それきり、生き返ることはなかったのです。

 早朝起床、カプセルホテルの大浴場で6時の入浴。割と混んでました。レスラーみたいながっしり体型のお兄さん3人、明らかに「刺青不可」に抵触してるんですけれども、こういうファッションタトゥーみたいなのは「不可」の想定に入ってるのか否か。キャリーケースゴロゴロでホテルを出て、開店直後の渋谷駅スタバで朝食代わりのカフェラテを飲みながら読書、同じく開店直後の渋谷駅近くの理容室で洗髪・整髪。服装は礼服に革靴。
 鞄の中の本(常に2~3冊ほど入れています)が切れそうだったので、駅接続の書店(Book1st.でしたっけ?)に入って物色。そうしたら、早いものでクリスマスセールが始まっており子ども向けの絵本が面陳列されてる、中に披露宴のプレゼントにぴったり佐野洋子100万回生きたねこ』があったので購入してプレゼント包装。メッセージカードには本日臨席できない56回生高3A組正担任の名前を忍ばせた言葉を(常套句を書いたらそうなっただけですけど)。

 キャリーケースゴロゴロで訪れた先は、この駅で降りたことは過去にあったかなかったかの恵比寿。本日56回生Mくんの結婚披露宴は、恵比寿のウェスティンホテル東京という場所で行われるそうでして。事前情報によれば1泊6万からの超高級ホテル。自分自身の用事で泊まることは今生でも来生でもないでしょうから経験と思って泊まってやる(っつっても、自分のお金ではなくてMくんのお計らいでタダで泊めていただけるという手はず)。
 ウェスティンホテル。中に入った瞬間にBaroque Hoedownが聞こえて来そうな隙のない西洋メルヒェンな非日常感、ロビー中央の巨大クリスマスツリーにきゃっきゃきゃっきゃとはしゃぐめかし込んだお子たち、どこに売ってるんだそんなドレスを着込んだまるでハネムーンの老夫婦がラウンジでワインを傾けるその横に傅く黒服の恭しさ、眩暈のしそうな白日夢、アトラクション感がハンパねぇ。酒と雰囲気だけには飲まれるな、の俺ルールを守れる自信がないぞこりゃ。
 部屋に入ったら、トイレの便座は自動で上がるし、バスルームとシャワールームが別だし(それぞれの部屋にアメニティがあるし)、サービスドリンクがエスプレッソマシーンだし、ウェルカムミネラルウォーターが部屋の入り口テレビの横ベッドサイドと犬のマーキングかっつーくらいたくさん置いてるし、私の家の総「足の踏み場」面積より広そうなベッドが2つ並んでるし、っていうかホテル一部屋が私のK市の家の総床面積より広いし。成る程自分ちの一月の家賃よりも1泊の値段が高いホテルに泊まろうと思ったらこういう部屋があてがわれるようになってんのね上流階級では、と。前日泊のカプセルホテルなら一ヶ月近く連泊できます。
 「逆に居心地が悪い」とかいうひねた感想も許さないこのサービスっぷりよ。インスタントとは思えないエスプレッソを飲みながら、ちょっとした小講義室の黒板くらいありそうな大きさのテレビを10分ほど観る(映ってる番組は特別な物じゃないのね。片岡ラブリンが「メレンゲ」に出てました)。ベッドで跳ねてみたり、ソファに横になって「これがベッドでいいじゃん」とか独りごちたりと、一通り礼儀みたいなことを済ませた後で、ホテルがその一角を占める恵比寿ガーデンプレイスを散策。っつっても三越の中で礼服に合うベルトを購入しただけですけど。別に見て面白いものがあるわけではありません。

 披露宴会場のある地下フロアに降り、こないだ屈辱のAKB振り付けを一緒に録画したTくんとKくんと合流してお話。ついに56回生から結婚する人が出ましたね~、いやいや実は先にあの人が~、あでもあれを結婚とカウントするのか否か~、とか穏当なんだか不穏なんだか分かんない話をしている内に、学年主任先生やその他56回生の方々も。昨日の飲み会に来てた披露宴参加者の中には、流れで徹マンをやってしまった人達がいるそうで、徹夜明けで披露宴なんて若さだねぇ、と感心する。

 その披露宴。乾杯の挨拶を直前になって頼まれたという主任先生、高校時代の彼女暴露のアイディアを「もうちょっと穏当なものに~」と私から進言した昨日の夜の会話、覚えてお出ででしょうか……とやや心配なれどそこはお見事、軽く新郎Mくんをイジりながら穏やかな乾杯挨拶を。と、大役を終えられた主任先生がテーブルに戻って来られたのを待ち構え、開口一番こういう時には相手の目を見てニッコリと、「主任先生、チキンでしたね!」
 「池ノ都先生が軽いやつにしろって言ったんやろうもん!」と叱られながら、あ~今日はこのネタ(56回生限定ですけど)が言えただけで東京くんだりまで来た甲斐がありましたMくんのF高履歴にも援護射撃できたんじゃないでしょうかと最満足のヱビスビールをグビグビ。色々な方々の挨拶を聞いたり聞き流したりしながら、絶品料理(一つ一つの皿に付けられた名前がギリギリ単文かどうか、って感じ)を味わう。

 さて、F校生関係者なら全ての人間が「極めて穏当」の評価を下す先の主任先生挨拶、これが実は客観的には(省庁キャリア同士の結婚披露宴の招待客の世界における主観的には)「かなりはっちゃけた」ものだったようで……それでエンタメ魂に火が付いたテーブルが一つ、大阪はあいりん地区(Kくん就職一年目の研修先)から招かれたえら~い人達の、関西人笑いとインパクトで負けてなるものか根性が火を噴きまして。詳しい中身は秘密ですけれども、まぁ濃~い映像にお話に「これ、ほんまに結婚披露宴?」っていう祝賀メッセージが場内に響き渡りましたとさ。関西人に「さっきの挨拶の主任先生に負ける訳にはいかず」と明言させた主任先生のインパクトとテクは流石だと思います。感動。
 ケーキ入刀からファーストバイト、化粧直しではこれは狡いよ職場制服姿の披露にと、イケメン新郎はず~っと幸せそうでした。私も嬉しい。教え子の披露宴って、こういう風な感情になるんだなぁ、と。

 会場を出てそのままエレベーターを上がると自分の部屋ってのが嬉しい。二次会は失礼して、電話でF校の保護者某氏とお話(面談?)。一時間ほどお話した後、二次会が終わるのに間に合いそうなのでホテルからタクシーを飛ばして渋谷の会場へ。途中参加でよく訳が分からないまま、ず~っとビールをぐいぐい呷ってました。ざっくばらんな立食形式で人口密度も立錐のって感じだったので、新郎とは一回目が合ったか合わなかったか。主にず~っと56回生の人達と喋ってました(そこでも、初対面の人が披露宴での主任先生の乾杯挨拶の勢いと面白さに驚いたという話をなさっていました)。
 二次会幹事で、最後に流れる「恋するフォーチュンクッキー」画像を編集なさったS氏と初対面のご挨拶。「編集した画像を、先生にもお送りし/」と言いかけたのにニッコリ微笑んで「私に送らないことを私への謝意だと思って下されば」と返す。少なくとも自分では見たくないけど、大河の一滴で振り付けをするのは結構面白かったです。

 三次会からはF校組だけで私的宴会。徹マン明けがたたって流石に一人か二人かは脱落したものの、十人超のメンバーが集まって、高校時代のあんなことこんなことを和やかにお話。場所はTQC時代に使いまくった天狗レンガビル店……じゃ今はないのか「テング酒場」にて。
 〆でラーメン食べるところなんて福岡人ですよねぇ。ウェスティンホテル招待宿泊組でタクシーを使ってホテルへ。健康睡眠。