何にも 思わず 涙も 流さず

 佐村河内氏のニュースは、新聞テレビからネットニュースまでほぼ全てをシャットダウンして事件の噂などが二年ほど前から聞こえにくくなってきた耳にも漏れ伝わってくる。早速、「佐村河内 因幡晃」「佐村河内 長谷川きよし」でググってみたら、やっぱり同じことを考えている人は世に多い様子。似て蝶
 でもって、ゴーストライターと言えばやっぱり、ということで「佐村河内 松本伊代」でググってみたらこっちもやっぱり同じことを考えている人は世に多……くはないけどいなくもない、って様子。

 ゴーストライターと言えば。森銑三師は、西鶴名義の作品は『好色一代男』のみが実作で他は全て監修しただけ、という説を唱えました。今年のF高入試は井原西鶴西鶴諸国話』と出典明記ですが、あれは嘘問なのでしょうか?

 F校入試休み・模試ラッシュからのスキー旅行と連休とで、随分授業の間が開いてしまいたが、今日から本格的に授業再開、鴎外「舞姫」をガッツリ7回かけてやります。っつっても、「舞姫」の知名度など現在の高校生にとって高かろうはずもなく。いやいや必須の教養でしょ、とかツッコまれる向きがおありやも知れませんが、んなこたぁない。実際に、1月の授業で。
 教員「いや~、2月から『舞姫』だけどさ、文語文とか、もう付いてくのが大変だよ?」
 生徒「? 何それ? ……あぁ、大河の?」
 教員「 それは篤姫やがな!」
 っていう返し、もちょっと素早く返せたら良かったんですけど、流石に1秒くらい考えちゃいましたもんね。

 文学作品が普遍的で、生徒の知的好奇心が高い学校だから生徒は例外なく物語にのめり込むのです……みたいな理想的ことが言えりゃいいんですけど、そんな展開なぞ望むべくもなく。進学校を勝手に知的なエルドラド扱いにしては(敬してるふりだけして遠ざけては)いけない。すらっすら読める子もいる、漫画と対照しながら一生懸命読んでるうちに物語に入っていく子もいる、点数のために四苦八苦しつつ全然面白く無いと思ってる子もいる、「石炭をば早や積み果てつ」の「をば」でもう駄目~ってなっちゃう子もいる、っていうてんでバラバラ状態。それら全員を掬って中身に引き込む楽しい授業……なんてのが教員演戯力ゼロの(就職11年目とはとても思えない)ど素人教員に出来るはずもなく。漫画に出てくるお爺ちゃん古文先生の授業みたく、味も素っ気もない解説を淡…淡…と続けるのみなのです。
 一学年上の(現高3の)現代文担当の先生は、舞台人でいらっしゃるから「『舞姫』の授業、結構生徒が乗ってきて面白かった~」って仰ってまして、そういう演戯力(by福田恆存)っていうのはもうどうしようもない能力差ですからね、これは諦めるしかないよねごめ~んね、と担当生徒には。