誰も見とらんから少しくらいええかな

 上京4日目。卒業生に関しては、2点の郵送・配送物の手続きはありますが、飲んだり遊んだりは昨日でお仕舞い。今日はTQC18期(同期)とのお遊び、昼から夜までオツカル様と半日デートの後、18期飲み会を5人で。夢のような一日です。

 遅く起きた朝、大浴場で入浴をしたら既に9時近くです。着替えてホテルを出発して銀座駅へ向かい、ランチの待ち合わせまでの90分をどのように使うか考えていたところに突然現れたミュージアムビル、受付で伺えば予約不要ということで何気なく入館してみました。
 銀座「セイコーミュージアム」を見学。創業者である服部金太郎の来歴紹介や、世界中の時計・精工舎(SEIKO)の歴代商品を展示。1フロア毎は広くなかったものの、ビル6階(地上5階、地下1階)全部を使った展示物配置は工夫されていて見やすく。フロア毎にテーマが決まっていて、B1「極限の時間」はスポーツの計測機器展示、1F「はじまりの時間」はミュージアムショップ、2F「常に時代の一歩先を行く」はセイコー創業者の服部金太郎の来歴紹介、3F「自然が伝える時間から人がつくる時間」は時計の進化の歴史と和時計との紹介、4F「精巧な時間」はセイコーの代表的製品の展示、5F「いろいろな時間」は、セイコーの時計の多様性の紹介、という感じ。
 西洋からの観光客一家、仲良し中学生3人組、カップル……と平日朝イチからなかなかの人気ぶりでした。因みに、入口で記名さえすれば、誰でも予約無し・無料で入れます。

 ランチの待ち合わせは銀座駅から徒歩10分程度の「鮨 佑」。11時半のオープン5分前に私が到着し、オープンジャストにオツカル様がご到着。Facebookで繋がった66回生Hくんが、このお鮨屋さんの経営母体の会社にご勤務というご縁で、予約の代行をお願いしたのです。遂に「ザギンでシースー」デビュー(母君に一度連れられたことはありますが、自分でお金を払うのは初めてです)。
 最初に、枝豆茶碗蒸し。その後にお鮨が一通り(ヒラメ~シマアジ~マグロヅケ~カスゴダイ~大トロ~クルマエビ~キンメダイ~イシガキガイ~マアジ~ムラサキウニ~ニシン~アナゴ~鉄火巻)。アナゴの後に海苔の味噌汁、鉄火巻きの後にナスの浅漬けとタマゴとが供されて終了。
 実は、江戸前には苦手意識(柑橘だらけという先入観)があったのですが、覆されました。「久兵衛」で20年の経験を持つ大将による1時間のオペレーションは、スペシャリテ(?)のアナゴを中心にどれも丁寧なお仕事。お鮨はカウンターの前に置かれた陶器の皿の上に1貫ずつ出される形ですが、1貫出す毎に皿を丁寧に拭いて下さるお心遣いが嬉しく。本当はお酒も飲めれば良かったのでしょうが、この後のカラオケや夜の予定を考えて今日は無し(最初に烏龍茶のみ注文しました)。勿論、夜だと絶対に行けない価格帯ですが、ランチなら何とか背伸びをして、という感じ(今日は、ランチは私が2人分払って、それ以外の遊びはオツカル様が奢ってくれます)。

 私の大学卒業式の日に、母君と大喧嘩をしました。少し前から電話するたびに体調不良を訴えられていた母君が、私の制止をお聞き入れにならず卒業式臨席のために上京。それだけでも私には不本意だったのに、卒業式後にどうしてもお祝いのランチを銀座「久兵衛」で、と私を強引に店に連れて行かれたのです。母君は体調不良で殆ど召し上がることが出来ず、私は固より来たくもなかった訳ですからもうその場は最悪で、これはお店のせいではないけれども、私には欠点の記憶しか残ることがなく、初めて食べた江戸前鮨というのも「何でもかんでも矢鱈と柑橘かけやがって酸味しかしねぇじゃねぇか」という印象のみ残すものになってしまったんですね。それから20年の時が経って、やっと江戸前の記憶が更新されたのが、今日です。
 因みに、母君はランチ後のホテルでもほぼずっと寝たきり。深夜に急にバナナが食べたいと仰った母君のためにスタバに走った(コンビニにバナナが無く、24時間営業のスーパーも皆無だった時代でした)私には、「こんな夜更けにバナナかよ」は実話として身に響きます。這這の体で福岡に帰られた母君が遂に倒れられたのはその1ヶ月半後で、子宮筋腫で入院なさった(子宮卵巣全摘出)母君を見舞うために、就職直後の私は毎週末K市・小倉を往復して眼の廻る忙しさでした(56回生中3生徒にぐちゃぐちゃに扱われた最初2ヶ月で心が折れなかったのは、私生活のことがあって「それどこじゃねぇ!」という状態だったからかも知れません。人間万事塞翁が馬)。痩せ我慢の母君と、察しない馬鹿息子との、ガチの命の削り合い。

 はい、閑話休題。隣にオツカル様がいらっしゃる時にそんな辛気臭ぇ想い出に浸ってる暇はありません。ランチの後はカラオケ、前回3月の上京時には(オツカル様の喉の不調で)行けなかったので、年末以来半年以上間隔があきました。
 「銀座に『カラ鉄』ってあるの?」という私に、オツカル様必殺の音声検索、スマホをドラゲナい角度で構えて「ここから/銀座/カラオケの鉄人」と三言。そのまま歩いて到着の雑居ビルは、「あ、そう言えばここ来たことあるね、居抜き感バリバリの店舗だったの覚えてる」
 と、いうわけで。上京4泊5日のハイライトは間違いなくこれ、オツカル様とのカラオケ歌唱曲リストです。「同一アーティストの1日2曲は不可」「一度歌った歌は二度と歌わない」という2つの縛り(私は10年厳守、オツカル様は融通無碍に時々禁をお破りに)があり、後者の故に既に歌えない歌は500曲を超えていますが、胡麻の油と百姓とカラオケレパートリーは絞れば絞るほど出るものなり、今回も3時間で各18曲を披露し合いました(井上陽水「夕立」は2人カラオケのエンディングテーマとして決まっている別枠曲です)。曲目、以下。
 池①藤井風「さよならべいべ」(2020年)
 オ①Vaundy「恋風邪にのせて」(2022年)
 池②中島みゆき「童話」(2023年)
 オ②藤井隆「アイモカワラズ」(2000年)
 池③松任谷由実「知らないどうし」(2020年)
 オ③Bialystocks「差し色」(2022年)
 池④米津玄師「カムパネルラ」(2020年)
 オ④音速ライン「ロレッタ」(2008年)
 池⑤三沢あけみ「島のブルース」(1963年)
 オ⑤TUBE「泣き濡れてカニと戯るバトルロイヤル・ビーチ」(1991年)
 池⑥研ナオコ「泣かせて」(1983年)
 オ⑥稲垣潤一「ジンで朝まで」(1982年)
 池⑦シャ乱Q上・京・物・語」(1994年)
 オ⑦SALT5「GET UP! ラッパー」(2003年)
 池⑧井上陽水「嘘つきダイヤモンド」(1995年)
 オ⑧スキマスイッチ「ユリーカ」(2012年)
 池⑨エカテリーナ「古いお城のものがたり」(2005年)
 オ⑨サザンオールスターズ「フリフリ'65」(1989年)
 池⑩かまやつひろし「我が良き友よ」(1975年)
 オ⑩折坂悠太「鶫」(2021年)
 池⑪折坂悠太「トーチ」(2020年)
 オ⑪J-WALK「何も言えなくて…夏」(1991年)
 池⑫五木ひろし「待っている女」(1972年)
 オ⑫尾藤イサオ&ドーン「剣の舞」(1979年)
 池⑬水木一郎ルパン三世 愛のテーマ」(1978年)
 オ⑬a・chi-a・chia・chi-a・chiアドベンチャー」(1988年)
 池⑭国安わたるルネッサンス情熱」(1987年)
 オ⑭GO! GO! 7188「ジェットにんぢん」(2000年)
 池⑮小原乃梨子「のんきなのび太くん」(1979年)
 オ⑮たま「あっけにとられた時のうた」(1996年)
 池⑯高田恭子「ゴンドラまかせ」(1969年)
 オ⑯岡本敦郎「高原列車は行く」(1954年)
 池⑰梅沢富美男「夢芝居」(1982年)
 オ⑰タッキー&翼「夢物語」(2003年)
 池⑱南こうせつ「夢一夜」(1978年)
 オ⑱Acid Black Cherry「恋一夜」(2008年)
 池⑲井上陽水「夕立」(1974年)

 13時からのカラオケに3時間も使えば、実は夜の飲み会までそんなにゆったりと観光をする暇はなく。しかも私からのお願いで、移動する前に書店に寄らせて欲しいという用件がありまして。「カラ鉄」から少し歩いたところにある「教文館ナルニア国」という子どもの本の専門店につきあって貰いました。
 ご結婚が決まった63回生Hくんに絵本をお送りする。オツカル様だったら案野光雅『もりのえほん』だそうですが、私は佐野洋子100万回生きたねこ』で一択です。およそ子ども用の本を扱って『ねこ』が売っていないことがあるはずもなく、本とメッセージカードとを購入し、おめでとうのカードと一緒に本をプレゼント用包装してもらいました。Hくんに近く会うというMくんの家(佐賀)に配送するのは、郵便局からの手続きの方が安いというのが本屋さんからのアドバイスです。
 渋谷に移動して、またもや私の用件で郵便局。絵本をMくんの家(佐賀)に、RHYMESTERのチケットを70回生Yくんの家(福岡)にそれぞれ送りました。

 次はオツカル様のご用件に私がつき合う番なのですが、その用件が「観ないのに購入した地下アイドルライブ(1ドリンク制)のチケットを持って会場に行き、ドリンクだけ買う」というよく意味が分からないもの。何がよく分からないのかというと、「チケット買ったなら、貢ぎ終わったってことで、もう終わりなんじゃないの?」という点でして。例えば私のRHYMESTER、チケットは購入した時点でお金はアーティスト側に貢いでいますので、ぶっちゃけYくんに代わりに行ってもらわなくてもアーティスト側にとってはそこまで大きな違いは無いんですね。
 で、オツカル様に「だって、そっちはワンマンでしょ?」と言われて合点がいきました。そうだそうだ、アイドルのライブって、絵恋ちゃんみたいな特別な人じゃなかったら、大抵複数グループの「対バン」形式でしたね。私も昔、LOFTで「戸川純向井秀徳」の対バンを観た時、入口で「どなたのファンですか?」と聞かれました(勿論「戸川純さんです」と答えました)。「対バン」の場合、会場入口でチケットを渡す時に「××のファンです」と言わないと、推しの××さんに収益が入らないんです。

 ライブ会場があるのは下北沢だったので、渋谷~駒場東大前(東大構内散歩)~下北沢、と長い長い徒歩移動をすることに。私は駒場には定期的に訪れていますが、オツカル様は本当に久しぶりのご様子で、まぁ流石に「駒場寮が無い!」とかいうのはギャグだとしても、見知らぬ建物の数々に驚いておられるご様子です。逆に、私は大学在学中から現在までの四半世紀以上、下北沢という街を殆ど訪れたことがないので、ライブ参戦のために長くこの町に入り浸ってお出でのオツカル様から、如何に最近の下北沢の治安が悪いか(客引き激増)というのを教えて貰ったりしまして。
 ライブ会場は雑居ビルの2階だか3階だか、以前確かここで絵恋ちゃんのライブを観た記憶がありますが、確かその時にはライブ会場に入るために非常階段を上らなければならなかったはず。オツカル様に確かめたらその通りらしく、最近1階の正面入口からライブ会場に上がる動線が作られたそうです。消防法とか色々あるんでしょうか、知らんけど。
 開場5分前に到着したオツカル様、顔なじみのヲタクさんたちと語らいながら会場に入っていって、本当にその2分後に戻ってこられました。因みに、オツカル様を待っている間に夜の飲みを約束しているでっくんから電話があって「仕事が長引いて……もの凄く遅れると思う……」と、事実上のキャンセル宣言を頂きました。
 下北沢から新宿までは電車直通。

 本日最後のイベントは、新宿「十徳 本店」で、TQC18期会。美味しい居酒屋メニューと豊富な日本酒とが安価で楽しめる中産階級の味方、社会人になってから(本店も渋谷店も)よく利用しています。
 私・オツカル様が定刻入り、少し遅れて北白川くん着。がっ様からは仕事で「少し」遅れるというご連絡があったので、取りあえず3人でビール乾杯。北白川くんとは彼の結婚式(7~8年前?)以来の再会、見てくれが全然変わっていないのはこないだ大阪で会ったリンリンも一緒ですけれど、今はお子がお二人目、を目の中に入れてもみたいな生活らしくて環境が随分とお変わり。伺っているうちにがっ様もご到着、追加のビールにホッケとピザも追加注文しましょ、と。日本酒に移られるオツカル様・がっ様に「池ちゃん、辛くないやつならどれがオススメ?」「ウチ(オツカル様の一人称)は積極的に甘いの」と聞かれてお答えして、飲まれた2人が「「あ、美味い」」と仰るのが嬉しくてそれ見ながら杯を進めて。頭の中に霧が掛かってきた頃に、何だか悲壮な顔をしたでっくんがギリギリで顔を出してくれてテンションがブチ上がってまた乾杯して……。

 昼のカラオケで、小原乃梨子「のんきなのび太くん」を歌いながら、「こんな姿、絶対に生徒に見せらんないよねぇ」と言ったらオツカル様に結構ウケたんですけど、今夜の飲み会も見せるのはアウトでしょうねぇ。私、TQC18期の副会長で、副会長の仕事は事実上の飲み会幹事担当で、もう数え切れないくらいの宴会で幹事を務めたんですけれども、メンバーのために働いたというよりも、どっちかと言えばメンバーが私の好きな店を選ばせてくれたという側面が強くて、今夜の飲み会も結局私が好きな食べ物を適当に注文してるし日本酒も態々聞いてまで選ばせてくれてますし、要は私がメンバーにアホほど甘えてメロメロデロデロになって……という流れですもんね。
 ホテルに戻ってからの記憶はありませんが、幸せな入眠。