ああこれからこの部屋で起こることすべて

 夜明け方の起床後に朝風呂、暗い内にチェックアウトして、朝早い新幹線で博多駅~K駅、の帰路。思わぬ延泊でしたので、早く帰って母君のお顔を見て安心したく。
 車内での朝昼兼用の食事は「牛肉どまん中」を初めて。以前、オツカル様・がっ様と56回生Nくんの4人で麻雀をやった時に、ウーピンを切りながらオツカル様が「牛肉!」と叫び、私が「何それ?」と訊いたら、「え、『牛肉どまん中』ってあるじゃん」と。がっ様はすかさず「解るかそんなの!」とツッコミましたが、私とNくんとは暫く笑いが止まりませんでした。この時Nくんはオツカル様に恋に堕ち、以来56回生の「いつメン」仲間として遊ぶ関係です。

 昼過ぎに自宅に戻って荷物を降ろし、さてS醫院に母君をお迎えに上がろうかと思ったそのタイミングで、ケアプランナーのKさんからメールが届き、母君の意識レベルが激しく低下してきたという連絡があったので至急S醫院へ向かって欲しいと伝えられました。一瞬危篤かと思ったのですが、伺えばそうではなく脳の転移の影響が顕著になってきたということだろう、ということ。会話も出来ると聞いて少し安心。7月からそういう傾向はありましたね。
 Hさんにお願いしてS醫院まで往復していただくことに。入院の病室に入ったら、母君は点滴投薬治療中で、私の只今のご挨拶に夢現の状態で「あぁ、辰也さん」と。意思疎通が出来ることを確認してから、一度自宅に戻りました。Hさんをお待たせする訳にはいきませんし、S先生が往診からお戻りになるまで2時間程時間があるとのことだったので。お戻りになった頃にもう一度(今度は自転車で)S醫院に出向き、S先生・ケアプランナーKさんとの話し合いをすることになっています。

 帰宅後は入浴、洗濯、お土産の整理等々。お風呂に浸かりながら、色々と考えます。上京旅行は、うん、楽しかった。延泊の知らせがショックだったり不安だったりと良くない影響を及ぼしたなら母君には大変申し訳ないですが、台風(自然災害)ばかりは仕方が無いです。昨夜63回生Iくんとお会いしてお話ししたのも滅茶苦茶楽しかったし、欠片も後悔はなく。8月上京を中止するという選択肢は端からありませんし(服着た親不孝を名乗る所以)、Hさんから「ちょっと前まで自宅で元気だったのに突然悪くなって」というニュアンスのことを言われたのにも、「本当にお悪くなる直前まで自宅に居られた、ということでしょう」と返しました。これは割と本心です。母君には、それがお出来になる心の強さと慎重さとがあります。

 暫くの入院延長は間違いないでしょうから、お見舞いに掛かる移動時間を知るべく、自宅から自転車を漕いでS醫院へ向かいました。炎熱の道路を片道25分、今年の夏は自転車焼けしそうです。
 S醫院にて、先ずはS先生からのご報告。3日前辺りから動きや語りかけへの応答が緩慢になり、今日の昼にガクンとお悪くなったとのこと。点滴による投薬を続けることになるけれども、腕が酷く傷つくこと、直に口から食事を取ることが不可能になるであろうこと、を考えたら今のうちに(身体が耐えられるうちに)胸にポートを入れる手術を行った方が良い、というご提案。母君のご意思を確認するのは難しそうなので、私の責任で手術をお願いしました。今通っているS病院で、お盆休み前に手術(数十分程度の軽い物)を行えるよう手配して下さることに。

 続いて、ケアプランナーKさんとのご相談。母君のご意思とS先生の方針とが一致しており、延命のための治療は行わずにこのまま緩和ケアに移行すること、これに私からの異存が無いことを確認。その上で、ポート手術を終えた後の母君の移動先を、自宅にするのか、病棟にするのか、介護施設にするのか、という決断をしなければなりません。
 私の中には、自宅という選択肢はありません。Kさんもそう仰いましたし自ら視認したので、母君が要介護度5に当たることはよく解ります(明日、再調査の方が醫院にいらっしゃるそうです)。自宅にお連れしたとしてベッドから出ることはお出来にならず、その状態で私が仕事で不在の間お一人で居られるというのはちょっとどころではなく心配。私が毎日通えば良いだけの話ですから、母君には安全第一で病院若しくは介護施設に居て頂きたい旨をお伝えしました。Kさんのお勧めは、S醫院と提携を結んでいる介護施設「I」で、ここは緩和ケアを受ける患者の「終の棲家」としてサービスに定評があるというお話。S先生がほぼ毎日往診をして下さること、病院と違って介護施設なので1日おきの入浴介助があり清潔を保てること、自宅から自転車で25分程度なので仕事をしながらでも毎日通えること、等々の条件が私と母君とにとってとても良さそうなので、Kさんを通じてお部屋(個室)に空きがあるかを調べて頂くことにしました。

 自転車で帰宅。18時ですが流石夏、明るい暑い、帰宅時にはシャツが汗びっしょりで、これは良い運動になりそうです。もう一度入浴の後、お土産を携えて「もりき」へ。母君のことはまだ伏せて、東京での楽しかった思い出を仕方話で。

 旅行中に読了の本、以下。
 内田樹『そのうちなんとかなるだろう』読了、★★★★。自分語り的座談は多い方ですけれども、人生全体を継時的にというのは初めてですかね。読むと元気が湧いてきます。
 山口恵以子『あの日の親子丼 食堂のおばちゃん(6)』読了、★★★★。『RPGツクール』でサンプルをプレイしているような気分、って比喩、通じます?
 矢部太郎『大家さんと僕 これから』読了、★★★★★。少し涙が出ました。明日は我が身、とは思いたくないです。
 読了の本はこれだけで、これまでの上京の中では最も冊数が少ないのですが、並行して読んでる本の中に薄田泣菫『茶話』があって、これに結構時間を持って行かれてる(ゆっくりゆっくり読んでいる)ところです。