いみじかりし人のありさまなり

 「おそれ」には恐怖(オソロシイ)と畏怖(オソレオオイ)の2種があり、それは弁別困難だったり両者渾然だったりが往々にして。例えば高1内進組教材、『宇治拾遺』の「袴垂、保昌に合ふ事」、保昌の圧倒的威厳・アモラルについて袴垂は「あさまし・むくつけし・恐ろし」と並べた直後に「いみじ」とも言う。細かい文法や話の筋を忘れても、前者「おそれ」の概念などは意外に残ったりします。古文が現代文でもある所以の一。

 私は出場しないのですが、土曜日の高校体育祭(何とか天気は保ちそう)、ふと気づいたら「先生と一緒」という生徒教員の二人三脚がプログラムから消え、代わりに「液面制御リレー」なる謎競技が。体育祭担当の先生に伺ったら、「出場したら解るよ。あ、先生は出ないの? 良かったね。着替えの準備がなくて済む」と不穏なお返事。

 56回生Tくんは、私大に文系進学した直後に医学部に入り直し、今はF校親玉大学で脳外科医という経歴(同大医学部出身)。F校親玉大学医学部っつったら、駐車場に1年坊主がパパだとかお爺ちゃまだとかから合格祝いに買って貰った外車がずらり並ぶという空間ですから、その後の生活も推して知るべしで、私の「お前、肥りすぎやろ!」の言も8割型は妬み(ねたみ)妬み(そねみ)ですね。でも、もうすぐ結婚するんなら、披露宴のタキシードの着こなしとかさぁ、と赤ちゃんを労る手つきでお腹をさする私。
 と言いつつ、「もりき」ではお目当ての秋刀魚だけじゃなくて何だかんだ色々と注文して、二次会の昭和丸出しスナック(平成オープンですが)「S」では飲んで歌って騒いで。10年前とやってることが全然変わってないんですけど、私アラサープチオッサン・Tくんピチピチ医大生だった10年前は私の老いが際立つコンビだったのに、私アラフォー純オッサン・Tくんアラサー貫禄脳外科医というコンビになった今は同期かどうかしたらTくんの方が年も地位も上に見えるんじゃないかという。いや、地位は実際にTくんのが上なんですけど。