彼方に 夢の世紀 ほほを染めて おもいをこめて

 私のTwitterアカウントというのは鍵垢なんで、ハッシュタグっていうのは意味が無いんでしたっけ? まぁ、署名くらいなら直ぐ出来ますよね。暇ですし。
 藤田省三の文章に、雑踏(←高度経済成長期に於ける拝金全体主義の比喩)は我々から不参加・停止・後退の自由を奪う(大意)というものがありましたが、コロナ禍の下の強制的な「自粛」に於いて敢えて(本当に「敢えて」)出来ることを探すとすれば、この不参加・停止・後退可能の状況に於ける観察と黙考となんでしょうね。

 さて、観察と黙考、これには自己省察も含まれましょうが、高校2年生の多感が否応なく巻き込まれた非常時に、敢えて「楽しみは」を詠ってもらった「独楽吟」、続々届いています。メールで届いた物はコピー&ペーストで、プリントで郵送されてきたものは鉛筆原稿を一つ一つタイピングして、200人400首凡てを一覧にする作業に没頭。「非常事態に於いて楽しんでいる(楽しいのだと気づいた)こと」を詠んだもの、「日常に戻ったら再びやりたいこと」を詠んだもの、切り口は色々ですが、こういう期間限定的な課題は直ぐに公表共有するのが大切なので、次の学年郵送物に全作品一覧の冊子を入れます。まさか公開されるなんて! とお思いの諸君もいらっしゃいましょうが、非常時のご愛敬ということで。暇ですし。

 たのしみは水卜麻美の毎朝の今日の占い四月待つ時
 たのしみは見上げてばかりいた姉の肩に上から手をまわすとき
 たのしみは人虫車風の声静かな夜に聞こえくる時
 たのしみはデジタル時計を不意に見てちょうどぞろ目で揃ってた時
 たのしみはノート開いた一行目少し綺麗に文字を書く時
 たのしみは初めて通る裏道が思わぬ場所に通じてたとき
 たのしみは日課の読書に耽りつつ後日談など創作するとき
 たのしみは手のひら赤く染めながら剣道場の床をふく朝
 たのしみは帰宅直後に夕食の準備をしてつまみ食いするとき
 たのしみは買いだめてきたカプメンの味をいちいち評価するとき
 たのしみはコロナで会えない友達とビデオ通話で煽り合うとき
 たのしみはこの素晴らしき学び舎で過ごせる時よりぐうたらする時

 届いた順に幾つか。
 「推し」というのが若者の語彙に定着したというのは昨日書きましたが、「カプメン」という言い回しは初めて知りました。後は、「煽る」の語の日常における使用頻度の増加も判ります。「コロナで会えない友達と」で感動着地を予感させながら「煽り合う」ですかすというのは天然なのか技なのか(「よりぐうたらする時」というのは明らかに技ですね)。「準備をしてつま/み食いするとき」という下の句、句またがりを知った上で、一足お先につまみ食い、のニュアンスを出したかったんだったらちょっと凄くないです?
 蛇足ですが、この12首の作者の性別を全部当てられる人、多分居ないと思います。

 というわけで、続々届くメール(高2短歌/卒業生『合格体験記』)の一つ一つに「拝受、有難う存じます」の返信をするだけで仕事始めの8時から2時間が蒸発するという一日、その後は短歌のタイピングに、時間割PC作業、と仕事は次々と。生徒不在の業務に欲求不満が溜まっていましたから、400首は良い気分転換になりました(いや、私のために生徒に課した訳ではないんですけど)。

 5/11の「自粛午前」。
 炊き込みご飯・山菜汁・海鮮野菜炒め・小鉢4種。
 日本酒は愛知「奥」だったのですが、これはずっと寝かせておいたやつで色が琥珀に近く。ここまで来るとちょっと苦手だったり(銘柄の好き嫌いではなく仕立ての好き嫌いです)。