お前を はなさない しなせない

 5時入りの職員室で昨日の特講の添削、授業は文系標準コースの漢文。
 文系標準コースの漢文も、現代文同様に複数教材から解答する問題を選ぶ形。用意する教材は2種類。一橋大学京都大学の生徒に向けては近代文語文、それ以外の大学の生徒に向けては漢文の過去問を準備するという形。一橋大学は近代文語文を解く必要あり、京都大学の文系は昨年度久しぶりに近代文語文(を含む渡辺京二の文章)が出題されたので一応やっておくか、と。普通は一橋大学の第二問を使うのですが、今日は京都大学正宗白鳥を出題してみました。悪書規制なんて言ってる人はこの文章を読んで反省して下さい。
 授業後は採点添削をガシガシ。

 さて、放課後のSHRに向かおうと職員室(高3教室と同じ3階)を出たところ、突然火災報知器が鳴りだし「火事です」の機械音放送が反復される。事務員が急いで火元チェックをする間、「非常ベル無信頼の法則」で皆が放送をガン無視してる中、中高全6学年25クラスの中で我ら高3A組だけが生徒Aの「避難するぞ!」の先導で、本当に出席番号順に2列縦隊になって避難を始めた! 完全にノリで動いている嬉々とした表情は担任では止められない! 高3他クラスはSHR続行、他学年生徒は廊下で騒然。
 マジかよ、と生徒を追いかけたら、校舎外に出た我ら高3A組有志、中学棟の廊下で右往左往してる中学生たちに向かい「お前ら早く降りてこい!」「焼け死ぬぞ!」と煽って煽って……煽られた中学生たちが本当にぞろぞろ避難を始めて私顔面蒼白。結局、中学担任団の先生も先導する必要有りとお感じになったのか、中学避難開始。
 もう笑うしかないな、と避難場所に指定されている第1グラウンドに出たら高3Aの42人が所定の場所に整然と並んでおり、そこへ中学600人が続々やって来る。
 私「高校生お前らだけやろが!」
 A「阿呆か何の為のこれまでの避難訓練や!」
 B「こういう時の為にこれまで6回も訓練をやっとるんやろが!」
 C「燃えたことある学校やぞ!」

 結局報知器は誤報と発覚し、教室に戻ってきた生徒、口々に文句を垂れる。
 B「誤作動とかざけんな!」
 D「僕たちの方が正しい行動を取ってるんですよね?」
 で、ざわめきの中でEがどさくさに紛れて「一回死ねーっ!」と叫んでクラス中爆笑。以前(6月10日の日記参照)、私が板書で「その意味で一回死ね」と書いたEの反撃に私も腹のよじれが止まらないままSHRを終わらせる。
 何というか、ノリ系(ひゃっほう逃げようぜ!)のA・B・C・Eみたいな人たちと、Dのようなマジメキャラ(訓練を再現するのが正しいんですよね?)の奇蹟のマリアージュ。ある種、42人全員がきちんと動いたのは凄いのかも。普段の訓練の100倍「おはしも」でしたからね。うん、褒めよう。褒めていいよね? お願い、いいと言って。

 SHRの後で職員室に戻り、高2担任である同窓同僚先生と話す。
 私「うちのクラス、42人全員が本当にグラウンドに避難したんだけど」
 同「上(高2フロアである4階)から見てた。うちのクラスの生徒が『先生、あそこ本当に避難してます!』って言ったから、『ああ、どうせ高3Aだから』って答えといた。そしたら生徒、『ああ、な~んだ』って納得したよ?」

 再び高3A教室にて。
 私「……どうせ高3Aだから、だって」
 F「はぁ? ふざけんなやし」
 G「そういうやつらが焼け死ぬんよ現実には!」
 かもね。まぁ、きみらがお見事天晴れだったということで。