あの頃の僕らが 嘲笑って軽蔑した

 所々記憶違いがあるかも知れませんが。
 私がF高生だった時代(20年ちょっと前)には、高校寮の歓迎行事、というか「通過儀礼」として高1新入寮生(全員)が先輩寮生の前で出し物を披露するというイベントがありました。個人、または少人数のグループで色々な芸をする。場所は体育館、新入寮生はステージ上で種々の披露をし、ステージ下の先輩方は面白かったら喝采、面白くなかったらブーイングを浴びせます、っつーか生卵投げてきます。
 嫌で嫌で仕方ありませんでしたが、例えば下ネタ等の恥ずかしいのは嫌、かといってモノマネやら楽器やらの芸は持ち合わせていない、それでもブーイングや生卵は御免被る、という我が儘な(?)人間でしたので、仲良し3人を集めて策を練りました。私を含めて4人、自慢じゃないけれどもスクールカーストは下の方、今で言う「陰キャ」を煮詰めたチームです。話し合いで真っ先に一致した意見は「笑わせるのは無理、笑われよう」というものでした。「でもさ、何したら笑われると思う?」「馬鹿馬鹿しいこと?」「でも、それで滑ったら生卵だし」等々、悲しくも真面目な議論の焦点は要するに如何に巧みに上級生にマウントをとらせるかという一点、上手にスライディング出来たら勝ちだ、と。
 どうしたら確実に笑われるか、答えは単純です。「要は、僕らが苦しめば良いんでしょ? 痛い目見るってこと」
 用意したのは、剣道着と袴の上下、垂れ、竹刀。これを2セット。陰キャにも出来る宴会芸と言えば二人羽織ですが、これで剣道の試合をやろう、という計画です。二人が前後で密着して一つの道着・垂れを身に纏います。後ろの人間の頭は道着に覆われ、前は全く見えません。竹刀を持つのは後ろの人間で、声を発するのは前の人間です。「面」と言えば竹刀を縦に、「胴」と言えば竹刀を横に振るスイカ割り。勿論、スイカは前の人間。面と胴とはつけませんので、前の人間に見事竹刀がヒットしたら……
 「そら、笑われるよねぇ」と、赤くなった右腕をさすりながら、私。相手チームの後ろ側(私に竹刀を振るった人)は謝ってきましたが、約束は声を出す方も竹刀を振る方も全力でというものでしたので。相当ウケましたし、試合終了後(?)に舞台袖に私たちを引っ張って下さった司会の先輩(彼がレフリーストップをかけて下さいました)からは「良くやった!」と誉められました。前を担当したのは私を含む剣道部2人、お互いに間拍子を測りながら発声して、お互いがあんまり痛くならないように怪我しないように、お互いの竹刀がぶつからないように(竹刀が手から離れたらもたついて興ざめなので)等々、ぶっちゃけ大会試合より緊張しました。11年間剣道やりましたけど、そのスキルを最大限発揮した瞬間は間違いなくあの時の宴会芸でした。上手に「いじめさせたら」勝ち、中高6年間で幾つかの愚かな行為をした中の(話せるレベルの)一つです。
 まぁ、そのイベント、程なくして無くなりましたけどね。

 本日は授業3コマ(高1古文)、大雨警報が出るということで、生徒は半ドン後に即座に帰宅させました。これから36時間、K市の降水確率はずっと100%で、若しかしたら月曜日が休校になるかも知れないというレベルです。
 私も14時過ぎには自宅に戻り、入浴後に書斎で書き物(日記を数日分)。通常通りの日程でリハビリステーションへ出掛けてお出での母君は16時過ぎに戻られ、その後で入浴介助、夕食作成。

 夜は、野菜料理「B」で飲み会(降水確率100%ではありましたが、何故かK市では雨が降りませんでした)。女性率の高い宴会だったのですが(合コンではありません、念のため)、ドラマやジャニーズやの「沼にハマったあるある」話が大盛り上がりでした。沼の人って、話す時の表情が恍惚としてるから、聞いているこっちが幸せになって来るんですよねぇ。
 二次会の店を押さえるまでやって、私以外の全参加者がそちらへ流れていくのをお見送りした後で帰宅(合コンで独りハブられた訳ではありません、念のため)。