言葉なんて迫力がない

 書かずもがなを書くのがこの日記ですので、書きますけれども。文化祭(男く祭)拾遺3題。

 その①(5月27日、文化祭前日)
 早朝、とあるバザーの責任者が職員室にやってくる。曰く、「看板に落書きをされました」
 店名やメニューを書き店前に置く看板(90×180のベニヤ板)に(恐らく26日の夕方に)落書きをされたのを、今朝店員が発見して激怒。黒地に店名のみのシンプルな看板の上に、見事なアヘ顔の萌え絵が描かれている。成る程。責任者に尋ねて曰く「犯人に心当たりは?」 責任者答えて曰く「何となく心当たりはありますが証拠はないので言えません」 お見事。
 学年主任に話したら生徒指導部長にもお見せすることになり、これは早い内に解決しなければ面倒臭いことになりそう。指導部長にお見せした以上、学校を挙げて解決しなければならないからです。どうせ犯人は高2(学年内のいざこざだか悪戯だか)、さっさと(具体的に言えば、今日の職員朝礼8時30分までに)犯人を見つけなかったら、職員朝礼で高1~高3各担任に周知して、各ホームルームで情報提供を求めないといけなくなるかも知れません。学園祭前日(備品移動当日)に、明日へ向けて必死で準備をしてきた高3の先輩に、こんな下らない案件で水をさすような真似をしては申し訳が立たないのは自明ですね。
 というわけで、被害者の為もあるけれども、主に高3に迷惑をかけない為に調査開始。何のことはない、生徒間にはそういう情報はうす~くひろ~く出回ってるわけですから、その辺の人に聞けばいいわけです。普段ならタレコミ(チクリ)待ちなんてしちゃいけないんだけれども、今日はリミットが20分しかないので背に腹。「学園祭当日に高3に迷惑をかけないために」と言われてまだ隠すならそれはF高生のクズ(←下品な言葉ですが)です。目撃者も、そして犯人も、最初は証言や自白を嫌がったけれども、上記説得で瞬殺ゲロッパ
 というわけで、大したことない事件はあっさりと解決(犯人がどう怒られたかは主任任せなので私は感知していません)。後は看板ですが、ここだけは天の配剤に感謝、被害者バザーの店員に、美術の才があり働くことを厭わない生徒がいたのです。「出来る?」と聞いたら、備品移動の後、各バザー準備の時間を使って懸命に看板絵を仕上げてくれていました。後日、その彼が看板描き直し体験を書いた作文、落書き事件には一切触れず名文でした。

 その②(5月29日、文化祭2日目、市民会館)
 東儀秀樹氏の公演を全く観ていないと昨日の日記に書いたのは間違いで、本当は開始3分だけ観ています。幕が上がって東儀氏の両の脚が見えた瞬間、私は感服してしまいました。もしかしたら、その後の演奏を聴かなくてもあの脚を見られただけで良かったのかもしれない。以下、霜山徳爾『仮象の世界』より引用。
 【「立つ」ということは一つの表現であり、それは単に気分や心情の表現ばかりでなく、人格そのものの表現でもある。(略)能や舞踏において「立つ」ことが既にそれだけで重要な意味を持ち、巧拙の勝負はきまってしまう。一流の声楽家の声は姿勢は美しいが、それは単なる風采ではなく、あの直立姿勢からでないと見事な声は出ないのである。】

 その③(5月30日、要するに今日、文化祭終了翌日)
 28日のF高会場文化祭では、屋内に食品バザーを多く作ったため、終了後、高校棟の3階(高3フロア)、4階(高2フロア)、5階(高1フロア)の床は油や溶けたアイスやこぼれたジュースなど、とにかく染みだらけになるのが毎年です。その掃除は、29日市民会館終了後、則ち大団円の涙の後、高3が学校に戻って行うのです。昨日の日記にも書きましたが、日常に戻るまでが非日常、中央ステージを解体したり、祭りで出た汚れは全て掃除したり、簡単に言えば非日常の痕跡を自らの手で消し去る幕引きが、それを作り上げた者の最後の責任です。
 だからね、高2担任団3人が授業の合間に4階フロアの廊下や教室のしみを必死で拭き取らないといけないなんて事態は、あの大成功のお祭りに瑕を残すことになるんだよ、と言いながらゴシゴシゴシゴシ。3階と5階はきれいになってたから、途中で面倒臭くなった、ってとこかな。明らかに気付かなかった忘れてたって状態ではなかったから、まぁ高1フロアに汚れを残すよりはまだマシだけど。
 高2の何人かに「君らは全フロアの掃除を完璧にやったらいいよ。それだけで今年を超える」って言ったら困った顔をしていました。そりゃそうです、先輩の瑕疵を悪く言われて頷けるわけはないですよねぇ、あははは。

 本日は5時に起床、学校入りで授業準備、担任業務、時間割業務。1~4時間の半ドン授業、明日からの黄金週間(文化祭出校の代休などを絡め、例えば今年なら5月1~7日が休校という風に、F校の黄金週間はやや特殊)を前に生徒達は皆そわそわにやにや、私だってそわそわにやにやこれが銀座の……そうです、私の心も黄金週間上京旅行に既に飛んで行ってるんですから。
 放課後は掃除、床の掃除も重点的にね。

 ネカフェで仕事と遊び、18時から教員「有志」で文化祭の打ち上げ。私は生徒指導部の教員ではないので文化祭仕事にはほとんどコミットしてない(全職員共通の仕事を除きやった仕事といえば、①文化祭前後の特別時間割の作成、②体験授業、③図書委員会「讀者之言」への寄稿、④生徒とコーラス……③④なんて遊びみたいなもんですからね)ので、専ら高3担任団や生徒指導部の先生(の中の、本日参加者)を立てるばかり……なわきゃなくて、うきゃきゃきゃきゃきゃとハイテンションで飲み食い喋る。

 久し振りに私ではなく別の先生が幹事をなさって二次会の韓国料理屋で、私にとっての本日のハイライト。ど酔っぱ大盛り上がりの会場は、大昔のF校飲み会ってこのくらい蛮カラだったんじゃない? って思えるような男子校教員丸出しムード。そこで、私より二回り年上の超ベテラン先生に突然絡まれた時。
 超ベテラン「俺は、お前みたいな言葉だけの奴は大っキライだっ!」
 私(若輩)「僕も、先生みたいな勢いだけの人は大っ嫌いですっ!」
 一瞬の絶句の後、それでも全く怒られなかったのは多分私が満面の笑みでお答えしたからですね。勿論、その先生は勢いは勿論のこと兎に角教科の勉強と指導とに全力を傾けてお出でで、「勢いだけ」っていうのがとんと見当外れだからだ、というのも怒られなかった理由です。売られた喧嘩だから買い叩いたまでで、怒られた場合に備えて「僕は『言葉だけ』だから今のも本心じゃないですぅ~」っていう返事までちゃんと準備してましたよ。「言葉だけ」の人間ならその程度くらい考えとかないとねぇ、おほほほ。