合わせ貝のムニエル ~夜のラブソース仕立て~

 昨日はほぼ日付を跨ぐ頃の就寝だったので起床はゆっくりと6時半、学校入りは8時を過ぎていました。高1の授業が5コマ(「姨捨」です)、7限には冬休み前の学年集会に臨席、昼休み他空き時間は添削をサクサク。小論文(特に医学部系)の添削が半分を占める時期になりました。

 夜、近くの居酒屋「A」に出向いたら、先客(私などよりずっと年上の常連さん)がお一人なのにお店の灯りがついてない。カウンターに座ってキッチンのマスターに理由を訊くと、手持ち無沙汰なのでお店は開けたけれども大勢には来て欲しくない、という不思議な答え。何でと問えば、昼前にお嬢様(まだ2~3才かな。いつもお店の中で遊んでいる看板娘さんです)が原因不明の高熱を出して救急搬送されたとのこと。いつもお運びをやっている奥様は病院でお嬢様につきっきり、アルバイトのRさんも病院に届け物その他を持って。病院に居ても何も出来ないけれどもじっとしておくのも、ということでお店を取り敢えず開けました、と。
 心配です。何か連絡があったら直ぐに病院に行かないといけませんね、とかいう縁起の悪いことは口に出せるはずもなく、だったら確り注文しようと新メニューにあったグラタンなど賞味、美味。

 星井七億『百合えっち文体練習』読了、★★★★★。同人誌なんですけどね、でもって18禁なんですけどね、素晴らしかったんだから仕方ないじゃないか。いや、もう、ホントに好き。レーモン・クノー『文体練習』と同じことをやってるんですよ。つまり100通りの文体で、但し百合掌編で。
 【覚書】というタイトルの1編目は「その夜、私と彼女はついに結ばれた」という一文から、「やがて二人揃って絶頂に達し、私はこの幸せがずっと続くように祈りつつ、彼女の体温を感じながら、深い眠りについた」という末尾一文までのノーマルな(18禁ですけど)記述。これを、99パターンの文体で書き換えるとどうなるか。例えば【死語】なら冒頭は「その夜、私と彼女はついにニャンニャンした」となり、【ギョーカイ用語】なら、「その夜、私とチャンネーはついにオールしたんですよ」となる。末尾一文、例えば【バブリー】なら「やがて二人揃ってダブル浅野すると、私はこの幸せがずっと続くように祈りつつ、うれしはずかし朝帰り」となるし、【総理】なら「それから二人揃って絶頂に達したということはですよ、二人揃って絶頂に達したということですか? ですから私としましてはですね、この幸せがずっと続くようにと、私は祈っていません」となる。
 上記4例はまだそのまま直訳した分かり易いものですが、【あ段を用いない】【誤変換】【短歌】【電報】【鼻風邪】【レシピ】【校歌】【お祈りメール】……等々、かなりシュールなものまで、先ずは文体を100種類思いついたのが凄いし(どれだけ日常を誠実精緻に観察してるんだろう)、その全てに強引に百合掌編をはめ込んだ腕力(技巧だけじゃ無理ですよ、こんなの)も凄まじい。いやはや、わざわざ18禁同人通販サイトに登録しただけの価値はありました。傑作。担任だったら、絶対学級文庫に入れるんですけど……(あ、18禁か)。