永遠のパズル

 今年も時間割の役職に就くことが出来なかったので、せめて時間割の仕事について書くことを慰めにします。私、前に時間割を4年間やったんですけど、時間割パズルをやるに際してあらゆる科の中で最も調整が難しいのが体育科なんですね(これは恨み言ではなく、客観的な事実です)。
 先ず、体育が出来る場所が少ない。第1グラウンド、第2グラウンド、体育館、卓球場、柔剣道場の5か所を使い回すのですが、例えば中1A・B組が(80人が3グループに分かれて3人の教員が受け持ちます)第1グラウンド、第2グラウンド、体育館を使っているなら、横並びで出来る授業は高1B・C組(80人)とか高2D・E組(80人)とかの格技(柔剣道)しかありません。同じ時限には横並びで2学年(2集団)しか授業が出来ないという環境ですので、月曜1限から土曜4限まで、時間割の中に隙は全くありません(どの時限も1つないし2つ以上の体育が横並びで入ります)。施設の問題は教員のせいではなく学校(親玉大学)の問題ですのでどうにもなりません。
 それに加えて、体育科の先生は(部活動・生徒指導に伴う)出張やイベント取り仕切り(クラスマッチや中高の体育祭・体育大会)の関係で通常授業に入れなくなる回数が他の科の先生より多いんですね。でも、「今日は時間割通りの授業が出来ないから別の日に変えて」というのが他の科のように簡単には出来ません。各クラスルームで行う座学だったら、例えば月曜日の国語科と火曜日の英語科で授業を交換とかいうのは容易いのですが、全ての体育施設が全ての時限に埋まっているという状態である体育の授業を別の曜日に持って行くことはほぼ不可能なのですね。「いや、月曜の中1の体育と火曜の中2の体育をごっそり入れ替えるのは可能じゃね?」とかいう風なことを言う人もおられるやも知れませんがこれが限りなく難しくて、横並びで3人の教師が受け持つその3人の中に非常勤の先生が居たら一発アウトですし、常勤の先生でも「月曜中1横並びの3人」と「火曜中2横並びの3人」の延べ6人が都合よく「変更? OKだよ!」と仰る確率はほぼゼロに近い。詰んでます(勿論、中1・中2それぞれに交換相手の科があるわけですから、問題は連鎖的に複雑化して行きますね)。
 次に出てくるのは「じゃあ、体育の先生が出張で授業が出来ないとかいう時は、体育を1時間削って大事な英数国理社に変えれば良いんじゃない? 出張で出来なかった分の『返し』(←出来ない日に別の先生に授業を代ってもらった後で、別の日にその先生から授業を返してもらうこと)は要らなくない?」という意見で、これはよその科の人間が言うならとんだ体育科蔑視で論外なのですが、どうかしたら謙遜なのか何なのか体育科の先生がそれを仰ることすらある。「いや、体育の1回くらい削っても大丈夫です、それより英語を……」とか。
 ここで一つ具体例を。これは、私の方から体育科若手先生にお願いした話なので全く問題ないのですが、今週、とある学年行事の引率で体育の授業が出来なくなった先生から高1古文の授業を1コマ(A~E組で計5コマ)譲って貰いました。私がその先生の代わりに古文の授業を行って「返し」は作らないという処置です。で、その授業5コマを貰うとどうなるかと言いますと、A組用授業・B~E組用授業それぞれの準備(プリント作成・板書計画など)が1.5時間ずつで計3時間、授業5コマで計5時間、小テスト採点その他の後処理で計1時間、大体9時間ほどの仕事を背負い込むことになります(今回に関して言えば、諄いですが時間数の関係で私の方からお願いした処置です)。
 一人の教員の授業に関する仕事を8時間(要するに1日分の仕事量)増やすのが「返し」無し、の意味です。ですので、安易に授業を削って他の科の授業に、というのは言えません(勿論、増える方が積極的に望む場合は別です)。生徒が在学中に何度でも聞かされているように、F校では「授業が命」です。これは、生徒が命がけで授業を受けろという話ではなく、教員が職命を懸けて授業をするという意味です。安易に「はい、今週1回授業を増やして」などと気安く言えない所以。
 施設や人的要因の都合で「返し」が出来ない、でも「授業が命」なら「返し」無しはあり得ない、論理矛盾が起こるではないか、と思われるやも知れませんが、そんなことはありません。ビデオ教材でもプリント教材でも、体育科の先生方が座学の授業を行う準備をしておき、出張その他で不在の先生の代わり(ビデオ教材なら監督)を別の体育科の先生なり時間が空いている担任団なりがやれば良いだけです。最悪(これは本当に「最悪」ですが)、自習でもやむを得ないかも知れませんね。
 「返し」無しは、基本的にはあり得ないんです。

 ……と言いながら、これはもうちょっと難しい話でして。というか、私も自分の愚を踏まえて言っているので、我ながら「お前が言うな」という感が拭えない。
 私、赴任初期(当初2年ほど)に、担当していた56回生における授業崩壊が余りに酷くて、何度も先輩化学先生(後に63回生において主任・担任として組むことになります)に授業を貰って(「返し」無し)いただいたことがあります。今は、安易に他の先生に授業を投げ渡してそれで良しと思っていたその時の自分をひたすら殴打したいところですし、化学先生にはこの先ずっと(密かに)頭が上がりません。ただ実際、「あんな扱い」(配ったプリントが全部紙くずや紙飛行機になるとか、50分間ひたすら生徒が私語を続けて存在を無視されるとか)をされた場合を考えた時、今の若手の先生方に耐えて授業をやれというのもとても言えるものではなく(もう時代が違うので生徒がそういうことをすることはあり得ないでしょうが)、何らかの理由で誰かが大変な時には授業を貰うことに対しては積極的で(少なくとも寛容で)いたいなぁ、とは思っています。

 朝は3時間ほどお休みをいただいて、母君を月一の検診にお連れしました。K病院のY主治医に「異常(変化)なし、継続して投薬治療」の折り紙をつけていただき(血液検査・レントゲンの結果)、28日分の抗がん剤その他を受け取ってから帰宅。母君のお昼は惣菜屋のお弁当で我慢していただき、私は昼から学校入りです。
 本来なら金曜日は授業がないのですが、前述の事情(体育先生から授業を戴いたこと)で4~6限に授業を行います。金・土の2日で5クラス5限の授業を加えた上で金曜に3時間の年休を取るなどという時間割泣かせの行動を取ったので、時間割地理先生に申し出て金曜・土曜の高1の時間割変更(授業変更・移動のパズルを行った後、影響を受ける全ての先生に根回しして許可を得る)は私が行いました。昔取った杵柄です。

 夜は、自宅近くの焼き鳥「T」へ。オープン数ヶ月で、すっかり人気店になりました。焼酎をキープして水割りのセット。私、よっぽど暑い日以外は焼酎の水割りに氷を入れないのですが(水と焼酎とを半々)、初めて頼んだときは大体不審がられます。