細い絆の糸引きひかれ けいこ不足を幕は待たない

 去年(63回生担任時)のセンター初日は、緊張で殆ど寝付けず、2時前とか1時過ぎとかには目が覚めていたような記憶があります。布団の中でまんじりともせず2時間超、5時開門の学校に飛び込んで(殆ど手につきませんでしたが)雑務。自分のクラス(文系)が職員室徒歩5分の会場(F高の親玉大学という完全ホーム)で受験する幸運は「日常性の維持」原理主義者への神様のプレゼントだろうか、などと思ったような(もう既に忘れかけていますが……)。

 で、副担任だと弛緩しまくりか、というとそんなことはないようで、今年(今日)も結局2時過ぎには目が覚めてどうしても二度寝できず(諦めてベッドの中で読書)。
 本日がセンター試験初日。文系はK工大、理系はK大(F高の親玉大学)で受験です。7時半に家にタクシーを呼び、20分弱の移動で先ずは文系K工大に激励。毎年毎年センター当日はどうしてこんなに寒いんだ、という気温の中、白い息を吐きながら続々やってくる文系諸氏の様子は一言で言うと「元気」。緊張の様子が隠せない生徒もいましたが、これまでの「日常性」を繰り返すだけだと腹を括れている生徒が多いような印象。
 社会を2科目受験する文系の方が初日の朝が早い。ということで、K工大から(文系担任先生の車に乗せていただいて)車でK大に移動したら丁度理系生徒が会場入りする時刻。激励。K大学の方では、我らが63回生の浪人組(3人)とも言葉を交わすことができました。

 不断の努力で普段の実力、全員の健闘を祈念!
 ……ではありますが、入試はやっぱり他所との勝負だわ。「F高生の」健闘を祈念!

 さて、全員を見送った後は、K大学から徒歩10分の職員室に入ってデスクワーク。月曜日の自己採点の日は、進路指導担当である私はデータ処理で終日潰れるはずなので、火曜以降の授業の準備を前倒しで行うのです。国語の問題公開(予備校サイト)は今日の夕方でしょうが、現代文の解答・解説速報プリントは明日の午後に作る予定。
 あと、途中1時間弱ほど抜け出して、担任団で学校近くの大社にお詣りもしてきました。神頼みも大切。

 午前中社会、その後昼から国語。の問題がどんなものであったのかは、試験終了10分後くらいしてTwitterで「国語」と検索すれば直ぐに分かります。試験直後にTwitterにかぶりつきになるのは、「落ちる受験生」と「受験業界関係者」ですね。
 今回の炎上状態は、珍しいことに第一問評論。通常の年度なら小説の中のオモシロイ文言を取り上げてお祭りにするんですけど評論とは、と見てみるとどうやら評論文の語注に「やおい」「メイド・カフェ」などが続々と出て来たそうです。そらツイ廃諸氏は大喜びのはず。

 しかし、その語注の気の遣い方が面白い面白い。さすが、文言の抽象化はセンター国語作成者のお家芸とはいえ、「やおい」を性的ニュアンス抜きで説明しようとする工夫には思わず大笑い。以下。
 【「やおい」などの二次創作=既存の作品を原作として派生的な物語を作り出すことを「二次創作」と呼ぶ。原作における男性同士の絆に注目し、その関係性を読みかえたり置きかえたりしたものなどを「やおい」と呼ぶことがある。】
 「男同士の絆」て。「関係性を読みかえたり置きかえたり」て。
 【伊藤剛=マンガ評論家(一九六七~ )。著書に『テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ』などがある。】
 【メイド・カフェ=メイドになりきった店員が、客を「主人」に見立てて給仕などのサービスを行う喫茶空間。】
 クール・ジャパンを煽りたくって素晴らしい。あ、これらの語注は写メつきで続々とTwitterにアップされてるんです。

 そんな語注がつくような評論の出典はいったい何なんだろう、そして小説は? 古文は? 漢文は?
 と、ちょっと真面目な仕事モードで気になるところですが、答えは「手の者」が直ぐに教えて下さいました。我らがA組出身慶應ボーイUくんがメールで4つとも。なぜ現役大学生がセンターを受けるのか? というとそういう「おバイト」だそうで、こないだ受験するって聞いてたんで少し期待してたらそぐわずに速報のメールで多謝。ほう、小説は佐多稲子、古文は……なんと『今昔物語集』!
 Uくんによれば古文の易化が甚だしく(そら『今昔』ならねぇ)、それを中心に全体が「多分易化」だそうです。さて、それがF高生の受験にとって吉と出るか、凶と出るか……?

 あ、Twitterでいちばんセンスあるなと思ったのは、上記『今昔』は鬼に唾を吐きかけられた男がそのせいで透明人間になるという展開だったらしいんですけれど、それを一言で「AVの設定みたいな文章」と喝破した匿名氏でした。

 さて、センター出典を確認し、今週いっぱい分の授業(中3漢文と、高3の二次対策授業と)の準備が終わったら仕事は切り上げ。
 時間にして15時30分ですが至福の独酌は居酒屋「S」にて。2時起きですから体感は「晩酌」ですが客観的には「昼酒」。ですけど許してね。去年の今日なんて、63回生の担任団、会場入り生徒の激励を終えて太宰府詣でをした後は、12時から0時まで(太宰府「梅の花」→二日市焼き鳥屋→津古居酒屋)飲みっぱなしだったんですから。