涙には幾つもの 想い出がある

 高2現代文の授業はセンター試験演習(小浜逸郎)。「命令の言葉」に「説得の言葉」で立ち向かおうとする少年の苦い思い出が描かれている小文。
 午後の練習は憩いの森で。外で朗々歌う方が面白いですよね(クラス全員で憩いの森に集まるというのが、6月のイベントに結び付くのですが、それはまた別の話←これを書いている現在8月2日、3ヶ月遅れの日記だから書けるメタ記述ですけれども)。

 体験授業(F校生の短歌5種)の資料も着々。
 例えば「風吹けば同方向になびく葉の中に逆らふものはゐないか」という、お題「葉」で佳作、中島みゆきの歌詞みたいなこの短歌を紹介する時に、何か短い文章を一緒に添えて出したい。同じ事を著名な文学者がこのように書いています、という流れ。で、これについては真っ先に思い出すものがあります。上田三四二「底荷」、名著『短歌一生』の冒頭を飾るこの文章、「千夜千冊」で松岡正剛氏も「貴色」の言と絶賛した小文の趣旨は、軽薄一途の現代日本語がマストとなった日本語船の、惨めな転覆を防ぐ底荷としての短歌の言葉に生きるという宣言。この上田氏に通じるような心構えが、F高2年生の身の内に既に備わっているということを、是非生徒(体験授業の生徒なので、「疑似生徒」ということになりますが)に伝えたいのです。
 もう5度目だか6度目だかの体験授業ですが、実は毎年最前列で聴いて下さる女性(私の母親より上の世代)がおいでです。2年前に今担当している生徒(63回生)が中3だった時、その担任で高校文化祭の仕事から離れた私は体験授業をすることができませんでした(歓迎遠足で学校近くのK山に登ったのです)。遠足下山後、学校祭が行われている職員室に戻りしな、偶然その方とすれ違い「今年は先生の授業が無く残念でございました」とのお言葉を頂戴しました。
 体験授業の想定聴講生は、その方お一人です。

 西原理恵子吾妻ひでお月乃光司『実録! あるこーる白書』読了、★★★★。アルコールとも西原理恵子作品とも中の良い生活を送り、吾妻ひでおの作品も買ってる、月乃光司のCD(戸川純ちゃんとの共演)も聴いたことがある、っていうベストの布陣、当然のごと即購入。笑いを期待して買ったら肩透かしだけれども、アルコール中毒に関する入門書(分かりやすく本質そのものを伝える本)として上質のものですね……って、酒飲みながら読み終わった人間が言っていいのかそんなこと。