淋しさに負けそうな時 キスはほうれん草

 1限は東大文系現代文の授業、その添削をして半ドンの帰りのSHRで返却してもらい、一旦自宅まで炊事・入浴のために戻り、16時からは理系東大現代文特講です。朝から40枚の添削を抱えて、返したと思ったら18時にまた40枚の添削が来る。マッチポンプにも程がありますが、時間割を組んだのは私なので文句の行き先も無く。東大理系特講の方には、ワクチンの副反応で欠席だという聴講生が数名。若さか、肉体のデリカシーか、どちらかの影響でしょう。副反応ゼロの厄年も居ます。

 本日の文系東大現代文は90年の渡辺武信。建築家にして詩人、彼なき世界には作詞家・松本隆は居らず、松田聖子KinKi Kidsも今のようではなかった。勿論、評論文も絶品です。建築家(渡辺・内藤廣・青木純他)と作曲家(近藤譲三善晃武満徹他)とには名文家が多い印象。全体も細部も見透せるからかな。
 理系東大特講の方は、08年の宇野邦一『反歴史論』。高2現代文の授業に中島敦「文字禍」を投げ込んだ時の定期テストに、この08年東大本文の冒頭を(実力問題で)採ったことがあります。宇野氏、恐らく態となのでしょうが「文字禍」を誤読した内容を書いている。これは、入試の設問には関わっていないものの、受験生に誤解を与えるという点ではやや難ありなのでは、とも思います。いずれにせよ、私が教員になって初めて担当した学年(56回生)を苦しめた問題として印象に残っています。
 先日、或る卒業生(58回生)から、「コロナ禍」というワードから高2で私から習った「文字禍」を思い出した(中身は忘れてたけど)、という話を聞いてちょっと嬉しくなりました。

 9/0の「自粛御膳」。
 豚鍋・サラダ・もずく酢温玉・小鉢3種。
 427蔵目・新潟「謙信」(純米吟醸)。
 18時まで東大現代文特講、エラかった(ダブルミーニング)ので大ジョッキを自分に許して。鍋は向田邦子風の常夜鍋、〆に餃子の皮しゃぶが私的正義。柚子胡椒は69回生Yくんから。居間にクーラーが無く汗だく、ビール瞬殺ですが今日くらいは「飲み過ぎ注意」を無視で(洗い物があってブレーキはかかりますが)。

 向田風の豚鍋の具材は豚肉と菠薐草とだけなんですが、この菠薐草が高い、というか野菜全般が高い。こないだなんてスーパーで胡瓜3本が298円でしたから。事務嬢さんと「菠薐草もね、同じ値段で普段の半分くらいしか入ってないの。鍋がしょぼっ! って感じになってねぇ」「嫌ですよね、白菜1/4が200円超ですよ、1玉1000円じゃないですか」「それに胡瓜1本100円って、河童絶滅させたいんかっつーね」と愚痴ってたら、隣の同窓同僚数学に「お前は何者なんだよ」と私だけ苦笑いされました。
 菠薐草がしょぼかったので、向田風の抑制をきかせられずに〆の餃子皮しゃぶ。これ、誰かに賛同を得た記憶が無いから変なのかなぁと思っていたら、58回生Iくんが福岡の「もつ幸」という人気店がこのスタイルだということを教えてくれました。今度行ってみたいな。