イツカ ヒカリ トケテ メザメ イキル イノチ

 2時起床、3時過ぎから「Joyfull」で添削。5時に学校に移った段階で、残っているのは一橋(沼野充義)200字要約が11枚のみ。でしたので添削だけでなく即席の解説プリントも作成。この問題は、ロシアの本屋で筆者が見て嘆いたコーナーが「インターネット」「マネジメント」「マーケティング」だという密やかな記述から、筆者の言う仮想空間の言語全体主義が英語・市場主義・グローバリズムだ、と読むことも可能(答案に反映する必要はありませんが)なのですが、高3にそんな話してもねぇ、とも思う。

 添削答案を副担任世界史先生に託して朝のSHRはお任せ。8時前に学校を出発して一日年休。新幹線でK市から小倉に移動し、タクシーで15分、実家には学校を出てから90分もせずに到着です。新幹線の車内では夕方の特別講義の板書計画をしたのですが、やりながらこれなら車内で答案添削も出来ると得心。

 実家で母君から今日の入院がどのような手筈で行われるのかを伺い、家族(唯一私のみという母子二人家族なのです)の同意署名が必要な書類にサインと押印。私の知らないところで医師とのやり取りがあるのでしょうね、母君はおおよそ検査の結果を予想なさっている様子。生死にかかわる病気に罹る、その家族の立場に立たされる、母君も私もともに初めての体験で分からないことだらけ、悲しいとか怖いとかいうよりただただ戸惑っているというのが実際です。会話は途切れがち。
 午前中の指定された時間に病院に行くと、体重測定の後で病室へ案内された母君はすぐに病院着に着替えさせられました。その後、どのようなタイムスケジュールでどのような検査を行うのか、を微に入り細を穿つとはこのことかという詳しさで聞かされる。担当の看護師さんの説明だけで、そうですね、30分弱はかかったでしょうか。後で説明不足を糾弾されないための措置なのでしょうが、長すぎる説明を母君のように丁寧で有難いと取らずに病人を疲れさせるなよなあと受け取る私は、まだ当事者意識が低いのかも知れません。

 1泊2日の検査入院とは言え、良くない結果に対する覚悟はしておかなくてはならないということで、必然病室の会話は「そういう方向」に流れて行かざるを得ない様相。どうせ明日退院したら母君も明後日から仕事なんですから、出来れば過去の話よりも明後日の仕事の話を聞かせて欲しいところですがそうも行かない。走馬灯を回そうとするか、未来の話をするにしても死を仮定した話に傾きがちになるわけで。
 昼過ぎに、11年前の母君の入院のときにもお世話になった生命保険会社のHさんがお見舞いに来てくださいました。最初に腫瘍の存在を告げられた時にも、母君はまずHさんに連絡を入れられたそうです。お世話になりっぱなしですね。
 生保レディという聞き上手が現れると、母君の走馬灯語りにも甲斐が出るというのでしょうか、私の子供(顔を覚えていない父親と3人で暮らしていた2~3歳)の頃の話を始められ。その頃の私の記憶力が如何に素晴らしかったか、を滔々と。どうやら「駅の名前を全部言えるようなガキ」(by三代目魚武浜田成夫)だったようで、これはもしかしたら初耳かもしれないんですけれどもそれよりなによりそばで聞いてて恥ずかしい。
 「あの~、いたたまれなくなったので、仕事に戻りますね」と、母君をHさんに託して病室を出て、タクシーで小倉駅。16時の特講に間に合うギリギリの新幹線に飛び乗る。車内では板書準備の続き。

 JRのK駅からはタクシー、15時30分に職員室に飛び込む。特講のプリント教材を準備して会場教室のB組に置き、SHRを終えたA組の掃除を覗く。
 A「あれ、出張は?」
 私「特講があるので帰還したっす」
 B「帰ってきたヨッパライ!」
 私「宿酔いじゃねえ! っつか何でそんな古い唄知ってるんだ」
 C「昨日ゴミ箱にビニールを掛け忘れてて中味も溢れてたよ」
 D「担任として今後はこういう事の無いようにしていただきたいね池ノ都くん」
 私「わーったよっ!」
 日常性の維持、さあ、特講!

 理系漢文特講は04年蘇軾。テーマは医療薬効について。またもや病気の話を解説しないといけない因果なめぐり合わせですが、この問題はなかなか難しい。蘇軾と欧陽脩との対話の中で、最後に欧陽脩が「大笑」した理由が問われているのですが、これがどの問題集・予備校解答例を見ても答えがバラバラ。鉄緑会様は何が問われているのか分からないと暗に悪問だと批判なさってます。
 でも、私はこの「大笑」は確かに答えが一つに絞れると思っておりまして、過去200人弱の東大志望者(文系も理系も)を添削した中で2人だけがそれを書いてきて、かつその2人が(内1人が数学オリンピック2年連続金メダルであったように)もう絶対頭いい! って人たちだったのでそれを正解だということで採点基準にしちゃってるんです。東大生正解率1%のクイズなんてのは、こういうのを言うんだと思いますのよ。

 17時に特講が終わり、2時間で採点を7割方終わらせ(本当に予想通りの進捗状況!)、19時からは居酒屋「H」でビール120円祭りを蹂躙。職場の仲良しの先生方と歓談。
 今日の話題でいちばん面白かったのは、教員の一人称の話。生徒と話す時の一人称、私は「僕」なんですが、多いのは「俺」や「私(わたし)」でしょうか。今日の話題では、生徒相手の一人称に「先生」を使うのはありかなしかというのが盛り上がりました。その根拠を各々が出し合うんですけれども、こういうのって色々な先生がそれぞれの立場から様々なことを考えてて、聞いてると面白いんです。