水が過去から流れてきて、未来へと流れ去るように

 5時入りの職員室で昨日の一橋大学特講の答案添削。朝のSHRで返却。
 の後、タクシーでJRの駅まで行き新幹線で小倉駅(車内で放課後の特講の板書準備)、小倉駅からタクシーで実家、母君と合流したら歩いて2分の病院へ。

 診察室で科長の先生にPETの結果を聞く。先生は、正面に座った母君の眼だけを見ながら、噛んで含めるようにゆっくりと丁寧にお話になりますが、その中の少なくない量が母君の記憶からこぼれ落ちることは経験済み。ですので先生の言葉の伝達意思は殆ど横に立つ私には向いていないことを知りつつ、その一言一句を取り過たないように意識を集中する。
 PETの結果。リンパ&小脳の転移については前者「FDG異常集積は認めません」、後者「同定できません」。故に、両者とも今の段階では転移とは認められないというお言葉。
 先に、「先生の言葉の伝達意思は殆ど横に立つ私には向いていない」と書きましたが、これは先生が患者の家族に何も伝えたいとは思っていないという意味ではありません。そうではなくて、母君に向けられた「転移とは認められない」という部分に重心を置いたメッセージが母君を安堵させたのとは別の次元で、私の方には「今の段階では」という部分を聞き漏らすなという意思が(気のせいかも知れませんが)伝わって来たという意味です。
 癌のステージは「ⅠorⅣ」という宙ぶらりんのもの(本当にカルテにはそう書かれました)。転移がないなら前者、転移があれば後者、その判断が現段階ではつかない。そして、現段階で転移が認められていないということで、肺癌患部は早急に手術をするということになりました(先生には伺っていませんが、転移が明確に認められていたなら手術はしなかったということなのでしょうか)。そして、手術時の検査如何で、上記ステージも定まる、とのお言葉でした。
 手術は29日(水)。

 数字のインパクトは強い。「ⅠかⅣかって、相当に宙ぶらりんだねぇ」と母子とも片付かない顔をしながら、思ったよりも早く終わった病院から帰った自宅で昼食。母君がしげしげ眺めているスプレー缶みたいなもの、最初見た時はヘリウムガスでも入っとるんかと思ったそれは、ガスを吸うんじゃなくて吸入口に見えるそこに息を吹き込む器具なんですね。一定以上の量を吹き込めたら、ブブセラみたいに音が鳴る。肺活量を鍛える器具だそうで、それを今日から使って手術に備えるそうです。

 気散じがてら、私の冬用のジャケットを購入する買い物にも母君に同行いただきまして、途中、入院までの予定や仕事関係のあれこれをお話しする。
 手術当日は流石に一日張り付きだろうから、SHRを副担先生に依頼することと1~6限の授業を別の日と交換するのは絶対にお願いしなくてはならないとして、後は前日の理系漢文特講の答案をいつ返すのかということと、当日放課後の一橋大学現代文特講をいつに振り返るのか、ということですね。学校に戻ってから考えよう。

 新幹線でK駅、タクシーで学校。15時30分に到着後、先ずは保健室で先生に結果をご報告し、16時からは東大文系現代文特講。
 今日の教材は11年の第一問、桑子敏雄『風景のなかの環境哲学』です。この問題について私は、何より先ず08年の第一問、宇野邦一『反歴史論』と全く同じ論理構造だと気づくかどうかが大切なのではないかと思います。過去問原理主義者なんで。というわけで、プリント資料や解説もその方向のアプローチから。
 私が現在の63回生の前に高3現代文を担当したのは58回生で5年前。ですので、2009年以降の問題はセンターも二次も全て授業では初めて扱うということになります。自然、問題を解き、解説プリントを作り、解説し、添削し、という全てのプロセスが全くの手探り状態になるのですね。生徒にはちょっと申し訳ないですが、私にとってはこれが一番の勉強になるというのが事実。

 今日は色々あって疲れたので、特講終了後には答案に一切手をつけずに退勤。「もりき」でHさんと湯豆腐を食べて、帰宅、昏昏。