氣持ちの温度が高まるのだ 行ってらっしゃい

 本来なら旅行バッグに荷物を詰め込んでいる時間、本来なら西鉄辺りでランチをしている時間、本来なら飛行機に乗って震えている時間、本来なら……と雑念に塗れ過ぎていつもより捗の行かない作業ではありましたが、定刻7時半に職員室入りし、4月入学式・始業式から黄金週間後(第1回定期テスト後)までの時間割変更を始めました。ノンストップで6時間程弄くって、進捗は20%というところ。新学期からの直属の上司である教務部長地理先生から「無理せんと、ゆっくりで良いよ。自分の教科の仕事もあろうし」とお優しい言葉を頂戴したので、
 私「今頃は飛行機の予定でしたから、授業の準備ならGWの分まで終わってます」
 地「機嫌わる~」
 私「東京行ぎだがっだ~」
 地「泣くほど?」
 いや、実際、5秒で泣けます。

 さて、時間割・時間割変更表は全てExcelに入力しているのですが、これは、一つ前・二つ前の時間割を担当なさった生物先生・地理先生のやり方を踏襲しています。その前の時間割は私でしたが、当時は全て手書きで(変更も手計算で)行っていました。今回もそうしようかと思ったのですが、職員室前にあった時間割変更を告知する黒板(生徒確認用)が、今年からテレビ画面に変わってしまい、チョーク手書きが通用しなくなった(Excelデータをアップするしかなくなった)のです。
 恥ずかしながら、私、Excelが使えません。生物先生・地理先生は関数(?)を組んで、同日同時刻に誰かの授業が被ったら(例えば、中1歴史と高3文系日本史という同じ担当者の授業が同じ月曜1限にあるとかしたら)文字の色が変わるとか、第1回定期テストまでに誰の何の授業が何時間あるか(これが解ると定期までの授業計画が立てやすいです)が瞬時に解るとか、何だか色々便利なことが出来るようにしておられたんですけれども、私はこれが一切出来ない。Excelというのは私にとって「罫線の引きやすい一太郎」という以上の意味がありません。授業の被りを知りたいなら両眼があるし、授業の回数なら全職員分数え上げればそれでいいし、というか時間割で一番楽しいのってその作業じゃないですか、と。時間はかかりますけど別に時間を節約する理由が無いですし、計算ミスの確率はExcel操作ミスの確率より遙かに低いですし。「Excel覚えてミスの確率を減らせや」という建設的な意見は、新しい技術を覚えたらタスクを増やされそう(っつか自主的に増やしそう)という理由で脱兎ノーサンキュー。今も、時間割変更の組み立ては紙に鉛筆と消しゴムです。

 さて、上京中に夕食をご一緒する予定だった67回生我らB組Aさんから、今は福岡に居るのでK市でご飯をと声を掛けて戴きまして。じゃあ、焼肉「H」のカウンターにしましょう、と予約。本来なら松濤でフレンチ(Sans Déconner)だったとお話ししたら相当残念そうな顔をなさっていました。
 西鉄で待ち合わせて「H」には17時のオープンと同時に入店。早い時刻を選んだのは、未成年なのでお早い時刻に帰りの電車にお乗せした方が良いだろうという判断と、もう一つ別に理由がありまして。偶然にも、店内に1室だけある個室にいちばん近いカウンター席に通されたので、Aさんには18時からサプライズがあると予告してからお肉を焼き始めました。

 18時、カウンター横の広間に続々と入られるお客さまは、職員室有志ご一行(小規模な忘年「度」会です)。「何でお前居るの?」「Aさん! お久しぶり!」等々反応の皆様に「あら、奇遇ですね」と驚いて見せたら「店を予約したのはお前やんけ!」と説明口調のツッコミが。いや、Aさんが「時節柄大変気分が鬱いでいるので、是非明るい気分になれるお店を」と仰ったので、教員の乱痴……じゃない、ご陽気をご覧に入れたくてですね。
 さて、Aさんのお話。春から東大2年生のAさんですが、学生から新型コロナの感染者が出た東大は暫く休校、再開後の講義もオンラインで行われるそう(準備の首尾は知りませんが)。「オンラインで講義なの? 実家でも受けられるの? なら、こっちに残りゃいいじゃん、危険じゃん……」と、思わず上京未練のスタンスを崩してしまう私。自粛引きこもりで会えないにしても、なお友人同窓生と近い場所に居たい、という気持ちは解らなくもないです。

 1時間の時間差で入店ですから、個室より1時間早く退店の我々は、その後西鉄の「ミスド」で珈琲を飲んでからお別れしました。勿論、「H」から退店する前には、店員さんにメモ用紙とペンとをお借りして、個室の中の或る先生に「K市二次会手配承ります。℡090-(以下略)」と書いた紙をお渡し。

 Aさんとお別れの後、アーケード街を進んで居酒屋「K」へ向かいました。4月3日に同僚某先生に頼まれて15人規模の宴会を入れていた(1ヶ月前から予約していました)のですが、それをキャンセルする為です。電話では申し訳ないので、女将さんに直接のお詫びがてら、カウンターで読書独酌。
 小一時間後には「K市二次会手配」に着信がありましたので、そのまま「K」にお呼びしてお店を大開放貸切にして戴きました(15人と比較したら人数はずっと少ないですし、二次会であんまりお金は使わないので、4月3日の代わりにはなりませんが)。途中で「飲もう」の電話がかかって来た58回生Fくん(母君の手術をして下さったお医者様、明日、新天地の広島へお引っ越しです)を呼んで教員にフェアウェルの乾杯をしてもらったり、楽しい夜でした。

 大恩あるFくん(←本人は言うと嫌がるので言い続けます)をお見送りしたら、これで一区切りかな、と。
 明日から、自粛生活に入ります(30日にさし飲みの約束があるので厳密ではないですが)。これは誰かに命令されたわけではないので完全なる「自粛」です。明後日はK市の母・Hさんに夕食を食べに来るよう言われているので、そこで「自粛」生活の相談をすることにします。