鳳凰が優雅に揺らす波が土に

 早朝起床、入浴。大阪旅行2日目は、我ら67回生B組から京大文系に進学したSくん・Yくんと3人で遊ぼうという約束を取り付けています。宇治と万博公園とを訪れる予定で、鳳凰堂・民博以外はノープランです。
 大阪から京都へは「サンダーバード5号」という頭悪い合コンみたいな名前の特急、贅沢に指定席で。8時15分に京都駅で待ち合わせの約束、SくんもYくんも高校時代までは「定刻通り」が苦手なタイプだったので割と心配していましたがこれは元担任の杞憂でした。立錐の余地なく寿司詰めになった電車で宇治まで行き、9時の平等院へ。

 平等院、敷地内の紅葉はあと一息の色で、来週あたりは地獄の人出が予想されます。今日の時点でも、9時到着の時点で鳳凰堂の中に(交代制で)入るための行列は2時間待ちという状態です。さて、鳳凰堂を見学しに来た理由の一つには観光客の中に「偶然」F中3年の修学旅行御一行様がいらっしゃるというのがありまして。YくんもSくんも「今日日のF校生はなんてお行儀がいいんでしょう!」と4学年下の後輩たちの育ちの良さにびっくりしておいででしたがこれは本当にそうで、学年主任(同窓数学)のお先生の率先垂範が活きておいでなんでしょうねぇすげぇなぁ、と歯ぎしり。引率の校長先生・国語科先輩先生から「何で居るの!?」と驚かれたり、複数の生徒から「あれ、よく知らないけどF校の教員じゃね?」的な視線(っつか指差し)を受けたりしながら、素知らぬ顔で「鳳翔館」を見学。Yくんが国宝の鳳凰一対を観て「これは可愛い、好き」とうっとりしていたので、ショップで二人に鳳凰のピンバッジを買ってあげたら喜んでコートにつけてました。

 平等院を出た後、観光無縁の民家通りダンジョンでリアル迷子になりつつ、手探りで辿り着いた最深部の非日常空間「辻利兵衛 本店」にて、パフェを食べました。平等院を出た後に「宇治でしょ? 平等院観たら後は抹茶パフェ食べるとかしか無いんじゃない? この年でパフェて」と私が何気なくこぼしたら、Yくんが真顔で「大人はパフェを食べないんですか?」と返したのに虚を突かれたんですね。反省して、パフェを皮切りに遊び尽くす決意を固めた次第。
 私は濃茶パフェ、Sくんは抹茶パフェ、Yくんはほうじ茶パフェ。どれも甘さは控えめ、ながら全ての構成要素が触感ねっとり系で、これが人間だったらパートナー束縛系の重さでした。Yくん曰く「GPS追跡アプリを使うタイプのパフェですね」 因みに、みんなで写メを撮っている時におっさんのテクニックのなさを指摘され、食べ物を撮るならアプリを使わんかい、という若者の命令で「Foodie」というのをダウンロードすることになりました。人生まだまだ勉強です。

 宇治から電車を乗り継いで到着したのは茨木駅。つけ麺の昼食をササッと摂った後、タクシーで「民博」まで運んでもらいました。目当ては『驚異と怪異 想像界の生きものたち』で、本日は常設展無料開放日(特別展は有料)ということもあって芋洗いを覚悟していたのですが、世間的にはマイナーなジャンルなのか、館内は見学に全く支障のない程々の賑わい。何人かのお客さんはそれでも「いつもより混んでるな~」と言っていたので、やっぱり上野の美術館・博物館が異常なんだなぁ、と。
 で、その『驚異と怪異』なんですけれども、とにかく素晴らしかったです。古今東西の異形を集め尽くして圧巻、しかも京大生2人(京大生は特別展も無料でした)が一緒に盛り上がってくれまして。例えば、Sくんは世界史好きで国際言語学五輪の日本代表、13世紀イギリスの世界地図も江戸のくずし字も読めます。好奇心お化けですから、湯本豪一コーナーでは「この人の本、学級文庫に入ってましたよね?」なんてリップサービスは教員冥利でした(『日本幻獣図説』を入れてました)。烏天狗を観て「きゃわたん!」、魔女ランダを観て「まぢ無理泣く!」という反応のYくんもめいっぱい楽しそうで何よりです。図録は2冊購入しました(自分用・学級文庫用)。

 初太陽の塔見学も嬉しい万博記念公園では、日本一123mの観覧車にも乗りました(手汗べっとりの恐怖と引き換えの佳景)。「いよっ! 日本一!」の吹き出し団扇でピースサインの写メとか阿呆みたいなことをやって燥ぐのも醍醐味、かき捨てりゃいーじゃん! というノリで。
 私のホテルのある梅田に移動し、荷物を部屋に置いてからタクシーで「市立科学館」へ。閉館後の特別イベントは、学芸員による解説付きのプラネタリウム鑑賞です。何万年の時間とともに少しずつ並びが変わっていく星空の様子を味わいながら、学芸員氏による専門的な解説を聴く……ソファがフカフカ過ぎてたまに眠たくなったりしましたが、事前の案内に「寝ちゃってもOK!」と書かれてましたからねぇ。

 梅田に戻って未成年たちとの夕食(オッサンは飲みます)、店は「和食がんこ寿司 梅田本店」を選択。飲み会無縁のSくんは勿論、河原町三条で飲食バイトをしているというYくんも知らないということです(Yくん、着席早々ドリンクメニューで店のランクを確認していました)。ノンアル勢のドリンク料金が安いのをいいことに、刺身から入って寿司だ鍋だとお大尽の夜。
 高架下の餃子屋で〆てから2人とはお別れ(後で無事に京都着のメールが届きました。偉い)、ホテルに戻って健康睡眠。