファンには嬉しい)。