古い美術館に眠る 大切な宝物

 今日は美術館の日と決めています。夜の約束が四谷で18時半ですので、夕方までめいっぱい美術館巡りを。
 先に結論だけ書いてしまうと、東京の文化学習環境には流石に嫉妬するわ、という一日でした。目黒「東京都庭園美術館」に開館と同時に飛び込むこと、その次は表参道「紅ミュージアム」に移動すること、ここまでは決めていたんです……が、「紅」を出た時にふと恵比寿「山種美術館」が徒歩圏内じゃない? と思い立ち、そちらに向けて歩き出したらその通り道でピカソの企画展をやってる「YOKU MOKU MUSEUM」という施設を偶然見つける、という成り行き。結局、美術館だけで4軒のはしごです(どこの展示も良かったです)。

 先ず、目黒「東京都庭園美術館」にて、特別展『旧朝香宮邸を読み解く A TO Z』。
 旧朝香宮邸(1933年)を美術館として1983年に施設化、今日が初訪問。今回の企画展は、展示品を旧朝香宮邸「で」見せるのではなく、旧朝香宮邸「を」展示品として見せるという趣向らしく。
 入ったらいきなりルネ・ラリックがデザインしたガラスの女神に出迎えられました。館内は、宮家ご夫婦がパリ滞在中に影響を受けたアール・デコ様式がふんだん。内装デザインはアンリ・ラパンにルネ・ラリック、建築は宮内省内匠寮、2015年に重文指定です。私邸の隅から隅まで、どこを切り取っても芸術。どんな暮らしだったんでしょうね。
 建物(展示物としての)自体が素晴らしいのは当然ながら、とりわけ優れていたのは展示方法。各所に、テーマ毎に展示内容を解説した26種類(A TO Z)のカードが置かれ、それを全部集めたら出口で簡易製本出来る仕組みになっています(これだけで立派なパンフレットです)。観て楽しい、集めて楽しい、作って楽しい、館内に何人かいた男の子たちは特に大喜びでした。
 お花見気分の庭園散策も。山手線の駅から歩いて5分の場所にこの自然空間。東京って、本当に緑豊かな都市だと思います。

 表参道「紅ミュージアム」では、特別展『ミニチュア愛!』。
 天保の改革の頃には「贅沢屋」と呼ばれた「七澤屋」は、高価で精巧なミニチュアで知られた手遊(玩具)屋。雛道具や生活調度のミニチュアを造形する技術には瞠目です。江戸期には(大名クラスの金持ちの)大人の男性も愛好したそうですが、鑑賞者はほぼ例外なく女性でした。

 シガールで知られる「YOKU MOKU」の会長は「ピカチュウピカソ中毒)」だそうで、特に陶芸作品に目がないとか。「YOKU MOKU MUSEUM」はコロナ禍の2020年に10月25日(ピカソの誕生日)にオープンした新しい美術館です。企画展『ピカソ 命の賛歌』で、ピカソの愛した動物たちをモチーフにした(主に陶芸)作品を鑑賞。ピカソと言えば、近年、某人に「歩く陰嚢」とまで罵倒された女性遍歴を以て、良くない意味での再評価がなされている芸術家ではありますが、やっぱり作品展となれば観たくなります。

 恵比寿「山種美術館」では花をモチーフにした特別展『A World of Flowers 2024』。美術館所蔵作品の大部分を占める日本画のみならず、梅原龍三郎中川一政などの西洋画も少し。写真は土牛の桜のみOKで、モデルになった(秀吉の「醍醐の花見」で知られる)京都・醍醐寺のしだれ桜を組織培養で増殖したものが美術館横に植えられていました。

 「山種美術館」側のバス停から渋谷に移動して(都バスに乗るの、割と好きなんです)、山手線で大塚へ。都バスに乗りたかっただけで、渋谷という街自体には何の魅力も感じません(タワレコに行こうかどうか迷いましたが、美術館巡りでちょっと疲れを感じたのでやめにしました)。駅近くの酒屋「こだま」を初訪問、小箱店舗に圧巻の品揃え、津々浦々の日本酒の中には、私の全く知らない銘柄も幾つか。4合瓶を6本購入して配送手続き、久々に見て自然と手が伸びた「白露垂珠」以外は全て未踏破の蔵です。その後、大塚から1駅隣の池袋へ。
 ホテルでゆっくり入浴、夜の待ち合わせギリギリの時刻に四谷に到着。

 福岡市・K市での修業期間を終えて今年1月から東京の弁護士事務所勤務となった63回生Iくんは、担任を務めたA組勢の中でも特に飲んだ回数の多い(リクルートEくんと2トップ)最早「飲み友」なのですが、東京で飲むのは初めてのこと。彼の職場が四谷だと知って即座に訪問を決めたのは「鴨の助」という蕎麦屋です。但し、ここの売りは何といってもランチ大行列の親子丼で、入り口の暖簾・幟・看板の全てに「親子丼は飲み物です。」と大書。この親子丼を、とあるレジェンドシェフ(フレンチ)が大絶賛しているのを目にして以来ブックマークしていたのです。
 本日の63回生メンバーは、Iくんの外に、経産省Tくんと財務省Mくんと。フレッシュIくんからは弁護士事務所での体験談を、すっかり社会人の2人からは近況や他の63回生の話を。Tくんは夏から海外赴任(留学?)が決定しているので、若しかしたら今夜を最後に暫く会えないかも知れません。仕事の話では、Iくんが「こっちのターン/向こうのターン」という言葉遣いをしているのが面白かった。あと、「鴨の助」のメニューの「ソフトドリンク」の欄に「親子丼は飲み物です。」があったのには、それが親子丼のメニュー名であること、「飲み物」だから「ソフトドリンク」の欄に入れるという小ボケ、2つ合わせて笑ってしまいました。普段、酒のメニューしか見ようとしないせいで、せっかくのボケを拾い忘れるところ、要反省です。因みに、その酒のメニューには未踏破の蔵が1つ。
 767蔵目・長野「美寿々」(純米吟醸 無濾過生)。

 ダイエットに成功したら別れた元カノとよりを戻せるというMくんを2次会で四川料理(現地系)に誘うのは我ながらどうよと思うけれども、喜んでついてきたんだからもう知らん、と訪れたのは新宿「天府舫」。3~4回目の訪問ですが、いつも店名を忘れてしまうので、「新宿 四川 蓮舫」の3語検索で見つけるのがお約束になっています(蓮舫、全然関係ないのに)。池袋が「知音食堂」なら新宿はここ、遅くまで開いている(そして大体、閑散とはしていないながら予約なしでも入れる程度には席に余裕がある)のも魅力です。大体の皿が真っ赤、青島ビールが進む進む。
 因みに、店に行く途中で横を通ったラーメン「龍の家」の前には(夜遅い時間なのに)もの凄い行列。K市をよく知る4人共通の感想は「そんなに~?」というものでした。