注意一秒 怪我一生

 昨日の高3現代文で扱った05年追試験評論、吉岡洋「スタイルと情報」は、問一(漢字)の全5題中1題にトラップがあります。本文中の「ジュンカン」というカタカナ(漢字なら「循環」)に傍線が引かれ、5つの選択肢の中から同じ「ジュン」の字を用いるものを選ばせる問題、選択肢、以下。
 ①サーカスが地方をジュンギョウする
 ②シツジュンな環境を好む動物
 ③雨で運動会がジュンエンとなる
 ④ジュンアイを描いたドラマを見る
 ⑤消極的でインジュンなやり方
 5つを漢字で書けば「巡業・湿潤・順延・純愛・因循」ですので正解選択肢は⑤なのですが、多くの生徒が間違えます。何故か①を選んで2点を落とすのですね。
 確かに、語彙に「因循」を持つ受験生は皆無に等しい。ですが、いくら「循」と「巡」との意味に共通する部分があるとは言え、「循環」と「巡業」とを書き取らせてどちらかを間違える生徒も殆ど居ないはずです(「湿潤」「順延」も普通は書けます)。知らない語彙があったら、知っている他4つを落ち着いて書き取り、消去法を採用するべき。手間を惜しんで「多分」だとか「ま、いっか」だとかの態度を取って、取れる力のある2点をわざわざ落とすのは残念の極みです(「力のある」証拠に、それ以外は全て正解して50点満点中48点だった生徒も多く居ます)。
 今年の高3(72回生)は今年度だけの授業担当で深い付き合いはないのですが、傍(はた)で僅かに様子を伺うだけで生徒の気質の良さが直ぐ分かります。受験期なのにこんなに気立てと機嫌とが良い集団というのは、これまでの5年間(乃至2年間)の本人・保護者・担任団の大手柄だと思います。ですが、受験勉強に関しては評価が少し変わって、過去の高3より構えが甘い人が多い。私が担任団に訊かれてお答えする印象は「真面目だけど、切実じゃない」というもの。前述の、知ってるのに間違えた「2点」の人数が過去に担当した高3より随分多かったのは、そのことの(「切実じゃない」ことの)象徴だと思います。勝負は細部が決める。「多分」「ま、いっか」の結果としての48点は、「惜しい」では済まさない方が良い汚点なんじゃないでしょうか。

 7時半に徒歩で学校入り、始業前は授業の板書準備と時間割の机仕事。始業後は高1の定期テスト採点を少しやって、その他ちょっと秘密のお仕事も。授業は4限で文系東大二次対策、今日の教材は10年の文系専用で小野十三郎「想像力」。点数の出やすい問四を除いた全3題を解かせたので、平均点は低い(5割を大きく下回る)と予想されます。30分で解答、25分で解説、授業時間をたっぷり5分オーバーしたのは最終時限の特権ですね。授業終了後、13時から15時の2時間で添削(答案は月曜朝のSHRで返却)。
 本日の放課後は理系が「防医プレ」(13時半~15時)を受験するので特講は無し(詳しくは2023/9/17のエントリを参照)……なのですが、1学期の台風休校でやれなかった東大理系特講の補講を行うために、聴講生には15時半に集合をお願いしました。こういう時に、人数があまり減らない「付き合いの良さ」は感心。教材は89年の高橋裕『都市と水』。20世紀の現代文は120字記述がないので解答も解説も短め、今日は全て合わせて90分で終了しました。この添削は明日。

 学校からタクシーで小料理屋「U」へ。女将さん・常連さんとお話しながら、大皿料理を小鉢で。オクラ・油揚げの煮付け~セセリと獅子唐の炒め物~手作りチキンナゲット~烏賊と大根の煮付け。
 タクシーで帰宅、軽く飲み直して就寝。