どうせ懲役するよなものと 何もいわずに あきらめる

 大丈夫でした。6時間程寝て朝風呂に入ったら心身共にスッキリ、宿酔い無し。

 本日最初の目的地である「麓刑務所」はJR鳥栖駅からタクシーで15分程度の場所にあるので、9時過ぎ着の電車に乗れるよう移動を計算。JRのK駅までの道もタクシー移動(丁度よい路線バスがありませんでした)、鳥栖駅前には運良く待機タクシーが1台だけ停まっていたので今日はスムーズに移動出来ました(過去何度か、待機が居らず電話で長く待たされたことがあるのです)。お喋り好きな運転手さんと鳥栖の話やK市の話やを続けながら移動に身を任せていましたが、突然ふと窓外の空気の色が変わった、と身体を起こしたらそこが目的地付近でした。
 9時20分着、正門前には既に10~20人の行列。私の後ろにも、次々に人が並びます。。年齢層バラバラ、ベビーカーの家族連れも。正門を潜ったら目の前右手に官舎、その奥に体育館(第2会場)。左手に伸びる坂を上った先に表門があり、潜った先の広場が第1会場。広場右手奥に庁舎見学の入口となる厳重なフェンスが見えます。会場の内外で幾つかの屋台や車が食べ物飲み物を売っていますし、第1会場左手奥にはバンド演奏のステージもあり、雰囲気はさながらお祭り。但し、第1会場ぐるりのテントは「長崎刑務所」「佐賀少年刑務所」「大分刑務所」などそれぞれの刑務所毎のブースになっており、展示販売されているのは総て刑務所作業製品(CAPIC)です。革製品、紙製品、食品、木工、家具、等々種類様々。

 正門開場時刻は9時半ピタリ正確、入場時に先着でもらったメモ帳(これも多分CAPICですよね)をトートバッグに入れながら小走りで移動し、先ずは会場右手奥のテントにて「庁舎見学」の申込です。25分後の9時55分に集合、10時に移動開始という第①グループに滑り込むことが出来ました。住所氏名連絡先を書いた紙と引き換えに、ロッカーの入場チケット(お土産)とロッカーの鍵とを受け取ります(スマホや喫煙具などは持ち込み不可)。
 20分程の待ち時間は、第2会場の体育館で潰します。ここではタンス等の大きな家具や、特に人気の高い製品、それに「麓刑務所」名産の佐賀錦等の工芸品などが売られています(「麓刑務所」は九州唯一となる女子収容刑務所で、工芸品や刑務所職員の制服などを製造しているそう)。「はこだてPRISON」の文字に挟まれて◯で囲まれた「獄」の字がロゴになっている「マル獄シリーズ」なるものがあり(商品の種類も数も圧倒的に多くどうやら名物らしく)、思わずトートバッグの色違いを2つ購入(茶・紺)。どちらかは、いつもお世話になっている後輩数学先生へのお土産にしましょう(彼、いつも教材がぎっしり詰まったバッグを幾つも抱えながら移動しているので)。他に、洗剤や乾麺やも人気商品なのだそう。「横浜刑務所で作ったパスタ」と大きく書かれた商品を購入、デュラムセモリナ粉100%使用なのだそうです。「秋田監獄」の文字が彫られた木製のコースターも。買いはしませんでしたが、桐箪笥を始めとした家具は、質が高く値段が低く。
 私は「矯正展」初参加ですが、今回の「麓刑務所」のもの(コロナ禍を挟んで4年ぶりに開催)が第34回なのだそうだから歴史は長そう。先にお祭りの雰囲気と書きましたが、集まっているのは地元民だけではなく(私のような)市外からの客も多そう(駐車場に続々入る車のナンバープレートで知れます)。「刑務作業の重要性や現状などについて、国民のみなさまに広く知っていただくため」という目的(法務省HPより)で行われているそうなので、周囲から時々聞こえてくる「イケてる」「カワイイ」という声も不謹慎扱いしてはいけませんよね。マル獄シリーズ、イケてます。

 ロッカーに貴重品以外の荷物を総て詰めて、55分丁度に集合場所に移動しました。第1グループは20人ほど、参加者の半分くらい居るんじゃないかという職員が我々を取り囲んで、何度も何度も人数をチェックしています。実際に20人を引率する職員は2名で、先頭でスピーカーを持った方は先導と解説、殿を務める方は監視担当なのでしょう。
 厳重なフェンスを潜って庁舎敷地内へ。砂利と雑草との土地の中に立っている庁舎、基本的には工場なので造りは殺風景、F校の中学寮・高校寮より無機質です。最初は縫製の作業場で、ミシンずらりの部屋は当たり前ですが我々以外無人(収容者は居らず)。案内に従って(備品等々に触れないように)ゆっくり移動します。作業場の出入り口横の高い壁に、手の挙げ方を説明した大きなプレートが。誰々を呼ぶときはパーの形で手を挙げる、1班を示すときは指を1本立てて、等々幾つかの形が決まっているようで、先導の職員さんに「やっぱり、絶対に口をきいてはいけないんですか?」と尋ねたら無言で頷かれました。
 続いて、職業訓練室。介護ベッドに寝た状態の人形、車椅子に座った状態の人形、紹介された訓練は「介護」でした。それ以外の職種の訓練もあるのでしょうが、母君が介護現場で30年の方だったのでちょっと複雑な気持ちに。その後、洗濯室を経由して体育館・講堂へ。スポーツやレクレーションイベント、講師を招いた講演等が行われる(学校体育館を小さくしたような)建物。中には、居室(独房)を再現したコーナーがありました。液晶TVがあったのが意外。その横に、収容者が使う日用品が並べられたテーブルが。よく知られたメーカーの歯磨き粉だったり、意外と普通。あと、小さなことなんですが、講堂の壁に受刑者手作りと思われる折り紙細工が幾つも飾られていたのですが、それが「下手」だったのには勝手に胸が熱く(痛く?)なり、勝手ながらちょっと涙腺に来ました。
 大浴場は更衣室の中まで立ち入れました。その後、釈放前指導専用の居室寮(刑務所よりも一般住宅に近い仕様の空間で、一般社会に近い日常体験を行うためのもの)を入口部だけ見てから、およそ20分の見学は終了。何とも言えない気持ちが残りましたが、間違いなく来てよかったです。

 施設見学でお腹いっぱいになってしまいましたが、最後に第2会場(体育館)内の、模造紙及びパネル資料・収容者制作作品展示コーナーへ。
 収容者の生活に関する説明に見入る。作業内容によって一日の摂取カロリーが分けられる、米と麦との配合割合も法律で決まっている(白米は正月だけ)等々、食事一つとっても初めて知ることだらけです。犯罪の内容として最も多いのは覚醒剤、次いで窃盗。その内容から分かる通り、初犯の割合がどんどん減っているそう。そして収容者は年々高齢化、最高齢は91歳とのことですから、介護や医療の問題も大きそうですね。収容者制作作品というのは、今回展示販売されているようなものではなく、「生け花クラブ作品」のような、レクレーションやクラブ活動の成果を発表したものです。
 滞在は90分強。移動のためのタクシーは到着までに15分かかるということで、最後は職員官舎をぐるり回りながら矯めつ眇めつ。地味にこれも見て面白かった。余りにもコンパクトな団地住宅は、1階共用入り口の高さが私(183.5cm)が背伸びしたら頭をぶつけるくらいのサイズなんです。半世紀とか1世紀とか前の日本人のサイズが基本なんじゃないか、と思った程。入り口掲示板の張り紙なんかも全文読んで、我ながら悪趣味。

 タクシーで走ってもらった先は、鳥栖の観光名所の一つ「中冨記念くすり博物館」。「サロンパス」の久光製薬の記念館。常設展示は製薬・医学の歴史概観、特別展示はレーウェンフック没後300年の顕微鏡展、薬草薬木庭園の散策も狭いながら楽しく。家族連れや大人の社会見学、私以外の訪問客は全部で10人程度だったでしょうか。「矯正展」のインパクトがでかかったので記述は至極あっさりめですが、300円でこの展示が観られるなら一度は、という感じ。但し、交通の便は最悪で、鳥栖駅とを結ぶバスも火木土しか走っていないそうなので、帰りはまたもやタクシーを手配しました。西鉄小郡駅まで移動して、電車でK市へ戻りました。

 昼食を西鉄K駅徒歩5分のネパール料理店「G」にて。チキンカレー・海老カレーをナンでいただきました。私以外の客9人は全て現地の方々。330mlのネパールビールを2本。
 バスで帰宅。先ずはHさん家にお土産の洗剤をお届け(3月の中島みゆきコンサート旅行のチケット・ホテル代を払っていただきました)。帰宅後に入浴、書斎で仕事と書き物と。

 17時過ぎから余り物で自炊。大根ポン酢漬け・小松菜のツナマヨ和えは作り置き、冷奴にはきりざいをかけて。最後は、白菜・豆腐・エノキ・カイワレをぶち込んで和風のスープを(片栗粉を入れてトロトロに)。スープは余り物処分で作ったら2食分出来てしまったので、残り半分はキムチを入れて味変させた上でタッパー保存。
 20時前に就寝。タクシー移動ばかりでしたが、何となく疲れています。何だかんだと昨日飲み過ぎたためなのか、刑務所見学のインパクトが心身に響いたためなのか。