茶会へようこそ

 大学(駒場1・2年)時代に住んだ福岡県人寮「英彦寮」は横浜市青葉区荏田西)にありましたが、私は横浜を観光した体験を一度も持っていません。今朝は、早朝の電車で横浜乗り換え、10時前に石川町駅で降りてみました。
 10時の中華街はまだ殆どの店が閉まっており、しかも雨模様の平日でしたが、多くの観光客(外国人>日本人)でにぎわっています。私は通りの雰囲気だけを味わった後で伊勢佐木町方面へ。喫茶店でホットコーヒーを1杯。その後、昼食は中華そば「時雨 本店」で絶品の一杯を。中華蕎麦大盛。鶏の出汁に醤油ダレの澄んだスープ、細麺、分厚いチャーシュー、どれも最高でした(10分前に到着したら3人目の客で、オープン直後に満席になりました。そりゃそうだ、と思います)。

 雨が本格的になって来たので、今日は靴の中がびちょびちょになるのを覚悟して歩き回ることに。具体的には、「港の見える丘公園」を起点に山手を散策するという計画。一番の目的地は公園のどん詰まりにある「神奈川近代文学館」で、企画展『帰って来た橋本治展』を観ることです。公園内は閑散、海の見える展望台には、7~8人の先客が居ましたが、雨で煙って見晴らしはよくありません。

 橋本治は、入試問題に出せる自著は『浮上せよと活字は言う』(1994)だけと言いました(実際に京大が出題しました)が、私は『負けない力』(2015)で「謙遜」を論じた箇所を高3の構内模試(文系現代文)にしました。点差がついたので結果としては良問だったということになりましたが、それよりも橋本治ファンと思われるベテラン英語先生に「よくぞこの人を問題に」と言われたのが嬉しかったです。橋本治を読む読者はかなり注意(用心)深くなる必要があります、なまじの高3では文体の罠にかかることは必至。
 さて、『帰って来た橋本治展』、素晴らしかったです。小説家・研究家・評論家・批評家・イラストレーター・ニット作家……と多彩(才)に果てのない橋本氏の活動を、時系列順・ジャンル別という2つのバランスを巧くとりつつ丁寧に分類整理。私は橋本氏の原稿用紙肉筆が(嘗て、季刊雑誌『銀花』の連載「"手"をめぐる四百字」で初めて見て以来)好きなのですが、それがこれでもかというくらい見られた(読めた)のが何より嬉しく。原稿用紙の自体ではなく、私的な友人への手紙の筆跡(これがまた全然違う……サブカル文字?)も興味深かったです。

 外国人墓地、山手外国人邸宅・庭園、北原泰久氏もお出でだった『ブリキのおもちゃ博物館』、等々を巡りながら、歩きに歩いて石川町駅に戻ったのは、16時前でしたので、石川町エリアには6時間弱の滞在だったということになります。移動は全て徒歩でしたので、3時間くらいは歩いていたのではないでしょうか。坂道だらけの散策、疲れたというより、靴下までぐちょぐちょでちょっと気持ち悪いという方が強いかな。
 池袋に戻ってホテル、入浴。ドライヤーを使って靴を乾かしました。

 本日のメインイベント、松濤の日本酒バー「燗缶」訪問。神泉・松濤エリアが日本酒好きの聖地だというのはうっすら聞いたことがありましたが、私は「ぽつらぽつら」「うつらうつら」しか訪問したことがありません。そこで、61回生Hくん(日本酒好き)と中島みゆきのライブを語り合うというテーマでさし飲みをするにあたり、このエリアの店を色々と検索したところ、良さげな店が色々とヒットした中、唯一店名が読めなかった(のが国語教師として大変口惜しかった)「燗缶」に狙いを定め、システムも価格帯もよく分からないまま(店名以外の情報を敢えてスルーした状態で)電話予約をしました。予約電話の対応の印象で、良店なのは間違いないと確信しての訪問。
 しかし、「燗缶」で「らんぷ」って、そりゃ読めません。

 少量多種のコース料理・日本酒ペアリング、は全てお店にお任せのシステム、どのお皿も佳品。一通りで2時間半、最終的な会計は(1人当たり、コース料理・ビール1杯・日本酒4合で)各々12000円弱でした。
 自家製のさつま揚げ、季節のお浸し、小さな海鮮丼、刺盛り、蛍烏賊卵とじ、酒肴3種、焼き魚、肉団子、ミニカレー、にゅうめん。さつま揚げ(鹿児島)だったりミニカレー(佐賀?)だったり、酒肴3種に能古島のピーナッツもやし(福岡)が入ってたり、九州づいてるなぁ、と思ったら、やり手オーラがビンビンのオーナーさん(後で検索をしたら、渋谷エリアではとても有名な居酒屋の創立から10年を支えられた後で独立なさったのだとか)が鹿児島のご出身ということで。
 そのオーナーさんと、美味しいお料理有難うの料理人さんのお2人で11人(カウンター7席、4人掛けテーブル)の客を捌く……その料理人さんの方が偶然にも私と同じK氏出身だったことを、果たして喜んでいいのかどうか。カウンター右左のお客さんがニューヨークのあの店がどうだこうだ等オーナーさんとスケールのデカい話を交わす隣りで、我々2人だけは料理人さんと「K氏の酒屋なら古賀美かIZUMIYAですよね」とか「お客さんは国分なんですか僕は高良内だからお隣じゃないすか」とか「八女のあそこの居酒屋の店主はマブなんでこの名刺を持って行って下さい」とかやってるわけですから。旅行気分はゼロでしたけど、居心地は無茶苦茶良かったです。
 因みに、日本酒は「飛鳥井」「綿屋」「七本槍」「龍睡」「竹雀」「悦 凱陣」「三光」「長珍」の8種。流石に未踏破はありませんでした(アベンジャーズか、っていう揃いですからねぇ)。「三光」(←去年の岡山旅行で飲みました)を取り出されたオーナーさんに「岡山ですよね」と何気なく言ったらとても驚かれて、帰り際に「お客さんみたいな人、初めてです」というリップサービスを頂きました。「もりき」マスターの調教で、酒の名前は都道府県とセットで覚えるようになってますんで。

 さて、中島さんの「歌会vol.1」については歴の浅いファンを殺しにかかってるディープなものだったということで二人の見解は一致したのですが、ライブの感想を喋ってたら、そりゃ「縛り」に行きたくなるわけでして。何せHくんはF高合唱部の創立メンバーでカラオケも大好きという方、食事と酒とには正直もう満足しきっていたので、じゃあ中島みゆきオンリーのタイマンはどうよ、と。曲目、以下。
 H①南三条(1991年)
 私①あたいの夏休み(1986年)
 H②銀の龍の背に乗って(2003年)
 私②店の名はライフ(1977年)
 H③愛だけを残せ(2009年)
 私③羊の言葉(1999年)
 H④パラダイス・カフェ(1996年)
 私④蒼い時代(1996年)
 H⑤化粧(1978年)
 私⑤流星(1994年)
 H⑥Why & No(2015年)
 私⑥オリエンタル・ヴォイス(2012年)
 H⑦心音(2023年)
 私⑦命のリレー(2005年)
 Hくんは音域無視して歌いたい歌を入れ、私は自分の声で歌える曲に絞った格好。ファン歴の長さと曲を知ってる深さについては流石に私の方が上なので(Hくんがおぎゃあと言ってた時には既にファンだったので)、私の方が若干マニアックな選曲になりますかね。オツカル様とのカラオケでは絶対に出来ない(ベクトル真逆の)90分、楽しかった~。

 今日も明日も仕事です(ど平日ですから)、というHくんですので3次会は見送り。ホテル帰還、健康睡眠。