残像に口紅を

 坪内祐三は好きな書き手なのですが、先日発売された新刊の中でユーミンに関して書いてた内容は解ってなかった。45周年でテレビに出まくるユーミンに「50周年を待て(大意)」という記述。持ち堪えるか分からない状況の中で、関係者やファンは必死に「残像に口紅を」塗っているのに。

 橋本治は、10分間読書を指定図書にする学年に所属した時に『勉強ができなくても恥ずかしくない』を推したのを始め、様々な授業教材の参考資料として生徒に文章を紹介しまくり、名前を覚えておくように言いました。知的な意味できちんとした人生を歩んでいたら、将来必ず再会しますから、と。
 本人がどこかで書いていたように、『浮上せよと活字は言う』以外の全著作が(内容やスタイルのために)試験にできない文章で書かれており、10年と少し前の京大で同書が出題された以外では、入試や模試で彼の文章を読むことはありません。かく言う私も、『負けない力』で高校入試を作ろうと苦心して結局諦めた口です。
 最後に読んだのは『いとも優雅な意地悪の教本』でこれが2017年の末。膝を打った本は2016年の『いつまでも若いと思うなよ』と2015年の『負けない力』で、評論随想ではなく小説はどうかと言えば10年前の『巡礼』以降の作品を読んでいません。読むべきはたくさん残っていますね。合掌。

 本日は入試作業日曜出勤の代休で生徒も休みなのですが、高3は授業時間確保のために出校して授業、担任団も出勤です。私は、文系難関コースの授業を。母君は水曜恒例のデイケア・リハビリですので、昼食を準備しに自宅に戻る必要がありません。 授業以外で空いている時間は、過去問提出ボックスに続々と出される答案の添削。ところが、63回生・64回生で高3現代文をやっていた時には回っていた添削がどうも巧く回っていない。この学年の生徒の提出量が特別に多いわけではなく、たった3・4年で私の添削体力が著しく落ちたとも考えにくく、一体これは何故のこと……というのは実は考える必要もなく明らかで、九大医学部が「志望理由書」の提出を求めるようになったため。他大学の医学部も含めて、志望理由書の添削を続々と持ってきて、これが大変なのですね。

 さて、こなしきれない添削を14時で一旦中断して年休。先ほどデイケアの日は昼食作成の往復をする必要がないと書いたのですが、今日はそれよりも時間を食うイベントがあって、リハビリステーションにて、ステーション長であるところのお医者様・療法士の方・ケアプランナーさん・母君・家族私、の5人でリハビリプランについて話し合う会議があるのです。タクシーでステーションまで出かけ、到着の15時はちょうどおやつの時間でしたが、フロアの長テーブルで他の利用者さんたちとニコニコと語らう母君の様子をちらと見ることができました。余所行きのお顔だわ。
 定期的に開かれるというその会議(仕事の都合もあり、必ずしも家族が出席皆勤になる必要はないとのこと)は、本日が初回ということもあり母君の病歴から説明してたっぷり1時間。母君に関わってくださるプロであるお三方が、いずれも柔らかい物腰で丁寧にお話を聞いて下さって助かりました。リハビリは、機械を使った運動からゲーム性の高いレクレーション、そして別料金ではありますが脳トレ的なテストもオプションでつけてもらいました。簡単な計算等はともかく、そのオプションには鉛筆を使って「書く」という要素が組み込まれていたからです。

 母君はステーションでお風呂も済ませて来られるので今日は自宅での入浴はなし。そうそう、ステーションでは「連絡帳」を用意してくださっていて、職員の方が毎日の様子を教えて下さいます。今日は「ゲームで500点の優勝、お喜びでした」と。何のゲームなのか500点がどのくらいなのか全く判りませんが、「お喜び」だったらいいではないですか。赤ペンで毎回「長男・辰也」の返事も書きます。東大120字やTwitterで鍛えてますからね、オチのある小文を書くのは苦手ではありません。

 今日は、マンションの総会が19時から(マンションエントランスで)行われ、今期の副理事長として出席。20時終了後に、「もりき」で魚しゃぶの独酌。帰宅後即就寝。明日は3時起きで添削です。

 山口恵以子『真夏の焼きそば 食堂のおばちゃん(5)』読了、★★★。母君のお食事を準備するようになったから、ではりませんが最近食堂・居酒屋系の本を手に取ることが多い。次の小説は蝉川夏哉です。