ほんわか ふんわか そろそろり

 東大入試終了。今年度の高3漢文担当として、今からじっくり解答解説プリントを作成します……の前に、各問題の(予備校みたいな講評ではなく)極々個人的な「印象」。

 第一問(文理共通現代文)……松嶋健「ケアと共同性」。昨年度の本文が近代における(内発的自由意志という虚構に託けた)自己責任の論理を批判するものだったのに続く内容で、自己責任の論理を超えた先にある倫理とは何かを(世界におけるケアの実践を例に)論じた文章。明らかに2年で一組のメッセージで、東大現代文において嘗て(少なくとも10年前には)存在したメッセージ性における「婉曲さ」を放棄してでも訴えたいことがあるという意志が感じられます。
 第二問(文理共通古文)……『落窪物語』の一節で、高3古文先生によれば受験生難渋必至だそう。ですが、先日終了した山内直実『おちくぼ』(花とゆめ)は割と売れた(話題になった)作品、読んで筋を知っていた受験生も居るのでは、と推察(これが「少女漫画=女子」の短絡に基づく女子優遇だ、とまではそれこそ短絡ですから考えませんが)。
 第三問(文理共通漢文)……井上金峨『霞城講義』。江戸日本の儒学者による漢文。対句多用の為政論で言われている内容はベタなのですが、受験生には難度が高いものだったと思います。設問一の半行日本語訳集合が難しいのもここ数年の傾向で、「於」の比較形などは本番では意外と思い浮かばないのでは。
 第四問(文系現代文)……夏目漱石「子規の画」。驚愕。21世紀の東大現代文で最も古い文章は三木清『哲学入門』でこれは戦中。他にも幸田文小野十三郎などがありますがそれでも戦後です。それが一気に明治随筆、京大や一橋ならばいざ知らず、まさかです。本文のっけから「余は」などという一人称、受験生は頭真っ白目は白黒という状態になったんじゃないでしょうか。出題者は2016年に岩波文庫から全3巻で出た『近代随筆選』を読んで作問(ストック)したのでは、と推測するのですがそれは私が同じことをするために当時3冊を購入したから。その時に私も「子規の画」から校内模試文系現代文が作れないかと「エア作問」をしたのですが直ぐに「これは作らない(東大っぽくない)」と止めました。ですのでこれは私の完敗失敗、(個人的に)悔しいです。因みに、問題としては文体だけでなく内容も受験生から遠いもので端的に「難」。

 2021/02/25付の「東京大学新聞」(特別号・受験生応援号)、1面に署名入りで編集長から受験生へのメッセージ「東大で、君を待つ」が。現在の編集長は外進高1A組で担任を務めたこともある67回生Nくんです。東大だけを優遇するみたいなのはあんまり感じが良くないですが、卒業生が書いた文章なら一も二もなく。コピーして、高2の各クラスに掲示しました。

 授業4つは演習のみで楽。空いている時間に、東大漢文を解いて、解答解説プリント作成の準備を始めました(3月末の国語科会議で問題の講評をまとめて発表しなければなりません)。うん、やっぱりちょっと難しいかな。

 02/26は「自粛御膳」をお休みして、後輩数学先生と月に一度の「メシハラ会」を懐石「G」にて。
 高3が国公立受験で学校に居ない(添削の仕事がない)日を選んで、17時半〜20時の二人酒。入試や来年度の仕事の話で盛り上がりながら相変わらず飲み過ぎ。毎月絶品がお約束のコース、2月は筍に菜の花に蕗の薹に分葱に鯛に苺に……と春の便りでした。飲んだのはビールと日本酒、その後はワイン好きの数学先生に付き合って白。ワインを飲むのは月に一度です。帰りには、次の(来月の)予約も済ませました。