煌めく綺羅星 ユーモラスな日進 ヒップにいこう月歩

 ゆっくり起床、ホテル大浴場で入浴、朝はカフェで少しだけ読書。
 電車で神田駅に移動し、昼食は薬膳カレーの「時計じかけのスパイス」(TwitterのTLで流れてきました)。定番のスープカレーは、大皿の直径にライスが並びその上に種々の具材が直列、ライスの左右シャバシャバの薬膳カレーが2種類、という構成。ライスを食べている内に、堤防が決壊して2種類のカレーが混ざっていきます。「和牛しまちょう赤海老ホタテカレー」「渡り蟹アサリカレー」で1900円、ライスは100円増しの「渡り蟹スパイス炊き込みご飯」、パクチーは無し。ルーと言うよりライスと言うより具材と言うより、ひたすらスパイスを食べて(飲んで?)いる感覚。知ってる「カレー」とは全然違いましたが経験(勉強)として。

 山手線で東京駅へ。「東京ステーションギャラリー」の特別展『甲斐荘楠音の全貌』。
 画家(岩井志麻子ぼっけえ、きょうてえ』表紙が有名)としての活動のみならず、時代考証家(未クレジットのものも含め、携わった映画作品の全データあり)、衣装デザイナー(アカデミーノミネート作品『雨月物語』を含む衣装実物あり)としての活動も網羅して、甲斐荘の多面性にスポットを充てる試み。また、スクラップブックや女形に扮した(歌舞伎の女形への衝撃が美意識の源泉にある甲斐荘は、実際に舞台に上がることもあったそうです)写真など、資料を駆使して彼の人物像に迫っています。結果判るのは、甲斐荘による美醜混在の女性画の多くに、彼自身の姿が融け込まされているということ。因みに、展覧会冒頭解説の中にはっきり「セクシャルマイノリティ」と書いてあったのにはちょっと驚きました。
 美術館出口には、辰野金吾が嘗て東京駅の天井に隠していた十二支(8匹)のレプリカが展示されています。東京駅では見つからなかった残り4匹は、昨年8月に訪れた武雄温泉で既に見ています。

 東京駅から根津駅へ移動したら、地下鉄地上出口で足止め。さっきまでの晴天はどこへ行ったというゲリラ雷雨です。天気予報は全く見ていませんでしたが、ここまでの急変は予報がそう告げていても俄かには信じられなかったかも。同じように足止めの周囲の人々が雷の一撃(近い!)毎にビクッ、とする。空に走る稲妻をあんなにたくさん視認したのは生まれて初めてのことでした。
 計画は全部中止だ、楽しみはみんな忘れろ、みたいになるのはヤダなぁと思ったら、ゲリラは本当にゲリラだったようで20分程で雨・雷ともにトーンダウン。出口そばのセブンイレブンで購入した傘をさして、徒歩10分弱で次の目的地へ到着です。

 「弥生美術館」の特別展『いとしのレトロ玩具』。
 3階立てビルの1・2階を展示室にして、大正から令和に至る日本の玩具史通覧。大づかみに見えてくるのは、玩具の世界から生み出された現在の日本の「Kawaii」は、所謂「雑種文化」の最たるものだということでした。
 「レジスター」は実際に使ってました(カーボン紙に字を打ち出しまくってました)し、「湯あがりマイムーニーちゃん」は買ってこそないですがCMはよく記憶しています。そう言えば、私、小学生の頃は(エポック社のせいで)「エポックメイキング」の意味を「玩具づくり」だと勘違いしていました。昭和の「クッキングトイ」を懐かしんだり、「おかしやさん」シリーズの小物「ホホロン」「ファント」のネーミングにクスリとしたり、平成のミニチュア技術に驚かされたり。
 3階では、美術館ゆかりの画家・高畠華宵の常設展示も。レトロ玩具との落差が大きいですが、高畠の描く少年少女の隠微も子ども向けと言えば子ども向け。「男女七歳にして席を同じゅうせず」という時代の学校文化が醸成した百合薔薇の香りが漂っていました。
 隣接の「竹久夢二美術館」への渡り廊下に、水森亜土ちゃんのスプレーアート(写真NG)が飾られていたのは嬉しい出会い。その「竹久夢二美術館」では、竹久が描いた震災画の特集(写真NG)があるなど、弥生エリアにて目まぐるしい美術体験。子どもの「自警隊ごっこ」という絵は、集団内の最も弱い子どもが「日本人に見えない」と因縁をつけられて皆に槍で突かれるという残酷、100年後の日本にもこの精神年齢の人間はウヨウヨ居るなぁ、と思いながら。

 「国立西洋美術館」の常設展、及び特別展『スペインのイメージ 版画を通じて写し伝わるすがた』。
 『弥生美術館』の道向かいにある弥生門から東大構内に入ってぶらついていたら、66回生Oくんと出会い30分ほどお話を(オッサンの頭の中では本当に時空が歪んでいるので、Oくんが美学専攻と訊いた瞬間思わず「佐々木健一ってまだ居るの?」とかいうアホなことをほざいてしまいました)。話しながら散歩していると構内に上野行きのバス停があったので、そこでお別れして「国立西洋美術館」に向かうことに。何となく、久しぶりに常設展(松方コレクション)を見たくなったのです。
 ルノワールゴッホ・モネ・ルオーが写真に撮れる常設展。
 特別展の方にはそんなに惹かれなかったのですが、折角なのでサクッと。嘗て西洋諸国からアフリカとすら同一(蔑)視されていたスペインが、オリエンタリズム溢れる魅惑の地となってから200年間の受容史を、版画作品の流通という観点から外観。ドン・キホーテ、ロマ、フラメンコ、闘牛、パブロ・ピカソ……期待値が低かったので出る時の満足度はなかなか。
 しかし、夕方前に大学構内を無目的に歩いてたら美術館行きのバスに乗れて、本日3館目の美術館で常設展の序でに特別展も……ってどんだけ贅沢な環境なんだよ、という話です。福岡良いとこ、ですがこの一点ではどうやっても東京に勝てません。

 ホテルに戻って入浴、出発。美術館3館というのはなかなかのボリュームで、出発時にはすっかり暗くなっていましたが、仕事上がりの社会人との待ち合わせは20時とかいう遅い時間になってしまうものなのです。
 新橋「ハヌリ」に、63回生我らA組のEくん・Mくん、そして特別ゲストは理系TOくん。焼肉・チヂミ・チゲと韓国料理を一通り味わいながら、彼らの近況(仕事の話、他の63回生の話)を伺う。2軒目はTOくんが知っている日本酒のお店で、そこからは別の飲み会上がりの大学文転TNくん(もうすぐ弁護士)も合流。その場で、理系Hくん(高1Cで私が担任でした)が今度結婚することになり、Mくん・TNくんが来週一緒にお祝いの飲み会を開くというのを聞きました。それなら贈り物を託けましょう、と言うことで後日Mくん家にHくんへのお祝い品をお届けするというお約束。
 704蔵目・長野「澤の花」(超辛口純米吟醸)。

 健康的に就寝……のベッドで、今回の上京4泊で会う(会った)卒業生のことを考える。卒業生の何をと言えば、彼らの就職先。「財務省」「経済産業省」「警察庁」「リクルート」「住友商事」「NEC」「BNP PARIBAS」「Bay Current」、そして唯一の学生が「東京大学理科三類」。どんな高校やの、という話ですよ。