これが一番好きです 林先輩も好きです!!

 和山やま『夢中さ、きみに。』読了、★★★★★。面白かったと感想を書こうとふと手に取って、そのまま一気に読み通してしまったので、この一文と前の一文との間には30分以上のブランクがあります。前半は「林くん」を、後半は「二階堂くん」を主人公にした2種の連作短編。低体温な登場人物が多いですし、高校生の他愛ない日常を描いた作品と言えばそれまでなんですが、これがかなりの「ドラマ」なんです。あくまでも現実の男子高校生がやりそう・やれそうなギリギリの行動(例えば昼食パシリくんがキレて謀反を起こす時にこれまでの買い物の栄養バランスの悪さを母親みたいに注意したり、例えばTwitterの呟きが看板文字アップの写メで異性へのエアリプだったり)を組み合わせてドラマティックやロマンティックを創り上げる手腕に転がされました。特に私は中高一貫男子校出身ですから、同じ境遇の林くんに共感、1作目「かわいい人」の1コマ目、数学の教科書の書き込みを見た瞬間から作品世界に一気に同期しました。あと、表紙を開いて最初に出てくる林くんのアップを見て「伊藤潤二じゃん」と思ったら、もう一人の主人公である二階堂くんの方が伊藤潤二だったのが、何だか妙に嬉しかったり。中学時代にモテ過ぎて不幸になった二階堂くんが高校で必死に陰キャを演じる(狂言回しの目髙くんだけが正体を知っている)、という二階堂編も秀逸です(但し、こっちは男女共学校が舞台)。

 高3センター漢文。センターについてはこれが最終講義。文系及び東大を受験する理系の生徒には二次対策の授業がセンター後に始まりますが、東大志望ではない理系の方々とは今日でお別れということになります(医学部小論文の添削等、授業以外でお手伝いが出来る生徒が何人かは居ます)。高3センター漢文を担当するのは4回目でしたが、今年の68回生は全体として完成するのが例年より早かったかな、という印象(二次対策に関しては例年並みです)。
 明日は、東大文系二次対策、冬休み前の(つまりセンター試験前の)最後の授業です。教材は99年文系『東国李相国集』で、私の受験した年の過去問です。何度か書いたことがありますが、私は実際の受験本番の時、一日目最初の時限である国語においてこの問題から解答しました。即ち、この問題の問一が東大の解答用紙に最初に書いた文字になるのですが、「(両舟之)人馬之衆寡幾相類」を説明する解答として「二隻の舟に乗っている人と馬との~」と、中島みゆきの曲タイトルを書けた瞬間に、合否無縁の達成感を味わったことを今でも覚えています。

 夜は、中3担当英語先生に誘っていただいて年に一度の恒例、「もりき」で鴨を食しつつのさし飲み。英語先生とは、60回生の高3漢文を担当した時が初仕事で、本格的に組んだのは63回生の高校3年間。その頃の思い出話をしたり、現在の中3(高校で言えば71回生)のお話を聞かせて頂いたり。