頭のアルコール 注ぎだしてしまえば すぐに走れるさ

 先日、K市某店にて行われた国語科忘年(度)会にて、次年度高3現代文(初)担当の後輩先生と。
 後輩「東大現代文って、どうやったら生徒に届くのか、まだ実感がわかないんです」
 先輩「では、実際にF校を卒業した東大生に聞いてみましょ~(と、0時に電話をかける) はい、Eくんです(電話渡す)」
 後輩「えっ? えっ? あ、もしもし?」
 その時のお礼で、今日のお昼は63回生Eくんとお寿司。場所は渋谷「美登利寿司」なんですけれども。

 E「ってか、この店、廻ってない!」
 私「そらそうだ」
 後輩にご馳走しようとする人間が回転寿司なんざ選ぶかっつーの。人気店はいつの間にか整理券制に変わってまして、開店の40分前、10時20分に店の前に着いた時には整理番号が20番でした。実際、11時開店と同時に店に入れたのは21番の客までだったのでまさにギリギリ。ちょっと早すぎるかなぁ、と思ってたんですけれども、店の人気をなめてましたね。
 指定した45分丁度にやって来たEくんの最初の発言が前述のもの。私は昼から飲む気満々ですから、肴の出ない回転寿司なんて絶対にあり得ないというわけでして。

 Eくんには「板さんおまかせ握り」。私は肴を適当に注文してその半分をEくんに廻し、握りは好きなものだけ。Eくんはお茶、私は瓶ビールで乾杯。初めて知ったんですけれども、「美登利寿司」、アルコールが超安い(瓶ビールが500円!)。
 お寿司も肴も喜んでもらえたようで何より。肴は牡蠣のグラタン、鮪ビンタ焼き、赤身刺し、海鮮串焼き。で、私は鉄火に目がないので、細巻きで「鉄火」と「中トロ鉄火」とを注文して味比べ。
 私「はい、この鉄火巻きと中トロ鉄火巻きとを比べて下さい!」
 E「鉄火巻き、超マグロ」
 私「はい、超マグロ入りましたっ! じゃあ、こっちの中トロ鉄火はどうでしょうか?」
 E「……薄い」
 私「?」
 E「味、うっす」
 私「わぁ……」
 確かに、そう言われたら何で脂を旨い旨いと奉らなければならないのか、と指摘された気分に。だいたい、肉の脂身は大嫌いなくせに。王様は裸だったのかしら。
 E「ってか、遠距離恋愛か! と突っ込まれた」
 私「何が?」
 E「先生と、毎月会ってる」
 私「えっと、11月が東京同窓会、12月が年末上京旅行、1月がK市で新年会、2月が東大応援下見、3月が今日……ホンマや!」

 遠距離恋愛のEくんに、私ったら酷いことをしてしまいました。「板さんおまかせ握り」にはつまみ玉子が2切れついてるんですけれども、彼がそのうち一つを食べてもう一つをずっと残してたんで、「これもらうね」とひょいとつまんで食べて……。
 E「!!!!」
 私「?」
 E「…………」
 私「何そのこの世の終わりフェイス」
 E「…………」
 私「もしかして。えっと、イチゴ、だったの?」
 E「(頷く)」
 私「あ~、あの、その、追加で注文とか……」
 E「(首を振る)」
 分かる、分かるっす。大好きなものを残しておいて最後に食べる時は、「その」イチゴ、「その」玉子じゃないと駄目なんすよね。それは分かるけれども、そないに悲しい顔するもんなの? って顔を見せられたら、何とかしないといけない気がしてきますよね、でもっておっさんが何とかするっつったら金を使うしかないわけでして。
 Eくんがトイレに行ってる間に会計を済ませ、ついでに玉子を1枚丸ごとお土産で包んでもらいました。別れ際にお渡ししたら一応喜んでましたけど。

 Eくんとの話は大学でのことにほぼ終始し。進振りに悩み、これから教職を取るかどうかに悩み。教職は……1年の段階で全く教職科目を取ってない時点で取らない可能性の方が高いような気がしないでもないですけれども、私の99年頃とは履修の条件その他が違ってるかも知れないので何とも言えないですね。どうせなら取っちゃえ(6割)、進路の邪魔になるなら切っちゃえ(4割)、どっちにしても迷ってる状態自体が身体を「居着き」の状態にしてる現状を振り払っちゃえ、ってとこですね。これは、「やるかやらないか」で迷ってる全ての事例について当てはまる助言になるかと(つっても、犯罪や自殺やみたいな自他を損なう行為については当然別ですが)。
 さて、瓶ビール2本と日本酒2合。13時の酔い方じゃあねぇよなぁ、と取りあえず14時にホテルに戻り、何をするかというと、夕方まで寝る! 最終日の昼~夜を寝て過ごすなんて何と贅沢なんでしょうか。今日は夜が新宿ロフト戸川純(19時~22時?)。その後は完全フリーで、新宿22時どうでしょう、という「ゆる募」をTwitterでかけている状態。

 17時に目覚めて部屋風呂に。汗をかいて酔い覚まし、あと少しでも体重が減ればという無駄な抵抗も。どうせ会場のいちばん後ろの壁にもたれて眺めるのだから、開場と同時に入る必要もなく。整理番号は20番台でしたが、開場の30分後に着。ワンドリンクはミネラルウォーターと迷ってトニックウォーター、甘すぎて少し後悔。
 19時開演の10分前に、Twitterの「22時新宿ゆる募」に、2日前も飲んだ(上に徹マンまでつき合わせた)警察庁Mくんから連絡があり、「了解宜しく」の返信。ライブは15分遅れで開演、のっけから会場は大盛り上がり。

 戸川純バースデーライブ@新宿ロフト
 〈第1部〉1.ヴィールス 2.それゆけ! ロリータ危機一髪 3.バーバラ・セクサロイド 4.恋のコリーダ 5.本能の少女 6.諦念プシガンガ 7.金星 8.思春期病 9.赤い戦車 10.フリートーキング
 〈第2部〉11.ロリータ108号 12.ヒステリヤ 13.いじめ 14.lilac 15.蛹化の女 16.ヤプーズのテーマ 17.母子受精 18.肉屋のように 19.バージンブルース 20.電車でGO 21.レーダーマン
 〈アンコール〉22.パンク蛹化の女

 3・6・7・9・10・11・14・15・17・18・19・20・21・22、の計13曲は3年連続の披露。バースデーライブではファン感謝祭の意味も込めて定番曲を続々と繰り出すのが毎年の流れなので、逆に4、5、12、16なんていう珍しい曲が歌われるとコアなファンは大喜びです。(MCによれば)およそ20年ぶりに歌われたという「本能の少女」は「私が死んだって世界は変わらないし/生きている意味などいらない関係ないわ」の歌詞が「私が死んだって世界は変わらないが/生きている意味なら作るわ自分で作るわ」というものに変えられていました。バースデーライブのMCは演者の歴史・人生観の変遷を語るものになるのですが、今年は例年になくポジティブ・前向きな内容が多かったような気がします。ゲストにヤプーズの山口慎一が出ていて、結局ヤプーズが勢揃いしてるから、という理由で16が披露されたんですね。ヤプーズについて本人の口から「活動休止中」という言葉が出たのは嬉しかった。まだ、新譜への希望も一縷。

 1部と2部の間の休憩中に、Mくんに「22時、旧新宿コマのシネコン前」とメールを送ったら、「ライブ中に済みません」という返信が来ました。あのね、おじさんが喜んで観に行くようなベテランアーティストの公演ってね、演者自体の体力と観客の体力とを考慮して、大体2部構成になってることが多いのよ。若い子は知らないかもですけど。

 で、第2部が終わり、アンコールの拍手をしている所へ、突然後ろから「先生ですよね?」と囁かれ、何事かと後ろを振り返ると、見知らぬ美丈夫が立っており「62回生です」と。驚いた、若い子も居るんですね。っつかこの場でF校卒業生て。「ファンなんですか?」「はい」「僕もです」という偶然のもたらす興奮で、終演後は握手に写真に、と。中1で一年間だけ古文を担当した学年なんですけれども、数人のグループで来ていた中の一人に「先生ってことは、戸川純を聴きながら採点とかしてたんですか?」と聞かれ、「『HYS』を聴きながら試験作ったり」とお答えしたら、卒業生氏が「僕がそれを解いてました」と。
 いやぁ、そういう偶然ってあるんですね。62回生だから21才になる学年、その若さで戸川純ってことはどっか「アブナイ」「クロイ」部分をお持ちなんでしょうけれども、それはそれとして取りあえず同志取りあえず良い子。

 22時待ち合わせのMくんと、同じく2日ぶり塾講Yくんも乱入して3人で新宿「小肥羊」で火鍋三昧。歌舞伎町を管轄にする警察官は歌舞伎町では飲まないらしいんですけれども、まぁMくんはそうじゃないからいっすよね。2日前みたいに6人も集まると話題は抽象的になりがちですけれども、3人で膝をつき合わせたりすると話題はどんどんどんどん具体的なものに煮詰まっていきますから、警察官僚、塾講師、中高一貫校教師、のでぃ~ぷな話は止まらず。警察官僚あるあるに教育産業2人がほうほうと勉強させて貰ったり、教育産業あるある(っつか、最早なしなしに近いんじゃないかという種々の体験)に警察官僚が軽く引いたり。
 でもって、終電間際0時15分まで飲んだんですけど、「どうせ上京でお金使い倒してるんでしょ?」とM&Yくんが折半で夕食奢ってくれました~! 労られてる~! 35才のオジサンが教え子に労られてる~! ついにこの日が来た~!

 1時にホテル。次は私が払います~、と御礼メールを送って、幸せな就寝。