あんだけだすのに どんだけきついかわかるっしょ

 旅行鞄を持って、5時に学校入り。7時まで2時間かけて、61回生浪人生の添削(今朝は東大の現代文・漢文)を終わらせる。これで現在届いている全ての添削が終了、研修引率に持ち込まないで済みました。高2の生徒は7時半頃から徐々に学校に集まり始め(旅行の集合は、学校もしくは福岡空港です)。9時10分学校集合(高速バスに乗り込む)に遅れる生徒もおらず(ウチのクラスのが一人50秒程度遅れたけれども無問題)、高速バスは予定よりも遙かにスムーズに福岡空港へ到着し、生徒教員全員、かなり余裕をもって集合です。
 でもって、なんかウチのクラスのスキー旅行委員、旅行中のメニューを決める権限を持つという(だけではないみたいなんですけど、他は詮索しないでおこう)理由で立候補したようなのばっかりなのに、異様にキビキビ働いて、集合整列とかいう作業を最も不得手とするお坊ちゃま集団を「並ばせました! 全員揃ってます! 弁当配布完了しました!」ってえらいこと有能。担任不要論

 飛行機、怖かった。

 僅か2時間のフライトで福岡から北海道は新千歳空港、バスはマウントレースイへ向かう。12月の旅行で覚えました、「けぬぶちがわ」があればそこは北海道、だったのですがおかしいないつまで経っても川が見えない。添乗員氏に尋ねると高速を使うか否かで川を渡る渡らないが変わるということで。あら残念、お気に入りだったのに「けぬぶち川」。

 ホテル直通のバス車内は、最前列添乗員・校長・カメラマン、そして担任(国語)と副担任(世界史)。昨今の高校生はスマートフォンをず~っといじくって全員起きてるけど話し声一切なし……とかになるのかと想像してたら、流石文系(←関係あるのかどうか知りませんけど)喋り倒す喋り倒す。先ずはどっから持って来たのか下ネタなぞなぞ大会。「普段は細くて小さいのですが、肝心なときは大きくなり、人によっては黒光りします。コトが済んだらティッシュで拭きますが、自分でするより、きれいな女性にしてもらうと気持ちよくなります。手入れが悪いとカスがたまって女性に嫌われるのが玉にきず。呼び方は三文字なら『○ンコ』、四文字なら『○ン○ン』です。これなーんだ」→「ハンコ、インカン」とかね、面白くないとは言わない、巧くないとも言わない、でもね、校長先生なの。校長先生が乗っていらっしゃるのこのバスにはっ! と担任気が気じゃない。

 時遡って昨年末、研修の栞作成の体育先生と話してたとき、「池ノ都先生、A組だけクラス人数が少ない関係で、校長先生とか添乗員とかカメラマンさんとか、みんな先生の組のバスに入ってもらうことになるけど、大丈夫?」「ん~と、席が余ってるんでしょ? ぜ~んぜん問題ないっすよ」と、あのとき何一つ考えることなく「ぜ~んぜん問題ない」とか答えた自分を今からでもバールのようなもので殴打したい。

 「最初は丸くて小さいのに、丁寧に濡らし、愛情を持っていじっているとだんだん大きくなる。『ク』で始まり『ス』で終わるものってなーんだ」→「クロッカス」っていうのは無性に面白かった。何だよクロッカスって懐かしいな。でもね、面白いんだけどね、校長先生なの、校長先生が乗っていらっしゃるのこのバスにはっ! と場面は再びバスの中。高2文化祭直前の「AVバスケット」を彷彿とさせるエロ乗りでついには「「「「しゅっしゅっしゅしゅしゅ!」」」」 「白い液体!」とか言い始めたのにはネタ元が古過ぎるとか最初のしゅっしゅっしゅしゅしゅのかけ声すらエロに使える発想が凄いとかもうどんな声がけをしたらいいのか分からんまま笑うしかなくなる(添乗員さん、顔を覆って笑いを隠してるし)。でもって私、仕舞いにゃ調子にのって「おいおい添乗員さんよ、このバスにはマイクがついてるんだろ~? 出せっつってんだよ~」とかぬかし始めたこいつら44人を麻酔銃で眠らせればいいのか、それとも後ろから校長先生の耳を塞げばいいのか、教えてミスターサンデル
 ホテル案内の看板が見えるほどに近づいてきた頃にはちょっと喋り疲れてテンションが落ち、「満員電車/」「コンドル!」とか「ドアの後ろ/」「とかげ!」とか小学生かっつーようななぞなぞが始まってて、それに異様に強い生徒が一人いたのが印象に残り。隣を見ればA組の真面目&知性担当の副担世界史先生、クラスでいちばん世界史が(も?)できる生徒と世界史用語しりとりをおやりになってて。「ラ」が出るたびに「ラーム・モーハン・ローイ」を激押ししてたら副担先生に「落ち着けしつこい」とたしなめられました。同じ年なんですけど。

 さて、ホテルに着いた時にはもう既に精神的に色々持ってかれてたんですけど、そんなことをおくびにも出さずお仕事お仕事。荷ほどきの間もなく(というか各班の部屋にすら入らず)生徒全員を「スキーウェアに着替えろー」「ホールに移動しろ-」「開校式始めー」「スキー更衣室へ行けー」「シューズ手袋ゴーグル靴など着用しろー」「スキーレベル班別にコーチ(スキー場が手配)の先生の元へ行けー」「先生の指示に従えー」と、怒濤の流れ作業でインストラクターの先生にお預け(スキー教室は、事前調査したスキーの習熟度に応じた班分けを行い、班ごとに先生がつくという形)。
 時刻はまだK市なら7時間目が終わったあたりですがここは北海道、既に世界は暗い。高2スキー研修、最初のスキー教室はナイトスキーからです。こないだの12月旅行もそうだったけど、いきなりのスキーが暗い中って、結構怖いよ。

 19時にスキー教室は終了、着替えて部屋に荷物を置いたら、食堂に移動して食事。旅行委員の指示で200人が「いただきます!」なんて経験はなかなかないからこれだけで生徒は楽しい。仲良しグループで喋りながら食事、なんてのは寮生はともかく通学生にはワクワクする体験でしょうね。というか、高2の食欲すげぇな。教員テーブルはその分量の多さに殆どの人間がギブ出してましたが、生徒は結構食ってる(20年前の生徒、要するに私たちが高校生だった頃から比べると生徒の食事量は格段に減ってますが、やっぱり旺盛は旺盛)。あらゆる料理に「これは寮では出ないレベル!(とても美味しい)」「これは寮で出るレベル!(そこそこ)」の評価を下す無邪気な上から目線も高校生が興奮してる、って感じですね。テーブルごとに残飯をまとめて食器を重ねて、なんてのもちゃんとやってるんです(家では絶対にやらない子でも、大勢の目もあるし今日だけの遊び感覚だし、って状態ならちゃんとやります)。
 懸案の入浴、男女風呂貸し切り、石壁を挟んで向かい合う露天風呂2つに男グループ2つを入れたら何が起きるか……「せんせ~、雪合戦したよ!」「想定内です」「超燃えたわ~」って、やっぱり12月下見の想像通り。男どもが全員入浴を終え出て行き、更衣室の忘れ物を旅行委員が点検。中に、委員生徒が割れた洗面器を持ってくる。「雪合戦の時に」「皆まで言うな」 誰がやったかなんてのは分からない、と思うでしょ? でも、かなりテンションマックス状態の誰か彼かに聞けば(チクリとかいうつもりもなく)ポロっと出てくるもんなのです。「雪合戦、相当激しくやったやろ~?」「え~、う~、まぁ。メッチャ寒かった!」「よくあんな滑るところでそんなに暴れられるよね~。哀れ洗面器も被害者に……」「あ~、あれ、××くん!」 ××くん、体育先生からちょこっと怒られてました(「ちょこっと」で終わったのは、初日に落ち込ませても仕方ない的な配慮かな、多分)。別に当人を叱るのが目的ではないんですよ、ホテルの方に先に謝罪申し上げて、指導を致しましたとご報告しないとお世話になっている側としての義理が立たないでしょ、という話です。

 班長会議(学校っぽい響きの言葉ですね)、生徒自由時間を経て、23時消灯。でもって、これに関して必ず複数名の生徒から聞かれるのが「先生たちは、夜に飲み会をすると~?」ってやつ。あのね、そんなに分かりやすく探りを入れられてもだね。返事は一つ、「見回りは、します」
 生徒就寝後の見回り、の後で校長・教員・添乗員全員が一室に集まって、栞とにらめっこしながら明日の各人の仕事の確認。明日の朝も早いよ、健康的に寝ましょ。嬉しいのは、教員にはなぜか一人一室があてがわれており、他人が居ないことを良いことに暖房を全オフして(K市自宅での生活と同じように)快適に眠ることができたこと。