金があれば太陽でさえ つかむ事が出来る都市さ

 博多から福山(初訪問)というのは新幹線だったら1時間半強で着くんですね。想像よりずっと近い。昼食で行きたい店があったので博多ホテルは朝食抜きの素泊まり、8時半過ぎの新幹線で移動中にコーラ(←旅行中にのみ自らに許す禁断の飲み物)を1本飲みました。新幹線で読んだ某書の一節から校内模試の文系現代文が出来た(読みながら頭の中で傍線を4本引いた後で当該の箇所の文字数を数えたら2000字強だった)のは収穫。幸先の良い旅行の目的は鞆の浦観光と山下達郎御大のライブとです。福山駅着10時15分、コインロッカーに荷物を預けてコンビニでお茶を買ったら鞆の浦行きバスは10時30分発と最高の接続。

 駅からバス30分強で到着の鞆の浦。福山旅行は、宮崎駿崖の上のポニョ』のモデルになったと言われる町の観光からスタート。
 先ず、人気店「鯛亭」で鯛飯デラックスの昼食。お櫃に入った茶碗2膳分の鯛飯、美味。すまし汁・小鉢・香の物。八寸のようなお皿には、茄子の煮浸し・枝豆・海老煮付け・鯛刺身・刺身蒟蒻・ブロッコリー・酢の物・オレンジ。どれもこれも酒を呼んでるんですが、夜のライブに万全で挑むためにアルコールは我慢です。某グルメサイトの投稿では人格に難あり(頑固を超えて怖い)とも書かれていた大将は、10分前に店先に到着してメニューを眺めていた私のために早めの入店を許してくださる優しい方でした。開店10分後(私が入店した20分後)には、テーブル2卓・カウンター7席の店が満席で人気店の流石。
 ランチの後は、港から船で5分の仙酔島へ。仙人も酔う程の美観が売りなのだそうですが、落石で観光道が封鎖されており(殆ど観るものがなく)残念。港周辺を少しだけ散策、潮風は心地良かったです。

 TQC東京大学クイズ研究会)の先輩・まっぴぃ氏に「鞆の浦に行くなら絶対ここ!」と激推しされたのが、鞆の浦名物「保命酒」の販売店の一つである「岡本亀太郎本店」店内にディスプレイされた超巨大看板。ぴぃ氏は実際に訪問された時に閉店後で(格子越しにしか)見ることが出来ず悔しい思いをなさったそうなので、私がリベンジです。
 超巨大看板(私の身長より大きいんじゃないかな)は江戸時代のもので、「保命酒」の金文字看板に2匹の精巧な龍が巻き付いたデザイン。現場訪問者の特権で、お店の方に許可を得て看板を写メ、その後2匹の龍の顔面をどアップ接写(龍、意外につぶらな瞳をしていました)。後からぴぃ氏に写真を送ったら大喜びでした。この看板、江戸時代に保命酒の専売だった中村家が明治後期に暖簾を下ろす時、道具一式とともに「岡亀」が譲り受けたものだそう。
 「保命酒」とは、味醂に16種類の薬味を漬け込んだ和製リキュールのこと。自分へのお土産用に購入しましたが、ロックやソーダ割り・牛乳割りで飲んだり、アイスクリームにかけたりしたりするそうです。

 鞆の浦散策。
 江戸期のものの現存物としては日本最大級の常夜燈、「日東第一形勝」と歌われた福禅寺對潮楼、現在は平日休館が残念だった太田家住宅、宮崎駿プロデュースのお宿「御船宿いろは」等々を巡りました後、寺社が多過ぎて訪問先に迷う中で「医王寺」「沼名前神社」の2ヶ所に目的地を絞って歩き出します。

 「医王寺」は、200mを超える急な坂を登った高台にある寺なのですが、その裏手から更に石段を600段上った山中にある太子殿から浦が一望できるというのがウリなのです……上りましたよ石段。サウナを除けば令和でいちばん汗をかいたんじゃないかな。今考えれば、どうせ私以外誰も居ないんだから、上ってる途中は上裸でも良かったんですよ。シャツ、ぐちょぐちょ。さっき買った「保命酒」が地味に体力を奪うし。
 「医王寺」から下界に降りて、地区を北上徒歩15分、途中で「山中鹿之助首塚」や「ささやき橋」(長さ1mは日本一短いらしい)を越えたところに「沼名前神社」です。特にこれというものではないのかも知れませんが、敷地内には現存唯一の(秀吉由来で国の重要文化財指定だという)移動式能舞台がありました。

 何だかんだで4時間以上滞在して、その上殆どが歩きで汗だくということもあり、地区の中心部に戻った後(古民家風の)喫茶に入ってミルクセーキを食べました(シャリシャリのかき氷風が珍しい形でした)。
 バスに乗って福山駅に戻ったのが16時。コインロッカーで荷物を降ろした後、駅前の百貨店「天満屋」の地下で、惣菜・広島の(未踏破の)地酒数種類・地ビールを購入。タクシーで宿泊ホテルに移動してチェックイン、荷解き、入浴(やっとぐちょぐちょのシャツを脱げた!)。地ビールや日本酒、惣菜は冷蔵庫で冷やしておきます(地ビール開栓のためにフロントで栓抜きを借りました)。駅からはやや離れた場所にある(タクシーでなければ到着不可能な)ホテルを選んだのは、今夜のライブ会場の徒歩圏内だから。10分歩けば「リンデンローズ ふくやま芸術文化ホール」、今夜は初の山下達郎です。

 アリーナでは決してライブをせず中小のホールが中心(今日の客席も2000席前後)、プラチナもプラチナというチケットが当たったのは本当に運が良かった。しかも、今日がツアー(50本弱)の2日目なのですが、1~3日目の会場限定で、新作『SOFTLY』を予約したら特典としてサイン色紙が貰えるという大サービス。CDは既にK市で予約済みなので、限定販売だというカセットを注文してサイン色紙をゲット。グッズ売り場では、トートバッグに限定のCD(CMで仕事をした音源を集めたCDアルバム)などを購入。

 山下達郎『PERFORMANCE 2022』@福山。
 01.SPARKLE
 02.あまく危険な香り
 03.RECIPE
 04.人力飛行機/雨は手のひらにいっぱい・夢想花円広志
 05.MUSIC BOOK
 06.僕らの夏の夢
 07.君は天然色大瀧詠一
 08.Paper Doll
 09.シャンプー
 10.おやすみ、ロージー -Angel Babyへのオマージュ-
 11.I ONLY HAVE EYES FOR YOU
 12.クリスマス・イブ
 13.蒼氓
 14.さよなら夏の日
 15.BOMBER
 16.SILENT SCREAMER
 17.LET'S DANCE BABY/踊ろよ、フィッシュ・高気圧ガール・ヘロン・長崎は今日も雨だった内山田洋とクール・ファイブ
 18.ハイティーン・ブギ
 19.アトムの子~鉄腕アトム~アトムの子
 【以下、アンコール】
 20.THE THEME FROM BIG WAVE
 21.Ride On Time
 22.いつか
 23.Last Step
 24.YOUR EYES

 初参戦の山下達郎、大ファンの61回生Hくん(彼は初日に参戦済み)から「3時間半はトイレに行けない覚悟を」と言われていましたが、コロナ仕様なのかアンコール5曲を含めて3時間弱で終わりました(それでも普通のライブよりは随分長いですが)。
 手練をバックにCDと同じ、つまり化け物みたいな声量を響かせる様は圧巻で、冒頭から気になっていた舞台最奥の大きな鳥籠セットは何だろうというのがアンコールで明かされた時は吃驚しました……山下氏、鳥籠の中からマイク無しのア・カペラで3階席最後列にまで「Ride On Time」の歌声を届けたのですから(これを恒例とするためにアリーナではやらないのかな、とか)。
 近年は毎年恒例になっていたツアーがコロナで2年の中断、ファンは余程待っていたのか、確か普通なら「LET'S DANCE BABY」までは立たないお約束だと聞いていたのですが、「BOMBER」のイントロで辛抱がきかなくなったように総立ち。声を出せない分、拍手と手拍子の熱量が凄まじかったです。
 御本人はMCで盛んに「来年古希」を強調、47公演も「老人虐待ツアー」と自虐ネタにしておられましたが、何しろ前述の通りの声量、しかも3時間立ちっぱなしでギターソロのスポットライトも当たりまくりの熱演です(1曲だけ、09はピアノ弾き語りでした)。バンドメンバーのレパートリーも120曲と仰っていましたから、3年先くらいまでの構想はあられるんじゃないか、など(もうすぐ発売のニューアルバムからの曲も殆ど演ってませんし)。
 個人的には、ギターの佐橋佳幸にも痺れました。2021年には矢野顕子のバックで、そして2022年にはご本家である山下達郎のバックで、それぞれの「Paper Doll」を見事に(しかもそのどちらでも長い長いギターソロありで)盛り上げるんですから。

 圧巻、大満足。ホテルに戻った後は、購入済みのお酒・惣菜で胃と肝臓とを満たしつつ、前述の61回生Hくんや、高2の時の作文「私の好きな歌」に「蒼氓」を挙げた58回生WくんとTwitterでやりとりをするという、ライブの余韻独酌。
 と、言うわけで。

 6/17も「自粛御膳」をお休み、福山のホテルで百貨店「天満屋」のデパ地下惣菜を肴に飲んだくれ。山下達郎御大69歳のライブ(初訪問)が圧巻だったのの余韻飲みです。
 574蔵目・広島「千福」(精撰 Vパック)。
 575蔵目・広島「白牡丹」(広島上撰 ライトパック)。