誰もかれもチンドン屋 おいらもひらひら あいつもひらひら

 東京でホテル泊の場合、普段なら素泊まり(夕朝食無し)のプランを選ぶのですが、今回止まっている「東横イン」は朝食が必ずついてきます。そういう場合、やっぱり1回くらいはという気持ちが働いて、普段食べない朝食を食べる(胃や腹に違和感を覚えつつ一日を始める)ことになります。1回ロビー横の(レストランとも言えない)フリースペースに、朝食開始時刻6時半に下りて行ったら、既に2組4人が並んでいました。小ぢんまりしたバイキングですが、白御飯に2種類の炊き込みご飯、スープ味噌汁も複数種類、パンも豊富でおかずにサラダは日替わり、デザートまでついている気の遣いようです。
 1つ目のお茶碗に野菜サラダ、2つ目のお茶碗に2種類の炊き込みご飯を少しずつ、スープはトマトポタージュ。おかずは茄子の煮物、卵焼き、切り干し大根、南瓜サラダ、鶏照り焼き。食後にホットコーヒー。

 ホテルから徒歩10分強の場所にある御嶽神社にご挨拶。一部界隈で人気の「手水の つかいかた」看板の美物を発見しました。「左手」「右手」「口」の洗い方を3コマ漫画風に示しているのですが、女の子が胸に赤くて細いリボンを下げているため、最後の口を漱いでいる絵が血を吐いているようにしか見えないところがミソ(多分、ググったらすぐに見つかると思います)。
 本当は午前中を「ジュンク堂」に充てていたのですが、昨日訪問したので代わりに映画を観ることに。池袋東口シネコンにて、朝イチ(8時50分)上映回の『窓ぎわのトットちゃん』を鑑賞、★★★★★。大・傑・作。偶然にも一昨年読み直していた(原作も傑作!)ので先の展開は全部知っているのに、折々に涙腺をやられます(涙即傑作というわけではないですがこれは傑作、言い過ぎるくらい「傑作」と繰り返します)。トット役の声優が本当に「黒柳徹子」だったのには心底驚かされましたし、日常に徐々に「戦争」が侵食していく描写は(子ども目線を徹底するために台詞による説明が省かれていることもあって)本当に恐ろしい。キャラクターデザイン(昨今の流行とは遥かな乖離)で敬遠するのは勿体無い限りです。円盤が出たら購入必至。

 映画の後は、1時間程度でサクッと観られる都内の企画展・特別展4つを梯子することに(やっぱり東京の美術・博物館の充実っぷりは凄い!
 先ずは大塚駅から都電荒川線に乗って王子駅前へ。王子「お札と切手の博物館」の常設展、及び企画展『鳳凰はばたく朝陽閤~明治・大正期の印刷局工場案内~」を。小さな小さな施設ですが展示は充実。1階では来年20年ぶりにデザインが変わる日本銀行券の紹介、明治初期の印刷機の展示等。2階では江戸期以降の紙幣の歴史。日本・世界の切手の歴史、珍しい切手の紹介など。特別展は、関東大震災で焼け落ちるまでの「朝陽閤」の歴史を概観、建物を描いた絵画(浮世絵)や震災で焼け残った遺物やを展示。王寺駅エリアには「紙の博物館」というこれまた興味をそそられる施設があるのですが、こちらは年末休館で残念。
 新宿に移動して、「文化学園服飾博物館」の特別展『魔除けー見えない敵を服でブロック!-』。古今東西の民族衣装に見られる「魔除け」の意匠を概観。魔除けのための意匠が施される場所は袖や襟などの「穴」(魔の侵入口)だったり自らの視線の及ばぬ背中の部分だったりが多く、用いられる装飾具は貝殻や硬貨等の硬いものだったり目眩ましの鏡だったりが多い。文様に用いられるのは蛇蠍虎鰐などの魔を凌ぐ力を持つ生き物、櫛や宝玉など神秘の力を持つ道具。色なら赤。古今東西意匠は様々ですが、抽象すると普遍的な傾向も伺える、という感じかな。服飾は門外漢ながら、妖怪好きにとっては好企画でした。
 飯田橋にあるのは「印刷博物館」。今日の目的はギャラリーで無料展示の企画展『世界のブックデザイン2022-23』でした。日本・中国・ドイツ・カナダ、等々各国のブックデザインコンテストの入賞作品が一堂展示。これは、正直ちょっと期待外れでした。そんなに奇を衒ったデザインにする必要……あります? みたいなのが多くて、面白くないことはないけれども、「書かれた中身が分かればそれで派」の人間にはちょっと重たかった。日本のデザインコンテストで金賞(1位)だった大竹民子『海の庭』(国書刊行会2022年)の表紙はシンプルに美しかったです。紙の本ならではの価値……そういえば、「ジュンク堂」で随分売れてるらしい杉井光『世界でいちばん透きとおった物語』という本を見たのですが、帯に「ネタバレ厳禁!」と書いてある同じ口で「紙の本でしかできないトリック(大意)」と盛んに宣伝しています。タイトルと足し算したら「トリック」の方向性が容易に想像出来て、一気に読む気が失せました。
 恵比寿「山種美術館」の特別展『癒やしの日本美術-ほのぼの若冲 なごみの土牛-』、今日観た中ではこれがもっとも楽しく。本邦及び世界の世相を観るに今必要なのは心身の癒しである、という分かりやすい動機で開催されたもの。順路通りに歩いたら殆ど冒頭の位置にある(No.3)伊藤若冲「鶏図」の可愛さにはリアルに噴きました。そして、唯一撮影OKだった長沢芦雪「菊花子犬図」に描かれたわんちゃんのらうたき様といったら、もう!

 ホテルに戻って入浴、本日の待ち合わせは大塚駅18時なのですが、山手線で隣接駅なので部屋を出るのは約束の20分前でも十分間に合います(コンビニでペパリーゼを買って飲んで店内にゴミ箱が無いことに気づいて周辺を歩き回って見つけた自販機横のゴミ箱を使わせてもらう、という一連の流れを踏んでもまだ数分以上余りました)。待ち合わせの相手は、61回生Hくん。

 1軒目は大塚「麦酒庵」(訪問は2度目)。恵比寿にも支店のある人気の和風オイスターバー。ドリンクは、生のクラフトビール(これが美味!)と常時200本という日本酒と。
 このお店、料理もドリンクもクオリティが高いです。注文はきびなご干し・カキフライ・モツ煮込み・揚げ出し・牡蠣昆布締め(これは3時間前までの事前予約)。クラフトビール(大ジョッキ)で乾杯の後、店主さんお任せの日本酒ペアリング。
 店主さんの日本酒への拘りが強過ぎて面白い。客の好み、その場の料理との相性、を熟考しながら酒を選ぶんですが、日本酒について話し始めたら長いし、熟考が長考になることも多いし、お猪口(グラス)が小さいこともあって飲んでる時間より待たされてる時間の方が長いくらい。要は、今夜みたいな混雑時には店が回ってない(笑) 蘊蓄嫌いの呑助は自らを出禁にすべき、かも知れません。本日の我々は90分の滞在。1杯1500円のクラフトビールで乾杯の後、互いに日本酒は5種類。それに前述の料理まで含めてたったの6000円という(こちらにとっては有難い)ザル会計は「待たせて御免ね」の意味かと。

 2軒目は池袋「知音食堂」、現地系麻婆の辛さで1軒目の記憶を総て洗い流すというのがここ20年くらいの流儀になってます。北口中華エリアの老舗で、麻婆豆腐と蜂の巣冷菜と。青島ビールは勿論直飲み。ガチ中華あるあるですが、1軒目の反動かというくらい提供は早いです。

 最後にはカラオケ90分。音楽に関して私とHくんの間には、所謂「はっぴいえんど」史観の源流辺り、及び中島みゆきさん、という好みの共通項があるので時間は幾らでも持ちます。但しHくん、さっきの飲み屋で「駒場教養学部)時代の同クラが今度『紅白』に出るんですよ!」と熱弁して、その方から嘗ては(クラスLINEでお願いして)ライブの関係者席に入れてもらったという施しまで受けたそうなのに、その「キタニタツヤ」さんの歌を1曲も歌わなかったのは良くないと思うよ。
 明日のオツカル様カラオケに向けて中島みゆき「有謬の者共」と荒井由実「中央フリーウェイ」(清水ミチコによる替え歌バージョン)とを練習できたのはラッキーでした。

 本日の「ジップロック・チャレンジ」、結果。
 【設定】
 ①名目「ジュンク堂」/設定「20000」/支出「17367」
 ②名目「美術館」/設定「5000」/支出「1900」
 ③名目「飲み会」/設定「15000」/支出「12500」
 【予定外】
 ④名目「神社」/設定額無し/支出「100」
 ⑤名目「映画」/設定額無し/支出「1300」
 【結果】
 設定「40000」/支出「33167」