ふるほんに読むバイプレーヤーたち

 3時過ぎに起床、書斎で京大特講の添削・日記更新、の後で入浴。母君の朝食をお出しして、出勤は7時。
 始業前に板書計画や学級日誌等々デスクワーク。今週分の授業・特講で使うプリントの原稿を全て印刷室に回しました。8時半の職員朝礼からSHR。今日は授業が6限に1コマだけで、4限の時間(職員昼休み)に自宅を往復する以外は決まった予定はなく、このくらい余裕がないと出来できないとある仕事を一気に仕上げました(5時間の作業のうち4時間半くらいは推敲に使っています)。
 放課後は1時間の年休を取って帰宅、母君に夕食をお出ししてから入浴。まだまだ肉じゃがはストックがあります。その後、しばらくぶりに二日市「月空」に行って読書独酌(読了本が今のところ今年一、二を争う面白さ)。帰りの西鉄電車が人身事故でストップしていた(一時間は動かないと言われました)のでJRの二日市駅へ移動してからK市に戻りました。

 例えば矢野誠一『昭和の藝人千夜一夜』だったり、大村彦次郎荷風 百閒 夏彦がいた 昭和文人あの日この日』だったり、嵐山光三郎文人悪食』だったり、エピソードで人物を浮き彫りにするタイプの本が好きな(それも、一冊の中で紹介される人物が多ければ多いほどいい)んですけれども、その系譜に連なる凄まじい本を漸く読み終えました。濱田研吾『脇役本 増補文庫版』読了、★★★★★。「脇役本」は濱田氏の造語、戦前戦後の舞台・映画・テレビで活躍したバイプレイヤー(スターではなく)及びその家族・研究家の著作(自伝・随想・小説・趣味本、等々)をカテゴライズした言葉ですが、そんな本を大量に収集するなんてことをやっている人間が他にいるのかどうか、とかく第一人者にはそれを命名する権利を持つそうで。再放送や古い映画のビデオ(DVD)でしか観たことがないあんな人(例えば岸田森)やこんな人(例えば左卜全)、死亡記事だけは記憶にあるような人(例えば滝沢修)、辛うじてリアルタイムで見たことがあるあんな人(例えば天本英世)やこんな人(例えば大泉滉)、もう名前も知らないような人、集めに集めて約80人の著作。その中には芸術品みたいなまんじゅう本から安いタレント本まで玉石が混淆しているのですが、それらを子細に読み解きながら、脇役たちが愛憎交々の思いで繋がる縦糸横糸をたどったり、逆にそれら繋がりや世間からの需要を失った脇役達の悲惨極まる最期を掘り起こしてその功績を追認したり。よほどの芝居好き脇役愛がなければこんな作業は出来ませんし、何より驚くべきはその文章力。やや古風な書き方から割とお年を召した方かと思ってプロフィールを見たら1974年生まれと書いてあり参った。「増補」は13年ぶりだそうだから最初にこれを発表した時は31歳です。数多読まれたのであろう古本の文体が体の中で化合してる、凄い。