あなたの他の誰かに 誘いの声をかけられたくなんかないから

 センター試験小説は井上荒野『キャベツ炒めに捧ぐ』で、土曜日に行った福岡ジュンク堂に本が無かったので、Amazonにて古本を注文。以前F高入試で使われた『静子の日常』(初井上荒野)がエラいこと面白かったので、届いたら仕事とは別に読んでみようかな(2作目井上荒野)。

 最近は、自宅書斎で仕事が出来るようになったために学校入りが遅い日(7時とか)が多いですね。今朝の書斎デスクワークでは、先日新しく購入した由紀さおりのベストを。70年代のシングルのクオリティは素晴らしいですね。
 授業は3コマ(高2現代文)、合間はず~っとデスクワーク。高3は昨日がセンター試験の自己採点で、今日から二次対策授業が始まります。私も文系・理系東大の授業があるのでそのプリント準備も始めています。
 でもって、そろそろ成績データが出揃いましたが、やはり冬休み課題テストは我らB組は端的に不調、これは第5回定期テストでの奮起が必須です。頑張ろう。

 5日振りでも久しぶりだと思うのが常連、夜は「もりき」で独酌。本日は20時から例の食べログ(F高卒ブロガー氏)効果で予約(4人で鴨コース)が入っており、18時に私が入店した時には大量の鴨を下ごしらえ真っ最中でした。ここぞと狙って鍋焼きうどん(メニューに無いけど)を注文したら、鴨を具材に使ってもらえてラッキー。食べログ効果の予約は現在3件で、私の予想(5組)まではあと2件。私が居る間に電話が掛かってきた1件をマスターが断ってましたが(今夜の小上がりという依頼でしたが、前述の4人で小上がりは埋まっています)、予約を断るなんて本当に珍しいことなんじゃないかなぁ(ちょっと失礼か)。

 私自身は卒業生に「東京でお店に困ったら『食べログ』やりますよ~」とアピールしているんですけれども、これまでは大学生からのリクエストばかりで全然困らなかったんですね。ところが、本日58回生商社マンTくんから「池袋・個室・接待・5人・和食・1万円」というリクエストが来て、はたと。私、社会人経験(就活・企業体験)ゼロですから、人生で「接待」なるものを行ったことも受けたこともないんですね。ドラマのイメージしかない。だったらどんな店がいいんだろうと、今回はこれまででいちばん悩みました。わざわざ聞いてくるってことは、ホテル・駅ビル・百貨店内とかいう「ベタ」じゃないんだろうしなぁ。一応一軒だけお示ししたんですけれども、う~ん、どうなんだろう。

セオリー無視は陽一のセオリー

 武田将明・飯田橋文学界編『現代作家アーカイブ2 自身の創作活動を語る』読了、★★★★。谷川俊太郎横尾忠則石牟礼道子筒井康隆、という4人(脈絡のなさ!)へのインタビュー。谷川俊太郎の学生時代の詩作ノートに谷川徹三が「◎○△×」の採点をしていた評価が的を射るものだったとか、横尾忠則ジョン・レノンの思想は靴下の親指の部分の破れに端無くも表れている(向上心が強いのか、足の親指が常に上向いている)と感じたとか、些細な出来事がいちいち面白いのがベテランのインタビューを読む醍醐味。谷川俊太郎横尾忠則の「壇」を離れた無手勝流の共通性だとか、谷川俊太郎の言う「宇宙」と石牟礼道子の言う「三千世界」とに共通性はありやなしやとか、色々と牽強付会しつつ読むと楽しいですし。

 高3はセンター試験の自己採点、高2は通常営業で現代文の授業は川田順造「手づくり幻想」。
 昨日、高2生徒は日曜返上でセンターチャレンジ(英数国及び英語リスニング)を受験しているのですが、少なくない生徒が自己採点をしていないと知って驚き。せっかく本番と全く同じ体験をするチャンスを得ておきながらそれをみすみすスルーする愚は要反省です。今後はそういうポカを意識的になくしていく必要があるでしょう。ウチのクラスには、私服でやって来たアホウも2人いたそうです。こういうのも反省。但し、私、このセンターチャレンジというイベント自体の必要性に関しては(あくまで個人的にですが)懐疑的です。
 あ、あと、しつこいですけど、択一式で配点も分かっているテスト(センター試験)なら自己採点は有効ですが、それ以外のテスト(例えばF中高の入試)の自己採点なんてな~んにも意味がないですからね。別に、無意味だからやるなって話じゃないですけれども。

 夜は、昨年末からどっぷりとお気に入りになった居酒屋「T」で独酌読書。山田風太郎森見登美彦両鬼才のエッセイを読みながら頭ぐるぐる。肴は、焼き鳥3本、アジフライ、醤油ラーメン。

 明日は、午前中に年休を取って母君と某件に関して喫茶店でお話を。ですから、ネクタイは(現在F校親玉大学医学部の)63回生Hさんから頂いたものを験担ぎに。

難しいコト言わないで 知恵熱出ちゃう

 pha『人生にゆとりを生み出す 知の整理術』読了、★★★★。楽をするための工夫に労力を惜しまない人、というか端的に努力家。でもって読書家、文章家。この方、国語教師も出来そうですけど(……ってか、国語教師が誰でも出来る仕事なのかも)。
 水木プロダクション『水木先生とぼく』読了、★★★★。年末には藤子・F・不二雄についての同種の本を読みましたが、こっちの方が水木しげるの生理に生々しく言及していて迫力(これは、勿論F氏と水木氏との作風の差に由来するものであって、作品自体の善し悪しとは別次元)。

 リカちゃんの公式アカウント(フランス語のスペリングはliccaなんですね)、2016年のセンター前日に湯島天神での自撮り(?)とともに受験生応援ツイートをしたときには大喝采だったのに、翌日現代文評論でリカちゃんのネタが出題された途端、解けなかった受験生(と、そのなりすましと)による大炎上が起こったというのは記憶に新しいところ。
 毎年センター試験の国語はネット住民たちが大喜びするネタを提供する(覚えている限りの最古は06年小説『僕はかぐや姫』の僕っ娘)のですが、今年はどうやらそんなでもなかった様子です(話題は地理Bのムーミンに集中していますが、ムーミンの公式は大丈夫だったのでしょうか)。評論本文の語注にコスプレ・同人誌等の語がありましたが、10年前ならいざ知らず今では全く違和感がありません。

 早朝の職員室でデスクワーク。今日は、なぜだか突然無性に食べたくなった蕎麦を求めて、12時前に学校を飛び出しました。目指すは市役所近くの「S」、うどん文化九州の片隅で東京風の蕎麦を出す珍しいお店です。
 天麩羅蕎麦(1000円、大盛り300円)には蕎麦掻きに茶碗蒸しにお新香にと数々の小鉢が付いて来てこれは全部サービス、さながら懐石の様相でどれも美味。真っ昼間ですが誘惑には勝てずついつい焼酎を注文してしまいました。蕎麦湯で割ってもらうと料理にも合って(そらそうだ)至福です。東京(高尾)から転居のご主人は、そんな飲み方をする人はこっちでは珍しい、と仰有ってました。私が大学時代に最初に美味しいと思ったお酒は、下宿1分の蕎麦屋で教えてもらった蕎麦焼酎(雲海)の蕎麦湯割りです。
 「S」の老夫婦はお話好き、カウンター一人の私に声をかけて下さって歓談、なのですが奥様の方がこっそり(旦那様が外した隙に)耳打ち。奥「学校の先生……若しかして、F校?」 私「あ、はい。どうして?」 奥「何となくです。実は、私の前の主人がF校出の人で、言うとあの人が焼き餅を焼いちゃうから、そこは内緒で、ね?」 私「あ、はい(可愛い……)」

 気持ち良く飲み食いしたあとは、酔い覚ましを兼ねて自宅まで1時間の散歩。15時の帰宅後は、自宅の炬燵の中で読書独酌の三昧境です。
 眉村卓『妻に捧げた1778話』読了、★★★。今更書店で平積みされていたのでついつい手に取ったのですが、『アメトーーク!』の影響なんですね。筒井康隆残像に口紅を』も同じ理由で平積みです。帯にあった(カズレーザー氏の)ように泣くようなことはありませんでしたが、これは眉村氏の文体がSF作家特有の「乾いた」ものだったからなのかな。今自分が置かれている(肉親が闘病している)立場で自己没入しようと思ったら出来ないこともなかったんですが、そうする必要性を一切感じさせない文章でした。
 その他、谷川俊太郎横尾忠則のインタビュー本等々。

昔は未来の向うにもあること

 昨日は21時頃の帰宅で、そのまま寝たのは間違いがないので、61回生Sくんから「池袋・部活の15人・4000円以内で飲み放題」という無茶ぶりがちなヘルプに「韓二郎」(3500円飲み放題こみコースに絶品鶏レバー串を絡めたら最高)を紹介した(無事に予約が出来たという連絡に「良かったね~」と返信した)らしいやりとりはきっと布団の中で行ったのでしょう(名推理)。酔っぱ・おねむで記憶が断片的です……っつか、小人さんか、小人さんが久々に助けてくれたのかな。

 センター初日に阿呆みたいなことを考えながら起床したのが4時半。入浴後、自宅の書斎で書き物(仕事)をして、学校入りは8時前。
 本日は半ドン授業3コマの後、午後は中1確認テスト(古文)の答案が来るのでその採点、14時過ぎに学校を出て母君の「がんサロン」の集まりに顔を出して、夜は63回生保護者理事・担任団の(同窓会的)新年会が薬院であり、と忙しい一日。これらスケジュールの合間に(夕方かな)、センター試験国語の出典・問題も公開されます。

 中1の確認テストは、授業で既習の『竹取物語』に明治時代の教科書の語注を付した応用問題を出したのですが、採点したところ予想よりも出来が良かったので(やや驚きを含んだ)安堵。具体的には、5割5分を予想していたら6割5分でした。原文には和語、明治期の記述(近代文語文)には和語に加えて漢語が用いられているということを答えさせる設問は、歴史(日本史)の授業で習った記憶を絡めて答えてきた生徒も多く、教科科目を横断して知識を思考に用いることが出来るなら立派だと感心です。

 母君の「がんサロン」は2度目。これは、会の性質上詳しいことはここには書けません。先に会場入りした母君を職場からタクシーで追いかけ、帰りはタクシーで母君をお部屋までお送りしました。お部屋に飾るカレンダーと、先日の東京出張時のお土産ともお渡し。

 母君を送り届けた後は、西鉄特急で天神に出て「ジュンク堂」で買い物。わざわざこのタイミングで『広辞苑』の新版を(重いのに)購入したのは、これを間違いなく自宅に持って帰るという使命感が、帰りの電車での寝落ちを回避させてくれると分だからです(大・成・功! でした)。
 63回生の保護者理事3名、担任団3名、の計6人による新年会(情報交換会? 同窓会?)は、薬院のイタリアンバル「N」にて。途中から理事M氏の御子息であるところのMくん(九大法学部・プロの漫才師)という我らがA組文系代表も加わって大賑わいの歓談。少し前までは話題が高校時代のこと(思い出)に集中していたのですが、そろそろ話題が大学での話・将来への話(行く末への予感)へとシフトしてきました。

 会は3時間超、1軒で健康的にお開きの後、西鉄でK市へ戻り、無事に『広辞苑』と己が身体とを自宅に送り届けることに成功。

私は孤高で豪華

 唐沢俊一『僕らを育てた声 小林清志編』読了、★★★★。小林氏は、「昔は良かった」誘導を受け流しつつ(というか今の業界にそんなに興味がないのかな)、それよりもベテラン声優のトリビアルな話を繰り出してインタビュアーを喜ばせるタイプ。例えば山田康雄の増長と臆病とに関しても遠慮無く且つ信愛を込めてサラッと話せるような。
 原研哉『白百』読了、★★★★★。成る程、最終100番目の随想に、前作『白』は観念、本作『白百』は現象、と書かれていました。そして、具体的現象とともに「自白」される筆者の具体的人間像は、9日の日記にも書いた通り、何というか、こう、可愛い(という言葉はあまり使いたくないですが)んです。

 半分仕事ですが、ドラマ『女子的生活』の1話を途中まで。連続ドラマは滅多に観ませんが、ここ2年間は『トットてれび』に『孤独のグルメSeason6』、そしてこの『女子的生活』と割と「漁っている」感覚。
 トランスジェンダー役の志尊淳は綺麗で女子的、ながら骨格が男子丸出しなのが逆にリアル。高校時代を回想するシーンの学ラン姿を見て「こっちの方がよっぽど女子らしいじゃん」と一瞬思ってしまったのは、我ながら単なる先入観なのか隠れた偏見なのか。あと、現実には外見が志尊淳ではないTGが多いでしょうから、その辺りが描かれるのか或いは当該の人々にどう映るのかというのは(ちょっとだけ)気になります。

 授業は1コマ(課題テスト返却とセンター演習のみ)でその他の時間はずっとデスクワーク。午後、1時間ほど年休を取って自宅往復・買い物をしたのですが、雪が舞って寒いですね。校庭には雪が積もっていて、朝は中学生(だと思いたい)の男子が大勢駆け回っていました。いつもは忘れがちな手袋も今日はしっかり。いずれにせよ、明日・明後日は基本的に晴のようなので、福岡県でセンターを受ける人にとっては有難い天気でした(全国的に見たら厳しい地方も多そうです)。
 17時の定時に学校を出て、西鉄で二日市、今日は「月空」で読書独酌。居心地が良く食べ物が美味しいのでつい飲み過ぎてしまうのはいつもの通りで、今日は瓶ビール2本、熱燗1合、の後でキープの焼酎をお湯割りで。

 電車とバスとを乗り継いで帰宅後は21時を過ぎていたのですぐに着替えて就寝……したと思うんだけどなぁ。

身分卑しき、貴方の下僕は呪文を唱えて祈ります

 朝からずっと昨日のテストの採点。採点をして、集計をして、解答解説上位者表などをまとめたプリントを作って、今日の6限の授業で最初のクラスに返却します(全ての作業は6限の始まる30分前に終わりました)。テストを返却する日は、残る時間でセンター現代文の演習(実力試験)をやるだけなので私は楽。次回からは普通の授業で、教科書外から引っ張って来た川田順造「手づくり幻想」を扱います。もうすぐ読み終わる原研哉『白百』が最初の授業の資料に使えそう(100の随筆ですからどんな教材にもどこかが絡められそう。どれも逸品だし)。

 採点中の職員室に、ぜんざいとお椀(使い捨て)とが運び込まれます。本日は鏡開き。嘗ては大きな鏡餅を飾っておき本当に食堂で割っていましたが、経費削減なのかいつしかそれが丸餅に変わり、今年からはついに小さな白玉が2つだけ(餅ですらない)! 一緒についてた沢庵も無くなってしまうなど、規模は縮小の一途です。しかし、それでもこういう年中行事を絶やさないのは大切なことだと思います。「祝う」イベントと「祈る」イベントというのは、しみったれな節約根性ごときで無くしていいものではなく。

 雪がちらつくと、2年前の67回生高校入試を思い出しますね。大雪で試験の時間割を急遽変更するなどドタバタでした。本日は、昼過ぎに一瞬吹雪いて、その後に鮮やかな虹がかかったので職員室が盛り上がり。写メを撮る先生、を後ろから写メろうとする先生。

 放課後はやや長い職員会議だったのですが、そこで大学からの新しい業務命令に関するプリントが配布されました。
 労働者の勤務過多を抑止する為の取り組みなのだそうですが、労基局の命令で、先ずは教員の勤務実態調査……として、我々が毎日判子を押している出勤簿に、出勤・退勤時刻を各人がその都度記録する義務が2月から生じるそうです。記録といったって出勤簿への手書きですから、誰が何時間働いているのかは事務方のどなたかが定期的に手計算で集計するのでしょう。みんなの労働、どんどん増えていきますね。

 夜は近所の肉料理「I」にて読書独酌。ポテトサラダ、鶏唐、パスタ。

胸騒ぎはいつも素敵な予感の仕業さ

 課題テスト2日目(国語・数学・英語・理社、の4科目)は14時過ぎにテスト終了で生徒は下校、本格的な授業は明日からです。私は、1限の出題(現代文50点)の採点をガシガシと。予め何枚かの答案を確認してみましたが、ボーナス点を含めて54点ある問題で50点を超える生徒が(少なくとも)1人はいるので試験として妥当だったという評価。

 担任団の関西数学先生(職員室を代表する読書家)と。
 数「……何かあんねんなぁ(独り言)……あ、池ノ都くん池ノ都くん、原尞って知ってる?」
 私「はい。知ってますけど……あ、ちょっと待って下さいね(スマホ検索)……やっぱり、シリーズ最新作、今年の3月に14年ぶりって」
 数「おぉ、そうか! やっぱりな。何か胸騒ぎがしたんや」
 JTCYさんがTwitterで呟いていたのを目に留めていたのが役に立ちました……っつか、稼業30周年で14年ぶりの新刊っていうのも凄いけれど、それを「胸騒ぎ」で感じるファンってのも凄いですね。何者? って思いました。

 さて、2日連続で「もりき」独酌。今夜も一見さんから鴨コースの予約が入り、漸く「食べログ」の効果を認め始めたマスターです。全くの勘なんですけど、全部で5件くらいは予約がはいるんじゃないかなぁ、などと。

愛の国から幸福へ

 太宰府店限定で「一蘭」が出している「合格ラーメン」というメニュー。麺が長い(伸びる)・器が五角(合格)形、等の特徴を備え……一杯890円っ! 東京でもあり得ないぼったくりで、学生ラーメン1コインが当たり前の感覚からしたら論の外なのですが、土地柄F校生もターゲットなので要注意です。受験生は「替え玉」出来ないだろうし、験担ぎでぼったくられて腹も膨れないなんてのは避けた方が良いと思うよぅ。

 本日は始業式、後に冬休み課題テスト。明日がテスト2日目ですが、両日とも4コマ(ほぼ半ドン)です。国語の出題があるのは明日。
 午後、書籍の買い出しで血痰ネーミングショッピングモール「You Meタウン」まで。これに託けて市内を90分のウォーキング。太りに太った年末年始の罪(脂肪)を滅ぼさないといけません。途中で「ミスド」読書をしましたが、勿論注文はホットコーヒーのみ。

 読書は、原研哉『白百』。
 東大現代文特講を担当する時には必ず最終回に09年(原研哉『白』)を持ってきます。喩えるなら名刀銘酒のキレ、思索も表現も共に澄み渡った名文です。その『白』の10年ぶりのスピンオフとも言える『白百』が刊行されました。白に纏わる百の随想は、しかし読んでみたら意外にも筆者の実生活・性格を色濃く反映しており、思弁の『白』とはその意味で一対。筆者の「食いしん坊」とフォルムデザイン(痩身)との間の葛藤など、人間臭さにクスッとさせられます。成る程、『白百』は棒を一本動かせば「自白」ですから。

 こないだ5日に「もりき」に行った時にマスターと話したのは、高校33回生同窓会の話。昨年末29日、常連のH先生が幹事となって「もりき」の鴨コースを食べる会を開く、とは事前に聞いていました。
 私「……で、同窓会、盛り上がったの?」
 マ「凄かったよ。16人」
 私「うわぁ、総揚げじゃん」
 マ「カウンター6人やろ、8人がけの小上がりに無理矢理10人入って。貸し切りやね。よう食うし。鴨だけじゃなくて酒もじゃんじゃん。Hくんとかが高か酒も持ち込んだりね」
 私「でさぁ、さっきから気になってたんだけど、あそこにある『めん●い』の袋って……」
 マ「その同窓会の中の人が関係者やったかな。えらい感動して食べてくれて、最後は握手まで。写真もいっぱい撮らっしゃって」
 私「あ~、成る程……」
 マ「何? 何かあると?」
 私「多分、その人、有名な人だわ。前言わなかったっけ? ホリ●モンが師匠って呼んで憚らない食通の人が居て、食べログとかでも凄い支持を受けてるっての」
 マ「あ~、聞いたような気が」
 私「多分その人だと思う。その人がもし食べログに記事をアップしたら、それがお客さん呼ぶかも」
 マ「え~、インターネットやろ? そんなのはこの店には関係なかろうもんね」
 私「おいちゃんはあんまりネットやんないもんねぇ」

 で、本日。東京土産を届けがてら「もりき」に行ってカウンターで独酌の最中。店の電話が鳴って、対応を始めた奥様のお顔がだんだんと訝しげなものになってきました。
 私「あ~、あれ、一見さんだよねぇ」
 マ「みたいだね」
 私「鴨のコースみたいだし、若しかしたら来たかも」
 マ「何が?」
 私「こないだ言ったじゃん。食べログに投稿なさったのかな(スマホ検索)……あぁ、投稿があるわ。ほら、ここ、うわぁ評価4.8だって」
 マ「何その数字。大きいと?」
 私「評価高い。この方は、銀座ミシュランで星の店でもこれより低いなんてことも。奥様、今の電話、一見さんから鴨でしょう?」
 奥「そう。初めての人なんだけど、『そちらの鴨は本当に天然の真鴨なんですか?』って聞かれたの」
 私「ほら、食べログ読んで直ぐ電話ってパターンだ。影響力高そうだから、後でおいちゃんたちもコメントを読んだら良いと思う。うわぁ、鴨、べた褒めだ。同窓会で補正が入ってるのかな(←失礼)」
 マ「それ見て電話って証拠はなかろうもん」
 私「ほら、投稿が今日の日付でしょ。それでその日の内に一見さんから直電なんて、影響に決まってるもん。今年、この後何件か一見さんが入るんじゃない?」
 マ「そんなもんなんかねぇ……」
 まだ腑に落ちない様子のマスターです。お店にお客が来てくれるのは良いこと、同窓会のお礼に、33回生から新年のプレゼントだと思ったらいいんじゃないかな。あ、でも、常連わいが入れなくなる程だと(妄想)困るなぁ。

命知らずを乗せてはるかに 飛びたつ ブライスター

 5時起床、入浴後に部屋で読書。6時40分に生徒のうち一人にモーニングコール。4人の内一人は、昼過ぎに福岡で行われる数学オリンピックの予選に参加するために先に帰るのです。チェックアウトの方法と空港までの道順(乗り換え)とを確認。

 7時過ぎに朝食。K市の「日常性」の中では、朝・昼食べない夜は飲む、飲むときもできるだけ炭水化物は摂らない(腹がふくれて他の肴が食べられないから)という方向性で、お米を1~2週間口にしない(日本酒は飲むけど)というのも珍しくないのですが、日本人ですし米が嫌いな訳ではない、どころか積極的に好き。なもんだから、「非日常」ホテルビュッフェなんてのに来ると大変なことになる訳で、海苔で1杯、ゆかりで1杯、納豆で1杯、とかね。これ以上太ったら仕事に影響が出そうなのに。

 8時45分に生徒3人とロビーで待ち合わせ。チェックアウトの後、「お茶の水→(京浜東北線)→品川→(京浜空港線)→羽田空港」の順で羽田に向かいます。品川を経由するのはお土産を買う為。ビジコン優勝の賞金は2万円なのですが、一人5000円なら賞金というよりかは「お小遣い」で、お友達や家族のためのお土産で蒸発してしまうんでしょうね。品川駅で25分、空港で25分の自由時間をとりました(これまた観光の一種かも知れません)。私は、品川でHさんへの「品川珈琲」やB組41人への「和ラスク」などを、空港で母君へのお土産を購入。
 そういえば、品川へ向かう京浜東北線の中では興味深いデータ。9人一列の座席の真ん中に3人のF校生が座っています。彼らは並んでじっとしていて(車窓を眺めてるのかな)、時折お喋りをするという感じ。列の中には他に3人の男性が座っていましたが、全員スマホを弄っています。ふと周囲を眺めて数えてみたところ、車内周囲の(眠っていない)35人の中、スマホが28人、じっとしているのがF校生3人、新聞が1人、読書が(私を含めて)2人、手帳に書き物をしているのが1人でした。

 羽田空港に着いたときに、生徒の1人がチケットを忘れた(ホテルから自宅に送った荷物に入れている)との話。A4のプリント1枚に読み取りバーコードがついてるのが往復の「チケット」という形式なのですが、要は紙切れ1枚です。こんな紛失しやすいものを失くしたら「はい、それまでよ」なんて阿呆な制度があるはずはありませんから(そんなこと言われたら暴動ものです)、そんなに「すみません、すみません」と謝るほどのことではない。
 それこそ偶然にも昨夜TwitterのTLで見た話が、大事なものを失くして悲しんでいる男の子を母親が注意不足と叱ったら「悲しんでいるんだから叱らないで」と言われてハッとしたというエピソードでして。成程、ここで「すみません」という生徒を叱るようなら確かにアホだ。
 実際、窓口に行けばあっという間に解決。身分証と電話番号暗唱で一発。生徒たち、「こんなに簡単なの?」と拍子抜けしています。

 ただ、アレですね。確かに失くした・忘れたが面倒くさいことになる場合はある。例えば。
 センター試験や2次試験の会場に受験票を忘れる人は絶対に居る。いくら大事な場面だからって、普段の教室でアレを忘れたこれを失くしたという友人(或いは自分?)を見てればそれくらい分かる。実際、200人の学年なら2人~3人はそうなる。だったら、受験票再発行の窓口(救済措置は必ずあります)が、5000人が受験する会場なら60人とか70人とかのうっかりさんでぎゅう詰めになることは直ぐに分かります。精神的な負担もそうでしょうが、物理的な時間のロスも大きいでしょうね。
 教員「だから、忘れた失くしたには気をつけましょう」
 生徒「はい……」

 さて、帰りの飛行機。搭乗口の案内を見ると、一人1000円(現金とっぱらい)で「Jクラス」なる特別席にアップグレード可能だということです。「Jクラス」ってのが何なのか一切分かりませんが、私は使ってみたいぞ(飛行機なんて滅多に乗らないし)。ファーストクラスへのアップグレードなら一人8000円らしく、その差を考えたら「Jクラス」というのは大したものではないと想像できるものの、まぁ経験が大切ということで。
 教員「Jクラス、乗ります!」
 生徒「「「おぉ~」」」
 この「おぉ~」という半笑いの為に4000円払うのは高くない派です。

 因みに、座席幅が「少し」広い、椅子に使われている革が上質、選べる飲み物の種類が多い、等の売りがあるこの「Jクラス」席、座り心地が良かったのか生徒3人はほぼずっと爆睡でドリンクすら頼んでねぇという味わい方でしたが、疲れてただろうから90分ちょっとの爆睡が1000円なら安いのかも、という評価。私にとってとにかく有難かったのは前方席だということで、直ぐに降りることができたのが最高でした。

 13時30分に福岡空港着。空港内のレストランで4人でランチを食べて、私は寮生2人と一緒に高速バスでK市へ戻りました。3人でタクシーで学校入り、生徒2人と別れて職員室でデスクワーク。明日は始業式・課題テストなので、モードを切り替えないといけません。

 旅行、じゃない出張中に読了した本は以下。
 ヴァージニア二等兵異世界居酒屋「のぶ」(5)』読了、★★★★。メディアミックスまで追う気はありませんし、元の小説も読みませんが、このマンガは上質だと思います。同僚(先輩)の関西数学先生(職員室を代表する読書家)からも高評価です。
 西原理恵子毎日かあさん名言集 あなたが笑うと、あなたの大切な人が笑うよ』読了、★★★。完結記念。最近は色々言われている作者ですが、子どもを手放した後なら別に良いんじゃないでしょうか。
 伊藤潤二伊藤潤二研究 ホラーの深淵から』読了、★★★★。一時期は才能(想像・妄想・発想力)の枯渇を本気で心配していた(半ば諦めていた)のですが、何とか再浮上していただきたい。今は原作付きでリハビリ(?)中、待っている読者は世界中に居ます。1月期のアニメは……DVD待ちかな。
 内田樹ローカリズム宣言 「成長」から「定常」へ』読了、★★★★。以前から時々使う表現ですが、内田センセイのベスト盤(DJリミックス)。今回の「ビジネスプラン・グランプリ」が正にそうだったのですが、来賓の政治家が「生産性を上げろ、若者はポンポン起業しろ」とナンセンスな挨拶をしているのを余所に、真摯な高校生は第一次産業や伝統工芸への回帰を(地に足のついたプランで)真剣に考えています。筆者の若者世代への期待の眼差しに共感。
 唐沢俊一『僕らを育てた声 飯塚昭三編』読了、★★★。おなじみのシリーズ、出たら買うよ。インタビュアーの「昔は良かった」誘導に、飯塚氏は気前よく乗ってくれている印象。「遊芸」の話は面白かった(というか、教員にとっても大事な話だと思いました)。

トーキョー・バビロン

 ホテルの部屋には無料の新聞。普段なら読まない社の朝刊でしたが、1面トップが大学入試に関するトピックだったのでそこだけ流し読み……しようとして、やっぱり直ぐに(冒頭の4文を読んでから)やめました。
 【大阪大(大阪府吹田市)は6日、2017年2月に実施した工学部や理学部など6学部の一般入試(前期日程)の物理で出題と採点にミスがあり、本来なら合格していた30人を不合格にしていたと発表した。全員を追加合格とし、希望者は今年4月に1~2年生での転入学を認める。他大学や予備校に通うなどしているとみられ、授業料などの補償や慰謝料の支払いを行う。大阪大は、2度にわたり外部から「誤りがある」との指摘を受けたにもかかわらず、適切な対応をしていなかった。】
 以上が4文抜粋ですが、どうでしょうか。具体的には3文目「他大学や予備校に通うなどしているとみられ、授業料などの補償や慰謝料の支払いを行う」。これ、非文(文法的誤りを含む文)だとまでは言いませんが、普通、前の文を受けてこんな文を書きますかね? 文の中で主語が一転二転するのにその両方を省略して、なおかつ「みられ」と助動詞「られる」を投入するって、もう読者を混乱させる(どうしようもない違和感に襲われるようにする)ことだけに注力したとしか思えません。古文かっつーの。
 これ、書き手が下手なんでしょうか、それともこれが新聞では許される「新聞あるある」の書き方なんでしょうか。実際、情報だけなら伝わりますしね。「読者は『てにをは』や文法など無視して拾い読み・流し読みしかしてないんだから情報さえ伝われば文体なんてどうでもいい」という姿勢なんだったら、いっそ関心してもう二度と読まないだけなんですけれども。
 あ、蛇足ですけれども、ニュースの内容そのものも酷いですね。私も入試業務に関わる仕事をしている(中学・高校入試では出題も採点も事務作業もしている)ので分かりますが、ヒューマンエラーは(あってはなりませんが)、ある。気づいたときに蓋をしないという一点が大切なのだと思います。

 朝食バイキングが1400円(それをタダで食べられる)とか言われたら、そりゃ食べるじゃないですか。実際、サラダのトマトを食べて驚きました。バイキングのトマトがこんなにみずみずしくて美味しいと思ったのは初めてかも知れません。根が卑しいのと小皿がいっぱいあるのが好き(松花堂弁当など最高です)なのとで、バイキングなんて形式に出会ったら一通り食べずには居られないもので、朝だけで1㎏と言わず太ったんじゃないか、という分量。

 さて、本日は、第5回「想像力、無限大∞ 高校生ビジネスプラン・グランプリ」の最終審査会です。メンバー4人(舞台に上がってプレゼンをするのはB組の3人)を引率して、先ずはお茶の水から赤門へ……迷ったのですがタクシーを2台呼んで分乗しました。9時30分に赤門の前に集まって、お世話になっているK先輩(昨夜の壮行会の幹事)による写真撮影があるのです。待ち合わせがあるなら歩く時間を極力無くした方が良いという判断だったのですが、驚いたのはホテルにタクシーを呼んでもらったら「迎車料金」なるものが取られるという都会の文化。1台につき500円弱払ったんですけれど、なめくさっとんなとしか思えない制度です。九医と東大理系との選択肢がある生徒の心から、東大がどんどん蒸発していきます。

 赤門前でバシャバシャと写真を撮り(これはどうするんだろう、市の広報とか、或いは同窓会の会報とかに掲載されるのかな)、会場入りする時にはイベントスタッフにバシャバシャと写真を撮られ(これはイベントのFacebookにどんどんアップされるそうです)、巻き添えで私まで写真に入らないと行けないのがちと辛く。メンバーの某くんもそうらしいのですが、写真に撮られるの、嫌いなんですよねぇ。
 さて、その「会場」なのですが、赤門を潜って右、を見たらそこに私が見たこともない近代的なビルがあってその名も「東京大学 伊藤国際学術研究センター」。その地下にある「伊藤謝恩ホール」(もの凄い「伊藤さん」推しだ!)が会場なんですね。500人くらい入れる(多分、クラシックなどのコンサートもできる)ホールみたいです。こんなん建てる金があったんだぁ……ってそりゃ「伊藤さん」なる人の私財に決まってます。

 先ずは、ビル3階の控え室に5人とも案内され、そこでスタッフに渡されたフリップが5枚。見れば、「5年後のあなたへのメッセージ」とあって、成程「ビジネスプラン・グランプリ」ですからね。高校生がビジネスの世界に打って出る(大学卒業を一つの目処とした)5年後あたりの自分を想像しろ、という話ね……と、納得しかかって、ふと疑問が浮かぶ。「ん、5枚?」
 メンバーは4人、フリップは5枚。差し出したスタッフ氏に問うて曰く「何故5枚なんです?」、スタッフ氏答えて曰く「先生も書かないと」、私驚いてタメ口で「僕も書くのっ!?」
 まぁね、「想像力、無限大∞」がキャッチコピーですからね(私、今回「∞」が「むげん」と打って変換できるって気づくまで、ずっと「関ジャニ∞」って変換してから4文字消してましたからね)。ノリとか雰囲気とかはある程度想像してましたけれども、まさか引率教員までがこんなのに巻き込まれる程だとは思いませんでした。5年後の池ノ都先生へ、「厄年なんてぶっ飛ばせ!」

 さて、リハーサル(省略)を経て午後から開始の本番。一般客(ビジネスマンがいっぱい!)や高校生(ファイナリスト10校以外に、セミファイナリストの10校も招待)を前に早速プレゼン開始……の前に、主催者代表挨拶ですね。公庫の一番偉い人はついこの間まで財務省のかなり偉い人だったそうで、挨拶では麻生財務大臣が常日頃からこの「ビジネスプラン・コンテスト」を高く評価しているということを強調されておりましたが、引率教員は頭に浮かんだ「天下り」の語がぐるぐると回って話を聞くどころではありません(よく知らんけど)。

 気を取り直して10組のプレゼンテーション。先ずは強調、これが大変素晴らしかった。日記の文体のせいで全てが下らないもののように見えてしまったらいけないので、再度強調、10組とも素晴らしい内容でした。
 正直、「高校生のビジネスプラン大会なんて意識高い系の回転寿司だろ~」って先入観、ありました。でも、以下の10プラン全てが、地域社会の問題に真摯に対峙し、頭と手と足とを使って解決策を練り実現しというプロセスを踏んでいたんですね。机上の空論ではなく現実に根を張っていたのです。
 ①「デニム着物@国の重要文化財in倉敷」による『普段着感覚の和装街歩き聖地化プロジェクト』
 ②「棚田の未来を守れ!~棚田用自律型稲刈り機『弥生』~」
 ③バナナに秘められた魔法の力!~フィリピンの未来を救うために~
 ④ワンタッチで便利を作る~ファスナーを使ったカスタマイズ商品づくり~
 ⑤クラゲ予防クリームの開発
 ⑥青い森のほくほくカボチャ~メガソーラー農園化計画~
 ⑦子どもパワーで商店街を変える! コストをかけないWin-Winビジネス!~すべてがワンコイン、子どものまち(まちなか職業体験)~
 ⑧魅せる耐力壁への挑戦~「鹿沼組子」による耐力壁~
 ⑨Bridge~学生と社会のマッチングサイト~
 ⑩オール室蘭が本気で作り上げたB級グルメ

 グランプリ②、準グランプリ⑤、特別賞⑥⑧⑨で、残念ながらF校(⑦)は入賞は果たせませんでした(ですが、多分10位ではないと思います)。入賞の発表はどれも素晴らしく、というか⑤は研究段階で内閣総理大臣賞を受賞している、⑧・⑨は既に実用の段階に入っている、②はJALを始め多くの企業との交渉を進めている、と他とは次元が違っていました。こんな中に、幾ら市内の商店街の人々の協力を得たとは言え、突貫工事・観念先行の感が否めないF校が食い込んだんですから、これを私は素直に凄いことだと思います。

 10組の発表が終わった後、突然投げ込まれた来賓挨拶が面白かった。
 とある若手衆議院議員小泉進次郎になりたい! と顔に書いてあるようなの)が、開口一番「感動をありがとう!」タイプのスピーチを披露したんですけど、築5年の会場の舞台で「私も13年前に正にこの会場でビジネスプランのコンペに参加したという思い出」とか嘘ついてて、んまに息するみたいやなぁ、と生徒と失笑。リアルタイムでオンラインに映像が流れてるのにねぇ。

 その後、ゲストによる特別講演があったのですが、同じ年代の人間なのに(先の政治家とは)誠実さがこうも違うかという内容で楽しかったです。後援者は「Spiber株式会社」の取締役兼代表執行役のS氏。
 氏の研究は社名の通り「クモの糸」。同じ太さならば鋼鉄よりも遙かに強いクモの糸(構造タンパク質素材)を、次世代の工業用基幹素材として普及させるための研究・開発を行っているんですね。2018年はその実用化が本格化する所謂「元年」なのだとか。
 慶応大学由来のこの会社を立ち上げるに至った氏の中高の経歴は、ストレート慶応ボーイが受験要らず時間無限の中学時代に「自分は(人は)何故生きるのか」という哲学的問いにとりつかれたところから始まりました。生きる意味はない、ならばせめて幸せに生きたい、そのためには自分の周囲が幸せであるべき、という考えを「修身斉家治国平天下」的に広げていけば、自然と生きる目的は人類に資する(氏は「平和のため」と強調されました)研究開発に至る訳で、それが「クモの糸」という基幹素材の開発に繋がったという流れ。
 だからこそ、講演後の高校生による質疑応答では「この技術は軍事に応用できるものでは」というのを衝いて欲しかったところ。嘗て開発に失敗してきた無数の先行研究の中に米軍によるものがあったという一言に質問のヒントはありました。研究と開発と経営との「三足のわらじ」を履く先輩に対する最も誠実な質問の一つはこれで、恐らくF高「男く祭」の講演だったなら確実に誰かが聞いていたはず(私、メンバーをけしかけようかと思ったくらいです)。

 コンテスト授賞式の後は交流会……ですが、これはF校生が最も苦手とするタイプのイベントで生徒たちは苦労していた様子。私は、会で出される食べ物は口にするなとだけ厳命していました。
 解散は19時過ぎ。可哀想に上京までして観光が秋葉原電気街15分と、本郷キャンパス安田講堂三四郎池)15分だけだという生徒たちに、せめて美味しいものでもと移動した先は水道橋。夜の暗闇からうっすら東京ドームが見える(これも観光?)ドームシティそばの水道橋「菩提樹」で、豚カツを奢りました。昨日の壮行会といい今日の最終審査会といいメンバーにとっては勝手の解らぬ「異界」での体験続きで(っつか、4人中2人は九医志望でビジネス関係ないからねぇ)疲労は大きいでしょうが、一様に「得るものがあった」と言ってくれたので引率も一安心。あ、でも、一言。きみらがデキャンタで飲んでる黒ウーロン茶、3つ注文したから計2000円だからね。

 生徒4人はタクシーに乗せてホテルへ戻し(課題テストの勉強、してるかなぁ)、私は電車を乗り継いで帰還。部屋で缶ビールを1本だけ飲んで、就寝。
 朝はバイキングがっつりでしょ、昼は支給の弁当でしょ、夜は豚カツ屋でしょ、そら太るわいな。