私はいまその残酷な若さに

 健康的に起床、入浴、ネカフェで作業。本日の予定は昼飲み、夜飲みの2軒……じゃない2件だけ(軒数は3軒以上かも)で、若い頃と違って間に休憩(仮眠)を挟まないとやっていけないことが予想されますので、本当に「飲み会(恵比寿)」、「休憩(池袋)」、「飲み会(東武練馬)」の3つで一日を終えます。何しろ、恵比寿は22歳F高卒業生、東武練馬は26歳現役自衛官とそれぞれ一騎打ちです。単体でも返り討ち必至のさし飲みが連チャンですから、こちらもそれ相応の覚悟が必要。絶対に生きて帰って、明日のオツカル様との半日デートは最高のコンディションで出掛ける! と、決意している私の喉は起き抜けからガラガラなんですけれども(昨日のカラオケで頑張りすぎたかな)。Twitterのフォロアーは昨日のGくんが加わって96人に。一緒に飲んだことがある人のフォローのみ許可しているんですけれども、たった6年で100人に近づくとは驚きです(6年は長いと思う向きもありましょうが、こちらは20年公開ブログを続けている「日常性の維持」原理主義者なので)。

 今日の夕方に羽田から実家帰省をするという64回生Tくんと「内定おめでとう」飲み会。品川近くで昼飲みが出来そうなエリアを考えたら、まぁビールの街が浮かびます。というわけでノープランで11時に駅集合。
 先日、Tくんに時間と駅とをメールした後、最悪ビアガーデンでいいからそないに真剣に考えんでもいいかな、と恵比寿の昼飲みスポットを探し始めたら、2分で完璧な店を見つけてしまいました。西口徒歩3分の焼鳥屋「たつや」。店名が「たつや」でビールが「大」のみ、って今日の昼飲みのために店を開きましたみたいな歓迎っぷりじゃないですか(Tくんとは、大塚の「ぐいのみ大」にも行ったことがあります)。朝の8時から焼鳥で酒が飲める店、ってカオスっぷりも好感度が高いです。

 「外資系のエリート候補をこういうザ・昭和なところに連れてくるのはあれだけど」と大ジョッキで乾杯したのが11時15分。
 そうなんですよ、64回生といったら最速でも現在大学3年生、その冬に内定というのは日本の企業ではあり得ない話(だから外資系だっつーのはバラしてもいいよね)。昨日、「モルガン・スタンレー」を思い出そうとして「モーガン・フリーマン」に10分以上邪魔されたくらい職業社会に疎い人間ですが、彼が就職しようとしている某社の名前は知ってます、超有名だもん。
 で、その就活や同期(になる予定)の人々やの話を聞く。先に誉めておきますと、Tくんは事前に「何か食べたいものある?」とメールで聞いたら「あんまりジャンクじゃないもの」と返って来るような育ちの良い人で(場末の焼鳥はOKが出ました)、基本的にとても真面目なんですけれども、周囲に求められたら求められるままのキャラクターを真面目に貫く(想像ですけど、多分合ってます)せいで節穴eyesの半端東大生からはオフコース寄りの人間だと誤認されがち、
 私「みたいな立ち位置でしょ?」
 T「××社の内定って、『なんでお前みたいなのが』って言う人、多い」
 私「開き直って自慢するのも恥ずかしいし」
 T「そこは、だからよっぽど仲の良いやつとしか話題にしません」
 私「今日、15分に1回くらいドヤって良いよ」
 T「本当に?」
 人の自慢話を聞くのは好きなので、共利共生です。焼鳥は、まぁK市の人間ですから頑張って誉めて「まぁまぁ」ってところですけれども、ビールはぐいぐい進みます。2時間飲んで、Tくんは大ジョッキ3杯、私は大ジョッキ3杯と日本酒2合(ここでストップ)。外資就活の話はとっても面白かったんですが、詳述すると会社がバレちゃうかもなので残念ながら割愛。

 飛行機まで時間があるしまだお腹には余裕があるし、ということで帰省用のトランクを引っ張っている人をあまり動かすのはあれですが渋谷に出て2軒目を探すことに。俺は酒が弱いですと自称するTくん、渋谷駅の階段で誤ってトランクを滑らせるという絶対やったらあかんやつを披露してくれたので(誰にもぶつからなくて本当に良かったです)、2軒目は飲み屋回避の方向性で……
 私「僕は蒙古タンメンで、当然ビールは1本ずつ、Tくんは何食べるの? っつか、外資系、金出すそぶりも見せないね。いっそ気持ちいい」
 T「ごちそう様で~す!」
 飲み屋回避の結果、「中本」でラーメンを食べることに決めたんですが(私は「二郎」的なジャンク、というよりも豚の餌を許しませんが、「中本」は割と好きです)、でもってそれを決めたのは私じゃなくてTくんなんですが、
 私「好き嫌いとは確かに別の話だから良いんだけど、汗、凄いことになってるよ」
 T「いや……だって辛……せん……先生は……汗か……かないんですか……」
 私「辛いとは思ってるけどね、そんな、音が聞こえそうな汗は流石に」
 T「辛い……辛い……」
 48キロメートル地点みたいな表情でメンを啜る様、望んでやってるみたいなんで同情はしませんが、取り敢えずビールは半分飲んであげました。完食直後のTくん、汗だらだらで口を「○」の形にしながら呆然と虚空を見つめています。「酔いは醒めた?」くらいのことを聞けばいいところなんですが、頭に浮かんでしまったら言わずにいられないのが性で、
 私「あのさ、Tくん、油断しないでよ。顔。今、完全に『事後』の顔になってる」
 T「いや……もう……むり……」
 私「だから南極2号みたいになってるって(北極ですけど←すんでのところで飲み込んだ血痰駄洒落)」
 店出てダッシュでトイレに行ったTくん、戻ってきたらすっかり元気になってて「鏡見ましたけど、あれは確かに『事後』だわ」と笑顔。本当に真面目だなぁ。

 空港(品川)へ向かうTくんとは反対側の山手線、ホテルのベッドで2時間の仮眠。大浴場で湯浴みの後、わしゃほんまに何をしに東京へ、というセルフツッコミに耳を塞いで東武東上線、18分で東武練馬。駅前のコンビニで特保のお茶を買って、持参のハイチオールC(4粒)とペパリーゼ(3粒)を流し込む。さぁ自衛隊、バッチ来い!

 東武練馬は(そういえば最近は全然会ってない)さだっちが住んでた駅なので、焼鳥「○けい」や居酒屋「棟梁」など数件のお店を開拓済みです。
 私「南口はあんまり使わないな~。いっつも北口ばっかり」
 A「『棟梁』は行かれたんでしょう? 今日のお店、『棟梁』の隣です」
 私「『棟梁』って南口だったっけ? もう忘れちゃってるや。でもさ、あんな人気店の隣の店ってことは、期待してもいいってことだよね?」
 A「日本酒好きならもう絶対。オススメです。焼鳥も美味しいですし」
 私「あ、良かった。実は昼も焼鳥だったんだけど、料理はそんなにだったから今ちょっと欲求不満が溜まってるんだよね」
 A「大丈夫です!」
 店まで徒歩10分弱。後ろからついて行きながら(自衛官、私に劣らず歩くのが速い)、つくづく変わった縁だよなぁ、と思います。幹部候補生としてK市に滞在した一年弱の間に「もりき」の常連となる人は少なくない。私と言葉を交わす人も珍しくない。でも、K市を離れた後でも付き合いが続く例はこのAくんだけです。彼の方から「もりき」に来ることもあるし、こうやって東京で飲むのも2回目ですし。

 私「あ、このレバ刺し、メチャクチャ美味しい!」
 A「でしょう? 私、これでノックアウトされて」
 私「あ、これはね、される。うん、される。他の串も絶対美味しいって分るもんね」
 A「日本酒も相当進みますよ。ほら、これ、メニューです」
 私「おおっ、『乾坤一』とか『長珍』とか、『もりき』にないやつがいっぱい」
 日本酒好きが繋ぐ縁、と「もりき」は言いますが、正しく言えば日本酒好きと「コミケ」が繋いだ縁。以前、63回生のIくんから「コミケ」で購入したという日本酒同人誌(もの凄いアニメ絵)を貰ったことがあるんですけれども、それを「もりき」でマスターに見せてたら横から「その本、私も持ってます!」ともの凄い前のめりに会話に入ってきたのがAくんとの初対面。そこから4時間くらい盛り上がって、もう昔からのお友達、みたいになったんですね。
 最近もコミケに行ってる、というか今年のも行く、というAくん。新婚の奥様は全く放任で互いの趣味には踏み込まないというお約束が何となく醸成されているそうでそれは素敵なカップル。コミケの話や自衛隊の話や日本酒の話で大盛り上がりのカウンター、流石に自衛隊の話は守秘義務があるのでかなり抽象的なものになります(相槌を打つ私もちょっと気を遣います。「これは聞いても大丈夫なやつ?」と確認を入れつつ)。ただ、東京では迷彩服での出勤退勤が厳禁(公共空間での迷彩服は抗議が殺到するそう)だという話は驚きました。K市では当たり前のことですし、どうかしたら飲み屋のカウンターに迷彩服だってのもたまに(あ、これ、駄目なやつだったり?)。

 そうそう、お店の名前は「鶏炭」。このお店の日本酒はマスターの趣味だそうで、「乾坤一」なら「けんこんいち」、「長珍」なら「ちようちん」とういルビがメニューの上についているのですが。私の知らない「金宝」というお酒のルビが「さもはん」になっており。これは面白い!
 一回り年下のAくんは当然名前の由来(サモ・ハン・キンポー)を知らず、私は10分くらいかけてからそれを説明した後、バイトのお姉さんに「すみません、この『さもはん』を冷酒でお願いします」と告げたのですが、お姉さんはもの凄く申し訳なさそうな顔で「申し訳ありません、それ、マスターの悪戯です。後で叱っておきますので」と仰る。メチャメチャ恥ずかしい。あ、「きんぽう」は美味しかったです。

 生2杯から日本酒4合、現役自衛官の若者(26歳にして部下が30人!)とまともに張り合って「あぁ、ちょっと酔ってるなぁ。Aくん、元気だなぁ」と少しぽわ~っとしてきた22時半(開始から3時間半)、Aくんが初めて隙を見せました。A「すいません、ちょっとお手洗いに……」
 あれだけ飲み食いさせてくれて一万と数百円で終わるってのに心底驚きました。最初に万札を2枚出したら値段がそれだったので1枚引っ込めて1000円札を1枚取り出す、という手間が無かったら完全にスマートに行ったんですけれども、財布をバッグに戻すところを見られて勝負はドローかな。
 A「もしかして、払われました? 駄目ですよ~、今日は私が池ノ都さんの分を払う日なのに」
 私「あのね、年上を一人カウンターに残してトイレに行くってのがもう負けてんの。諦めて~」

 またお会いしましょうのご挨拶、東武東上線は座らずに立ったままで20分、ホテルに帰って即就寝。今日、本当に酒飲む以外な~んにもしてないです。